源泉所得税の処理について迷うことがある、とご相談をいただきますが、迷ったら徴収しておくのが無難ではあります。
こちらが源泉徴収義務者なのかと、源泉徴収対象の報酬(業務)なのかを確認しておきましょう。
源泉徴収義務者かどうか、源泉徴収対象かどうか
源泉徴収義務者かどうかをまずは確認して整理しておきます。
会社や個人事業主でも、給与(役員報酬含む)を支払っている場合には源泉徴収義務者に該当します。
そもそも給与から所得税を源泉徴収をしておく必要があるため、報酬についても源泉徴収義務者になっています。
会社を運営していて給与も役員報酬も全く支払っていないケースは少ないでしょうから、法人組織であればほぼ源泉徴収義務者と考えておいてよいでしょう。
個人事業主の場合は自分宛てに給与支給はできませんので、雇用をしている場合に限定されます。
家事使用人の部分もあるにはあるのですが、いわゆるお手伝いさんみたいな位置づけですので今回は省略します。
源泉徴収義務者かどうかが判断出来たら今度は支払う報酬について源泉徴収の対象かどうかを確認しましょう。
今回はいわゆる原稿料や講演料として列挙されているものをピックアップします。
以下のような支払いであれば源泉徴収の対象の報酬です。
原稿料、挿絵料、作曲料、デザイン料、著作権の使用料、講演料、脚本料、翻訳料、通訳料など。
源泉徴収義務者の事業者がこれらの報酬を支払う際には所得税を天引きして税務署に納めるというルールです。
パッと見た限りでもざっくりしているなぁと感じるかもしれません。制度ができたときから時代が進んできて様々な業種や仕事が増えたので、列挙されている業務に含まれているかどうかが分かりにくいケースが今では増えています。
そのため判断に迷うケースが出てくるということです。
混ざっているケースもある
実際業務を細かく見ていくと源泉徴収の対象となる業務と対象外の業務が混ざっているということはあります。
事業者がフリーランスに業務を発注するケースとしてWebサイトの開発を例に考えてみましょう。
源泉徴収義務者である会社からフリーランスにwebサイトの作成を依頼したとします。
その業務を受注したフリーランスが、仮にひとりでディレクションからデザイン、コーディングまでこなしていた場合はどうでしょうか。
ディレクションはクライアントと方向性や打ち合わせなどwebサイト開発の全体を取り仕切る、いわば進行管理の業務です。
デザインはwebサイトそのもののデザインを考える業務ですし、コーディングはそのwebサイトのコードを書く(プログラミング)とされています。
このうち源泉徴収の対象となりそうなのはデザイン業務です。
全部を一人でこなしている場合には源泉徴収するのかしないのか、業務によって源泉徴収部分を分けてよいものか。
こういった部分の判断に迷いが生じることはあり得ます。
webサイトについて考えましたが、ゲーム開発などいろんな場面で、源泉徴収の対象報酬と対象外報酬が混ざっている状態というのは考えられます。
源泉徴収するかどうかがが微妙な業務もあって、最近だと動画編集業務については源泉徴収する報酬に明示されていませんが、源泉徴収するケースが多いです。
映画、演劇、ラジオ放送、テレビ放送などについては編集業務は源泉徴収対象とされていますが、YouTubeの動画編集は記載されていません。
ただ、こういった場合も含めてですが、判断に迷う、業務が混ざっている、みたいなケースの時には源泉徴収しておくのがよいです。
迷ったときには徴収しておくのが無難
源泉徴収事務は迷ったときには徴収しておくのが無難です。保守的に感じるかもしれませんがリスクを天秤にかけたときには徴収しておくほうが安全だからです。
源泉徴収義務があるのに徴収していなかった場合には、税務調査で指摘されたときに源泉徴収義務違反でペナルティがあります。
本来源泉徴収して納めるべきものを納めていないからです。
また、源泉徴収すべきだったのにしていなかった、取引相手のフリーランスから源泉徴収してくださいとなったときに連絡が取れてなおかつそれに応じるかどうかが不明なこともリスクとしてあります。
そう考えると源泉徴収されるとフリーランス側としては前払いの所得税なわけですので確定申告して精算ができます。
手取りとしては減ってしまうことにはなるのですが、会社側に税務調査がきて後出しじゃんけんで徴収されるよりかはよいでしょう。
「源泉徴収していなくてあとで指摘されて修正等すること」と「源泉徴収が必要かどうかわからないけれど念のため徴収しておくこと」を天秤にかけたときに、後で指摘されるリスクは意外と手間で面倒ですから、保守的かもしれませんが徴収しておくのがよいということになります。
まとめ
源泉徴収が関係してくる業務で一番のリスクは、あとで源泉徴収が必要だったのに徴収していなかった、と指摘されることです。
ペナルティ的な部分が金額によっては結構かかってきますので、迷ったら徴収のスタンスでよいのではないでしょうか。
この辺りの説明は発注相手のフリーランスには必ず行ったうえで源泉徴収しておくのがお互いにとってもよいでしょう。