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漫画家・同人作家にマイクロ法人、法人成りをおすすめしない理由

漫画家・同人作家にマイクロ法人、法人成りをおすすめしない理由

漫画家・同人作家のかたからマイクロ法人や法人成りのご相談をいただくことがありますが、わたしはあまりおすすめしていません。改めてなんでおすすめしていないか、解説しておきます。

目次

社会保険対策?

まず法人成りをするときの社会保険対策を確認しておきます。

法人にして役員報酬を会社から支払う場合に協会けんぽと厚生年金に加入する必要があり、その社会保険料の支払いがでてきます。

個人事業主の場合は文芸美術国保等の健康保険と国民年金で合わせて40歳未満で世帯ひとりの場合は50万円ほどです。

仮に月100万円の役員報酬の設定にすると京都府の場合、健康保険料と厚生年金保険料で合わせて年間で約130万円が役員報酬から差し引かれます。

さらに法人の場合、社会保険を会社側でも負担するので単純計算で倍になり、約260万円の社会保険料負担です。

法人成りをするとこの点が非常にネックなわけですが、なぜ個人事業主のほうが社会保険料が低く抑えられるかというと文芸美術国保の場合、所得による保険料の増加がありませんので、その点がとても有利です。

法人負担と役員報酬からの負担で合わせて260万円の社会保険料を1200万円の役員報酬で負担すると考えるとかなり大きな違いと言えます。

マイクロ法人の場合は、役員報酬を多く設定しないケースがほとんどですが、この場合は社会保険料は抑えられますが、マイクロ法人側で売上・収入が必要になります。

漫画家、同人作家業以外で売上を作れるかどうか。社会保険的にはお得に見えても次以降の問題があるためマイクロ法人もおすすめしていません。

手間とコスト

マイクロ法人の場合、個人事業のほうは残すわけですから税務会計・申告は個人事業+マイクロ法人となります。

法人成りで個人事業全部を移した場合には申告は法人のみです。

個人事業+マイクロ法人になると、単純に申告部分だけでも税理士報酬が2つかかることになります。

この点がコスト増です。

またマイクロ法人とはいえ法人なので税務会計が必要ですし、管理等の手間もかかります。

法人でもマイクロ法人でも個人事業と比べて事務負担が増大することは間違いないのでその点も注意が必要です。

煩雑な事務仕事が苦手な漫画家・同人作家の方は多く、法人運営がかなり手間に感じるという方がいらっしゃるのも事実です。

自由に使えるお金という点でも納得できるかどうか。

個人事業であればお金の使い方は比較的自由です。法人にした場合は役員報酬から各種の支払い等をすることになりますので、いわば給与で生活するのと同じ意味を持ちます。

お金の使い方に制限がかかると感じるかたも多く、また収入が不安定なケースだと役員報酬の設定も難易度があがります。(年に一度の役員報酬決定というのが原則ルールです)

法人にすると法人税以外に、会社法など守るべきルールが増えることがいろんなことのハードルを上げています。

後戻りが難しい

法人を作る、という手続きそのものはハードルがとても下がりました。

合同会社や株式会社でも株主数の要件がありませんので、ひとり株主で法人を作れてしまいます。

この気軽さ反対に、法人化したものをやっぱりやめる、という後戻りはかなりハードルが高いです。

法人成りしたものをいわば個人に戻す個人成りは法人事業をクローズすることや解散清算などをするかどうか、収入の帰属はどうするのかなど検討する事項が増えます。

マイクロ法人も法人もクローズするときの手間はかなり多く、いずれにしても面倒なことではあります。

また手間もコストもかかるのは前段のとおりで、法人組織は基本的に継続することが前提なので普段とはまた違う処理をすることになり煩雑ではあります。

まとめ

税理士としては法人成りしたりマイクロ法人にすると税理士報酬が増える方向にはなるのでおすすめしたくなる気持ちもわかります。

ただ、お客様が後で「やっぱりやめておけばよかった」と思うようなことを私は提案したくありません。少なくとも今の段階では後で後悔する割合が高いというのが私の考えです。

しっかりご説明して納得していただけたときにだけ法人のはなしを進めていくことにしています。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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