中小企業のサポートをしている税理士の立場だと時折見かけるのが横領や着服です。どういったときに発生するのか、防止することはできるのか。もし発生したらどうすればよいか、ということを整理しておきます。
どういう時に発生する?
どういうときに横領や着服が発生するか。やはり目の前に大きなお金があるときです。
魔が差した、とはよく横領したひとから聞くことですが、目の前に大金があり、その人がお金に困っていると目の前にお金があるとどうしても悪魔のささやきが聞こえるようです。
お金だけではなくいろんなものが横領や着服の対象となり得ます。
預金口座からの引き出しも場合によっては横領の元になり得ますが、預金口座を介するのは難しいケースが多く、現金がやはり手を付けられやすいです。
横領のパターンとしては以下のような発生があります。
社長が売掛金を回収してきて経理担当者に渡したけれどそのまま預金に入金せずに横領したケース。
この場合は社長自身が取引先から売掛金を現金で回収してきて渡してそのままチェックなどせずに売掛金が残ってしまっています。
これが逆に買掛金だと相手方から請求があるので判明しやすいですが、売掛金や債権の回収はこちらがアクションすることになるため、売掛債権の管理が甘いとこの手の横領は発生しやすいです。
また社長が高齢などで忘れがち、無頓着だと売掛金の管理そのものが不明瞭でなされていないことでそこに付け込まれている印象があります。
会社で発行している商品券の管理がずさんで、そのまま金券ショップに持ち込まれているケース。
商品券はお金じゃないので管理していないケースが見受けられますが、例えばその商品券に会社のハンコがついてあればそのまま金券として使えるようなケースもあります。
金券ショップに持ち込めば換金可能ですので現金とほぼ同じと考えておいたほうがよいです。
飲食店で仕入れた原材料が横流しされていたケース。
例えば食肉関係であればそれなりの原価であり、売値もそこそこになるケースがあります。
こういった場合やブランド牛などで、ある程度保存管理がきくものだと横流ししやすいです。食品に限らず原材料関係は製造業でも横流ししているケースを見聞きします。
3つのケースを取り上げてみましたが横領や横流しで共通するのが管理がずさんなところに付け込まれていることが多いということです。
横領や着服をしようとしているひとは隙をついてくるのがうまく、バレないようにと考えています。
そのため、管理がずさんだとどうしてもターゲットになりやすいわけで、仕組みで予防することも検討しましょう。
仕組みで防ぐ、それでも発生したら
もちろんそういった横領や着服を考えない人を雇わない、というのが良いわけですが人の考えていることをこちらで把握するのにも限界はあります。
隙を作らない、隙につけ込まれないようにする、管理体制を強化する、というのがこちらでできることです。
例えばケースで取り上げた内容への対策だと以下のようなことを提案できるでしょう。
売掛金の回収は現金で行わず、振込にしてもらうこと。商品券の管理は金庫で行い、定期的にたな卸しして現有と発行の確認をすること。原材料の在庫確認は複数名で行い、社長もかかわること。
こういった仕組みを少しずつでも徹底しておかないといつまでたってもリスクが残り続けます。
厳しすぎるルールは従業員の定着を妨げてしまいますし、組織がぎすぎすして働きづらい環境にもなります。
一気にやり方を変えるのではなくまずは隙がないかをチェックしながらひとつずつ改善していくのがよいでしょう。
手元現金の確認など煩雑に感じることも多いでしょうから、そういう場合には仕組みとして現金を減らせないか、というその先のことも検討していくのがよいです。
すべての取引を社長が把握するのが難しい組織の大きさになっている場合でも、ダブルチェック体制やどこかで責任者の目を通るようにできないか、という視点は必要かなと考えています。
それでも横領や着服が発生してしまったら、それをしてしまった従業員等に対しての法律的な対応もやりつつ、それが再び起きないように対策を講じていきましょう。
まとめ
横領や着服はやはり管理体制の不備が見えているとその隙をついて行われることが多いです。
そういったことが起きないように仕組みを講じることは、ひいては従業員の働きやすさにもつながると考えてみてはどうでしょうか。