漫画家・同人作家の方からのご質問で時々あるのが、青色事業専従者給与の取り扱いです。注意点がありますし、どういった仕事の内容を青色事業専従者の業務として行ってもらうのが良いかということを整理しておきますので、参考にしてみてください。
青色事業専従者給与とは
青色事業専従者給与というのは、例えば漫画家や同人作家本人のご家族(配偶者や子息、親など)を事業に専従しているものとして届け出をして、給与を支払う制度です。
原則的には親族への給与というのは経費にならないのですが、しかるべき手続きを取って給与を払えば青色事業専従者給与として経費に計上することができます。そのため、漫画家や同人作家の方でご家族がおり、事業を手伝ってもらうという場合には、青色事業専従者給与を積極的に検討しても良いと思います。
具体的な業務内容
例えばどういう業務をやってもらうかですが、漫画家・同人作家の方は事務仕事が大変苦手な場合が多いので、以下のような業務をお勧めします:
- 税理士とのやりとりで領収書や請求書を整理して対応するような経理業務
- 出版社からの問い合わせに対して対応する編集担当としての業務
- 発注業務などを代行する秘書的な業務
もちろんアシスタントとして絵を描く仕事の手伝いをするというのも選択肢ではあります。そういったスキルがあれば、そのようにお手伝いしても良いでしょう。
私がお勧めしているのは、お伝えしたように事務作業や秘書的なやりとりで連絡の窓口になったり、実際にメールの返事をしたり、出版社とのやりとりを仲介したりということをしておくのが良いと思います。
業務としてもわかりやすいですし、実際に編集担当のような形で秘書的な立場で活動している事業専従者の方もいらっしゃいますので、参考にしてみてください。
青色事業専従者給与の注意点
青色事業専従者給与が問題になるのは、税務調査においての場合がほとんどです。
給与の妥当性について
よく指摘があるのは、その給与が業務の労務に対する対価として妥当かどうかということです。例えば、先ほどお伝えしたような編集担当とのやりとりだけで月に30万円から50万円支払えるかというと、それはなかなか難しいように思います。
実際にその業務を第三者にやってもらうとして、給料としてどれくらい支払えるかということは、ある程度参考にしておいた方が良いです。
青色事業専従者給与で問題になることが多い業種として、お医者さんの税務調査においては比較的多くの事例があります。例えば事務員や事務長として奥様が働いていたり、看護師として奥様が働いている場合の給料の妥当性について確認されるケースが多いです。
これと同じように、業務に対して高額でないかということは確認されやすいので、その点は注意しておいた方が良いです。
専従性の要件について
また、青色事業専従者は文字通り事業に専従している、つまり1年のうち労務に当てることができる時間の半分以上を、その事業に専念している状態を言います。
他でアルバイトをしても大丈夫かということを聞かれるのですが、それはやめておいた方が良いというのが一般的な回答です。
給与改定時の注意点
また先日専門誌で確認したのですが、青色事業専従者給与の届け出を出す際に、増額をするというケースがあると思います。
その場合には、その増額改定をしようとしている事業専従者の以前の分も含めて、労務対価として適切かどうかというのを確認される傾向があるようです。
給与の金額と労働の対価性の問題というのは、割と問題になりやすいので、その点は注意しておいた方が良いです。
業務記録の重要性
またご自身がどういう業務をしているか税務調査の時に確認される可能性が高いので、可能であれば、業務日誌のようなものをつけておくとより説明がしやすくなりますし、説得力を持たせやすくなります。
タイムカードまでは必要ないと思いますが、業務の内容を整理して日報のような形で残しておくことは積極的に検討してもらっても良いと思います。
青色事業専従者給与が税務調査で否認されると、相当なインパクトの税金が発生する可能性がありますので、その点は慎重に判断しておいた方が良いです。
まとめ
ご家族がいる漫画家や同人作家の方で事業の手伝いをしてくれるという方いる場合には積極的に検討してもらいたいのが青色事業専従者給与です。
青色事業専従者給与は適切に活用すれば大きなメリットがありますが、要件を満たさない場合のリスクも大きいため、慎重な検討と適切な運用が必要です。
青色事業専従者給与の活用メリット
- 家族への給与支払いを経費として計上できる
- 漫画家・同人作家の苦手な事務作業を家族にサポートしてもらえる
推奨される業務内容
- 税理士とのやりとり、書類整理
- 出版社との連絡窓口業務
- 秘書的な事務作業全般
重要な注意点
- 給与の妥当性:第三者に同じ業務を依頼した場合の相場を参考にする
- 専従性の確保:年間労働時間の半分以上をその事業に専念する
- 業務記録の保持:税務調査に備えて業務日誌を作成する
- 否認リスク:税務調査で否認されると大きな税金負担が発生する可能性