遺言作成のご相談や税務的な内容チェックのご依頼をいただくことがあります。税務的な視点ではなく相続手続きのことを考えて遺言を検討してみましょう。
自筆遺言 法務局保管制度
自筆遺言は作成のハードルが低いこともあり第一選択として考えられることが多いです。
確かに自宅でだれにも知られることなく自分で作成できるというのはメリットになります。
一方で緩和されたとはいえ様式が厳しく定まっているため不備がある自筆遺言は今でも時折見かけます。
こうなると遺言そのものが無効になってしまうため、参考情報にはなりますがその遺言書で相続手続きを行うことができません。
自筆遺言を自分で作成し自分で保管している場合には、亡くなったあとに親族から家庭裁判所に検認の申し出をすることになります。
この検認の手続きがネックになるケースも実はあります。
例えば相続人である子が親の介護をしている場合で自分しか検認に行けないという状況の場合には検認手続きのための調整が必要です。
弁護士に検認立ち合いを頼むこともできますが費用が掛かります。
検認してからでないとその自筆遺言で相続手続きはできませんので亡くなってからしばらくしての相続手続きの開始となります。
概ね申し出をしてから1か月以内ぐらいに検認の手続きが裁判所で開かれるわけですので少しタイムラグが生じるということはおさえておきましょう。
自筆遺言は法務局での保管制度も始まりました。この場合には検認手続きは必要ないのですが、遺言を遺す本人が法務局に出向く必要があります。
そのため心身の不調などから外出が困難な場合には法務局での保管制度の利用は難しいです。
公正証書遺言による手続き
公正証書遺言は財産の額などに応じて作成費用は掛かりますが相続後の手続きはかなり簡便です。
遺言の検認がまずは必要ないことが大きいですね。亡くなったことがわかる戸籍等を揃えたら手続きを開始できます。
あとは改ざんや紛失の恐れがないこともメリットです。
自筆遺言を書いたとして書いたことやどこに保管したかを伝えていない場合には遺言の存在に気が付かれないこともあり得ます。
せっかく書いたのであれば書いたこととどこに保管したかを伝えておきたいところですし、公正証書遺言であれば公証人役場で検索してもらうこともできます。
公正証書での遺言は公証人役場で作成をしますが身体不自由の場合や施設に入っている場合でも出張費用を支払えば公証人は出張してくれますので遺言作成が可能です。
また公証人というチェックが入ることにより財産の記載漏れ、把握漏れも起きにくい可能性はあります。
専門家として弁護士や司法書士が作成サポートをすることも多いですからそういう意味でも財産の内容チェック、計上漏れは防ぎやすいでしょう。
わたしが見かけた自筆遺言では財産の記載漏れがあってその記載漏れ財産について改めて遺産分割協議になり揉めたというケースがあります。
遺言に記載している財産しか相続手続きはできませんので漏れがあると手間がかかります。
まとめ
相続手続きを行うのは多くが配偶者や子などの相続人です。相続人の状況に合わせてどの遺言で準備するかも検討してみましょう。
検認は意外と手間がかかるので自筆遺言なら法務局保管制度を利用するか、公正証書遺言が相続手続き上はオススメです。