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中小企業の社長の相続財産で気を付けておきたいところ

中小企業の社長の相続税で気を付けておきたいところ

中小企業の社長はいわばその会社のオーナー(株主)であることが多いです。オーナー兼経営者というわけですが、そのぶん会社絡みの財産も多いです。

中小企業の社長の相続財産で特に気を付けておきたい部分を整理しておきます。

目次

相続財産になるもの

相続財産になるものは一般の社長以外のかたと基本的には同じですが、社長ならではのものもあります。

それは所有する会社の株式です。

上場企業の場合は市場価格、というわかりやすい価格がありますし意識しやすいですが多くの中小企業が非上場の会社です。

株式の価格は会社の規模や業種、利益剰余金(会社のこれまでのいわば利益のたまり)などが影響を強く及ぼします。

ざっくりとした説明になりますが、亡くなった時点で会社を清算したらどれくらいの株価になるか、というのが相続のときの株式の価額計算の前提です。

そのため、会社が好調な時期が長く、利益も堅調に積み重なっているときには基本的に株価は上がっていきます。

また、利益が出ていないとしても会社が保有する財産によっては想定以上に株価が高くなることもあるので注意しておいたほうがよいです。

株価の計算は基本的に直前の決算の決算書・申告書がベースになります。

事業承継のタイミングが近づいている場合などは定期的に株価の計算を税理士を通じてやってもらって状況把握しておいたほうがよいでしょう。

中小企業の株式はお金に換えづらいという面も注意点です。

上場株式の大株主だと譲渡等に制限がかかるケースもありますが換金は比較的容易に選択肢として検討できます。

一方で中小企業の株式は基本的に売買がしやすいものではなく、現金にしづらいということが多いです。

ということは、その中小企業の株式にかかる相続税は株式を売ったお金で準備するということが想定しづらいので、納税資金の手当てにはより留意が必要というわけです。

役員借入金、役員貸付金の相続財産としての取り扱い

中小企業の社長ならではの相続財産として役員借入金、役員貸付金があります。

会社側から見た時の勘定科目として役員借入金は会社が役員から借り入れているもので、役員貸付金は会社が役員に貸し付けているものです。

役員借入金は社長側から見ると会社から返してもらえるものですので債権となり、相続財産になります。

中小企業の社長だと会社の資金繰りや会社が払うべきものの立て替えなどで会社に資金を融通することはよくあります。

そういった場合には会計上は役員借入金として処理をしますので、会社としては社長に返すべきものとなり結果的に相続財産ということになります。

役員貸付金は反対に社長個人が払うべきものを会社が代わりに立て替えているという場合などに発生します。

社長が会社に返すべきものですのでこちらは債務計上となります。

役員借入金は会社に資金的な余裕があれば役員報酬を調整するなどして借入金残高を減らすことも相続税対策にはなります。

相続税がかかる財産ではあるのですが、資金化が難しいというのは会社の株式と同じなので会社から引き出せるのであれば引き出しておくことも選択肢ということです。

後継者が決まっているのであれば役員借入金=債権を贈与するというのも検討しておきたいところです。

債権贈与でも借入金の残高を減らす=社長の相続財産を減らすということの効果を見込めます。

ただし後継者が親族(多くが社長の子ども)である場合には生前贈与加算や相続時精算課税贈与も含めてより税務的な面を検討しておいたほうがよいでしょう。

相続時精算課税贈与の基礎控除110万円部分は生前贈与加算の適用対象外ですので、活用のしどころはあると考えています。

会社の資金繰り的に役員借入金を返済するのは難しそうということであれば債権放棄なども選択として考えておきたいところです。

役員借入金は社長から見ると会社から返してもらえる債権ですが、会社側にもう返してもらわなくてよいですという債権放棄をすることもできます。

ただし会社側は返すべきものを返さなくてよくなったという経済的な利益を受けるので、債務免除益という収入が計上されます。

会社として状況が厳しく赤字になっている場合や繰越欠損金がある場合には検討していただいてもよいと考えています。

ときどき、会社は赤字続きで存続も怪しい状態なのだから回収可能性がない債権だし相続財産に計上しなくてもよいのでは、というご相談をいただくことがあります。

会社の状況がたとえそういう赤字が膨らんでいる場合でも、ほとんどのケースで回収可能性はゼロではないので相続財産として認定されることが税務調査や審判所、裁判所での判断となります。

このような主張をして役員借入金を相続財産に計上しないことは現状ではかなりリスクがあるので慎重に検討したほうがよいです。

役員貸付金については債務ですので債務控除となりえますが、会社は社長に返済を求めることができますし、認定利息の計上も必要となってきますのでこちらもないに越したことはないです。

まとめ

中小企業の社長の相続財産としてその会社の株式と役員借入金・役員貸付金についてお伝えしました。

なんの対策も行っていないと思わぬ課税財産の増加となり相続税も想定以上に多くなったということはあり得ます。

決算のタイミングなどで定期的に確認してできる対策があればひとつずつ行っていくのがよいでしょう。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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