中小企業にとって会社の方向性はある程度限られています。事業承継をするか、M&Aをするか、廃業するかの3つです。(いわゆるスタートアップは新規上場も方向性に加わります)
このうちいまでもオーソドックスなのが事業承継ですがどのタイミングで?というのは気になるところかと思います。
事業承継を考えるときのタイミングについてお伝えします。
社長の年齢、後継者の年齢
社長から事業承継をする相手の両方ともにある程度時間があったほうがよいです。
事業の引継ぎも株式の引継ぎも後段でお伝えしますがそれなりに時間がかかりますし、明日からよろしくと言ってできるものではないでしょう。
現社長がメインで行っている取引先も多いことでしょうし、取引先への周知と実際に社長業ができるようになるまでの期間があるのが望ましいです。
ではどれくらいの時間が必要かはそれぞれの事業の状況にも左右されますが10年は見ておいた方がよいのでは、というのが中小企業の事業承継を見ていて感じます。
社員から取締役になり、常務→専務→代表取締役と推移していくことが多いですが、その場面それぞれでの仕事を把握していく必要もあるでしょう。
仮に社長が60歳で後継者が35歳だと10年後には70歳と45歳です。
これが70歳、45歳だと70→80歳が健康でいられる期間はひょっとすると短い可能性があります。
事業承継には気力も体力も必要です。どちからだけだと空回りしてしまうもしくは遅きに失するという可能性も高くなります。
そうは言ってもどこかのタイミングで代表取締役になってもらうということは考えたいところです。
仮に60歳、35歳で事業承継をスタートして10年経ったとします。70歳、45歳になったときに現社長がスパッとやめる必要もないでしょう。
そのときに5年ぐらいは会長として2人代表で後継者をサポートしてもらうのもよいのでは、ということはお伝えしています。
事業承継には時間がかかる、ということは頭の片隅においてスケジュールを考えてもらうのがよいです。
事業の引継ぎと株式の引継ぎ
事業の引継ぎ、もっというと社長業の引継ぎもすぐにできることではないです。
むしろ株式などの資産の引継ぎのほうがその株式の価格等にもよりますが早いケースはあります。最終的には相続での移転でもよいでしょう。
社長業の引継ぎのほうが時間を要するのは、その時々の判断についていろいろと経験値が必要だからです。
営業のことや製造や販売のことなど、社長が目を配っていることは多岐にわたります。
時には自分で現場にもいくでしょうし、見積もり作成やこの仕事でどれくらいの利幅がとれるのか、また取ってよいのかという塩梅というのもあるでしょう。
この経験に基づく判断や取引先との関係維持、新規取引先との関係構築なども、社長にとっての良い塩梅というのがそこかしこにあるというのは感じるところです。
そのため、明日からよろしく、といってスパッと引継ぎできるものでもなく、かといってマニュアル化にも限界がある部分です。
それこそ社長の横で後継者の方が仕事を見て質問や学ぶところを積み重ねることで得られることもあるはずです。
事業承継の話をするといきなり辞める話に取られるケースもあるのですが体力や気力が十分な時に考え始めないと時間がかかることを考慮していないことで間に合わない可能性があります。
間に合わないというのは事業承継を着手したり進めていくまえに現社長に不測の事態(多くが健康上の問題)が発生してうまくいかなくなるということです。
まとめ
事業承継は「思い立ったらすぐ」ではなく、10年計画で進める長期プロジェクトです。
現社長が60歳、後継者が35歳頃から準備を始め、段階的に業務を引き継ぎながら、最終的には会長としてのサポート期間も設けることで、スムーズな事業承継が実現できます。早めの着手が成功への近道です。