まだタイミングじゃないな、という方はぜひ毎月末の事務所通信メルマガ(無料)の登録をこちらから!

会社の役員に関する注意点 〇〇したことにするはキケン

会社の役員に関する注意点 〇〇したことにするはキケン

役員の退職や報酬については税務調査において非常によくチェックされます。

なぜか。それは株主=役員のケースが多く、会社の資金を個人にという意識が働くことも一因にあります。

税務調査で特に気を付けたいのは、〇〇したことにする、という事実の捻じ曲げとそれに伴う処理です。3つのよくあるご相談のパターンから危険性を確認してみましょう。

目次

退職したことにする

創業者の社長は30年代表者として会社を興してから従業員を引っ張ってきて会社を大きくした。もう年も年だし退職したいが、会社のことは大好きなので退職金をもらった後も会社にかかわりたいと思っているがどうでしょうか?

退職の事実がないものとされると退職金そのものが否定される可能性があるのでおすすめしません。

この相談の事例の場合には退職金はそれなりに出ているとしましょう。何億円というケースも中小企業ではあり得ます。

なにせ創業者ですからそれぐらいの功績があったとはずですし、役員退職金のいわゆる功績倍率方式に基づいて計算しても妥当な金額とします。

この状態で退職金を受け取った社長が、会長職として役員としてとどまって役員報酬も受取、会社に影響を及ぼすことは果たしてOKかどうか。

退職してなさそうに見えますよね。

こういう状態は一番危険です。退職してないものとみなされると経費として計上した退職金が丸々税金計算上も経費にならず(損金不算入)ものすごい金額の法人税の支払いの可能性がでてきます。

もし会社にかかわるとしても無給であればボランティアみたいなものですから危険性は下がりますが、それでも退職金をもらって会社に来る、というのは一般的にはおかしな話ですからそのあたりは突っ込まれるでしょう。

会社を子どものように感じて成長を見守りたい、自分の目が黒いうちは会社に毎日行きたいという創業社長で押しの強いタイプだと普通に考えたりしますが、そこはきっぱりと身を引いてもらうのが最も税務上は安全です。

勤務したことにする

社長の奥さんを非常勤役員としていますが、会社に来たことも会社の業務をしていることも見たことがありません。勤務したことにしている、ということのようですが法人税法上の行為計算の否認に該当しないでしょうか?

行為計算の否認というルールは確かにありますがそちらよりも、勤務実態がないにもかかわらず役員報酬を支給していることのほうが問題です

行為計算の否認というルールは簡潔に説明するのが難しい面があるのですが、ざっくりとお伝えすると「通常の経済活動からして不合理、不自然な行為、計算」といえます。

つまりは「合理的な判断ができるなら普通はそんなことしないよね」ということです。

「合理的な判断」というのと「普通は」というのがポイントですが、これを論理的に説明するのは結構大変です。

それこそ、広く一般的な普通の処理であったり合理的な判断から説明する必要があるからです。

そのため行為計算の否認よりももっと簡単に役員報酬を否認しようと考えると、勤務実態がないのに役員報酬を支払っているのはおかしいよね、という論法で攻めたほうがシンプルかつ効果的です。

仕事してない人に給与や役員報酬を払う、というのはそもそも論ですがおかしな話ですから、役員報酬の損金不算入といわれると役員として勤務していたということを立証説明することになります。

普段からどういう仕事や業務を担っていてどれくらい勤務しているのか、そういうことを説明できるようにはしておきたいところです。

外注したことにする

うちの会社には役員が複数いて社会保険料なども高額になるため、役員報酬ではなく外注として業務委託契約を結んで報酬を支払う形にしてますが何か問題はあるでしょうか。

基本的に役員への外注費は税務調査で否認される可能性がかなり高いので注意が必要です。

役員報酬としては無報酬だけれど給与という形ではなく外注として報酬を払うということを意味している場合、税務調査が入るとまずチェックされる項目の一つです。

というのも会社組織で役員ということはその会社の業務をするのは役員として当然といえます。

役員の業務として会社の仕事をした、ということが言えるためですね。

業務委託として報酬を支払っていても実質的には役員報酬といえるとも考えられます。

そのため表面的な部分だけ取り繕っていても実際のところはかなり危険な処理になりますので全くお勧めしません。

もし仮に役員への外注費が役員報酬に該当するものとして税務調査で否認された場合には

  • 役員報酬の損金不算入(定期同額給与に該当しない可能性が高い)
  • 源泉所得税の納付(外注費ではなく給与課税のため)
  • 消費税額の修正納付(外注費だからと消費税を課税処理している場合)

このような税額へのダメージがかなり出てきますし、逆に言うと税務調査官はこの指摘事項で修正してもらえたらこれだけ税務署での評価も上がる、ともいえるわけです。

わたしがもし税務調査官で調査先でこの処理をしていたら何が何でも否認したくなる、と思えるぐらい税額への影響がかなり大きくなるでしょうし、調査官としての自分の成績をあげるチャンスだと考えるでしょう。

調査官にとっては顔の前につるされた人参にも等しいわけです。

まとめ

役員をめぐる「〇〇したことにする」を3パターンご紹介しましたがどれもかなりリスクがある処理が含まれています。

もし自社でそのような処理をしていたら顧問税理士に必ず相談して対応することをお勧めします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

目次