まだタイミングじゃないな、という方はぜひ毎月末の事務所通信メルマガ(無料)の登録をこちらから!

事業承継する場合には株式の移動方法を検討しておく

事業承継する場合には株式の移動方法を検討しておく

事業承継には社長業そのものの引き継ぎと株式の引き継ぎの両輪をうまく動かすことが大切です。

片方だけ動かしても思う方向には進みません。

今回は株式の移動についてその選択肢を検討してみましょう。

目次

株式の譲渡、買い取り

中小企業は社歴が古いほど株式が複数のひとに分散しているケースがあります。

というのも、かつて株式会社を設立する際には株主数の下限があったためです。これにより株主が複数いる中小企業は多くありました。

今では株主ひとりで株式会社を設立することができます。

また、創業者や先代経営者の考えで株式を親族の複数に分散させているケースも見かけます。

ただ、このように株式が複数の親族に分散していると、会社経営上の不都合が出てきたり、株式の集約が難しくなるケースが出てきたりしていざ事業承継のときに費用が余計にかかったり、分散状態が解消できなくなります。

そのため、後継者がスムーズに株式を承継できるように、特に会社経営に関わりのない親族の所有している株式を手遅れになる前に集約することを検討するのが望ましいです。

非上場株式でも売買を行うことはできますので、親子間であれば後段でお伝えする相続や贈与で株式移動を検討しますが、そうではない場合には買い取りなども選択肢です。

買い取る場合には誰が買い取るかがポイントです。

会社が買い取るケースもあれば個人間取引で後継者が直接買い取るケースもあります。

会社で買い取る場合はいわゆる自己株式の買取です。資本取引という形を取り、資本金分を超える金額での買い取りは超える部分は配当金という取り扱いになります。

個人間の場合は配当の部分は出てきません。

譲渡する際の価格計算にも違いが出てくることがありますので事前に価格計算と税務シミュレーションは欠かせません。

少なくともこれぐらいだろうと適当な金額で売買することがないように気をつけましょう。

相続、贈与による移動

親子関係の事業承継の場合には、株式の売買というのは馴染みませんので相続または贈与での株式移動がオーソドックスです。

相続による移動は特に後継者とそれ以外の親族とのバランスには気をかけたいところです。

会社の経営がうまくいき、決算が良い状態が続くと自然と株式の価格も上がります。

高い価格の財産を後継者に引き継いでもらう代わりに、後継者以外の親族には納得してもらえるような、それに見合う財産があると安心ではあります。

また相続のタイミングはコントロールできませんが、贈与はコントロールできますので、タイミングを見計らって贈与をしておくのも良いです。

現経営者の個人資産にかかる相続税への影響が大きくなりますので揉め事に発展しないように事前の株式の価格把握は必須です。

また、前段の譲渡の内容のひとつとして、相続が起きた時に会社側で買い取り請求をできるようにしておくことも選択肢です。

この場合、資本金部分を超えるところは配当とお伝えしましたが、株式所有者の相続による買取りの場合には株式を相続きた相続人が一定期間内に買取してもらうと譲渡所得として取り扱える規定があります。

これにより税金面で有利になることから、この方法を事前に確認しておくのも良いでしょう。

特例承継税制の検討も ただし注意点もある

現在は事業承継を税制面から推し進めようということで、事業承継税制があります。

事業承継税制を活用できると相続や贈与による税金を猶予することができ、最終的には免除になることもあります。

会社の要件、後継者の要件もありますのでそれを満たすようにできるかの確認をしてみましょう。

特例承継制度を適用できると税金面としてかなり優遇されますが、事前の計画書の提出が必須です。

また特例承継税制を適用すると後継者の次の世代まで事業がロックされることになりますので、十分に検討が必要です。

廃業や株式譲渡(M&A)による納税猶予が外れる取り消し事由に該当してしまうと後払いの形で猶予されていた税金の支払いがあるケースもあります。

先々までロックされるというのは意外と厳しく感じるのではないでしょうか。

目の前の事業承継ももちろん大事ですが後継者、ひいては後継者のそのあとの後継者のことも視野に入れたほうが良いケースも多いです。

納税猶予や最終的な免除になるというのはやはり要件が厳しいものですし取り消し自由もありますので、そういったことも頭の片隅に置いて検討してみましょう。

取り消し事由に該当してしまうと、猶予されていた本税に加えて利子税が発生して余計な税金の支払いにつながりかねません。

納税猶予対象の株式を譲渡したり、議決権が同族過半数要件を満たさなくなったりすることは取り消し事由です。

他にも解散した場合、資産保有会社になった場合、組織変更があった場合なども取り消し事由に該当することでも打ち切りになります。

現経営者はそれでよいかもしれませんが、後継者が会社を引き継いでからも継続しなければいけない要件もあるため、後継者及びその次の後継者にとっては重たい負担を強いることになりかねませんので、先々のことも考慮に入れた検討が望ましいでしょう。

現在は特例承継税制の適用を受けるための計画書提出期間です。2024年3月31日までとなっていますので検討したいというかたは早めに動きましょう。

特例承継税制の計画書を提出したからと言って必ず承継税制を使わないといけないということはないですので、とりあえず出しておくぐらいのイメージでもよいです。

ひょっとしたら適用できるかもしれないということであれば出しておくに越したことはないです、提出したことについてペナルティとかもありませんので。

まとめ

株式の移動は会社にとっても現経営者・後継者にとっても気にかけておきたいことですが、そのことばかりを気にしていても会社運営はうまく進みません。

経営者としての仕事と株式の引継ぎの両輪がうまく回るようにしていきたいところです。そのための選択肢の検討であり、税務シミュレーションです。期限があるものですので遅れないようにしましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

目次