不動産の贈与をしたい、と気軽にご相談いただくことがありますが、あまりオススメはしていません。注意点がたくさんありますし、相談者の方が思っているより費用がかかるからです。
思っている以上に費用がかかる、とは
不動産の贈与は想像以上に費用が掛かります。
以下のような支出が伴うのが不動産の贈与です
- 不動産取得税
- 登録免許税(登記申請の際)
- 司法書士報酬(登記を依頼したら)
- 贈与税
- 税理士報酬(税務申告を依頼したら)
これらの項目は規模などによって金額が変わりますが、贈与の場合の不動産取得税は固定資産税評価額に対して
土地及び住宅用の建物:3%
住宅用以外の不動産:4%
が課税されます。
仮に1,000万円の固定資産税評価額で住宅用以外だとすると不動産取得税は40万円です。
登記に伴う登録免許税は2%なので20万円で、司法書士費用も10万円はかかるでしょうから登記手続きで30万円と仮にしておきます。
贈与税は親から子(18歳以上)への贈与の場合で特例贈与税率が使えたとしても
1,000万円-110万円=890万円
890万円×30%-90万円=177万円の贈与税です。
税理士報酬は10万円だとしても贈与税申告関係で187万円としておきます。
合計すると、40万円+30万円+187万円で257万円の支出です。
仮にご自分で贈与の登記や贈与税申告をしたとしても237万円かかってしまうわけですのでおそらく想定以上に費用が掛かる、と感じるかたは多いでしょう。
贈与した不動産1,000万円に大して約25%の支出ですから大きいですよね。
これが相続による不動産の移転だとすると、まず不動産取得税はかかりません。相続は贈与と違って不可抗力の側面が大きいので意図的ではないということで不動産取得税はかからないのです。
また子が相続した登記の際の登録免許税も0.4パーセントなので低くなります。
司法書士費用は変わらないにしても、相続税は贈与税よりも基礎控除が大きいため、仮に相続税の基礎控除以下の遺産の場合には相続税がかからないことになります。
そうなると無理して不動産を贈与することが良いのかどうかはよく検討したほうがよいでしょう。
贈与する瞬間はタダに感じますが、実際に不動産を贈与するとそのあとの税金や報酬の支払いが追いかけてきます。
離婚時などは特に注意
時折ご相談をいただくのは夫婦共同名義になっている自宅不動産を離婚に伴って片方に買い取りまたは贈与してもらう、というケースです。
こういった場合には財産分与で自宅不動産を分けるということもあり得ますが、贈与するタイミングは離婚の前のほうが良いことが多いです。
結婚して20年以上経過している場合には配偶者への居住用不動産の贈与は2,000万円まで課税されないという特例贈与があります。
これを使えないかというのはよく検討したほうがよいです。
またペアローンで自宅不動産を購入した場合も離婚の際には注意が必要です。
というのも相手方が親族の状態だと居住用の3,000万円控除の特例は適用できませんので、必然的に離婚後の譲渡を検討することになります。
離婚のタイミングと不動産の譲渡・贈与のタイミングはかなり重要なのでそういう意味では離婚のさいの財産分与も含めて慎重に対応したほうがよいでしょう。
まとめ
離婚することを前提にしていないのは重々承知していますが万が一でも可能性はあるものですから、そうなった時にも慌てずに専門家のアドバイスのもと譲渡や不動産をすることをおすすめします。