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あえて不動産を共有にする分割協議をするパターン

あえて不動産を共有にする分割協議をするパターン

不動産は共有にして相続してはいけない、というのがセオリーではあります。共有にすると売却処分などで意思統一できないときなどに問題が発生します。

あえて不動産を共有にする分割協議のパターンについておさえておきましょう。

目次

不動産を共有にするパターン

遺産分割協議で揉めるポイントになるのが、わたしはこれを相続したいというポジティブな姿勢よりも、わたしはこれを相続したくない、かわりに◯◯(多くが現預金)が欲しい、という姿勢です。

特にわたしは相続したくない財産が相続人同士で被ってしまうと誰も相続したがらない財産になります。

この誰も相続したがらない財産について多くが不動産が該当することがあり、負動産などと呼ばれてしまうことも。

こうなると誰も相続したがらないわけですからその財産だけ宙ぶらりんになる、というわけではなく全体が基本的には塩漬けです。

というのも、かわりに◯◯が欲しい、という意見も一緒についてくるわけですので、不動産の分け方が決まらなければそれに応じた現預金の相続分も決まりません。

収拾がつかなくなるとこれらの不動産も含めた財産が何年も塩漬けになってしまうことはあり得ます。

空き家対策措置のための法律が施行される予定ですし、相続登記の義務化も2024年4月からスタートします。

これらの法律が施行されるからということを差し置いても、誰も住まなくなった不動産の朽ちるスピードは速く固定資産税もかかり、出ていくものばかりが増えていくのが常です。

こういった状況を避けるために決定的に揉めていて分割協議ができない、という場合でなければ不動産を共有相続することも選択肢です。

換価分割といって、売却処分後に残った金銭を分配するという方法もありますが、不動産の売却は水ものでいついくらで売れるか分からないこともあります。

そのため一旦は共有で相続しておいて売却について遺産分割協議の場で別途、売却の合意書を作成しておくのも安心です。

共有の割合を確認し、残代金の配分や誰が代表で進める、他の相続人は協力する、最低売却価格の設定、その価格以下での売却なら協議、などを定めておくと、それぞれの相続人の意思を確認しておくことができます。

最初から売却することを前提に考える分割協議であれば相続人全員の合意が取りやすいこともありますので検討してみてください。

事前に不動産業者に見積もりをしてもらっておくのもよいです。早く売れて現金化できるほうが望ましいでしょうから。

一番良いのは生前にお一人住まいとかであれば老人ホーム入居などに合わせてご自身(この場合は亡くなるご本人で不動産の所有者)が売却するのがスムーズです。

不動産の共有ではなく現預金が残った分だけで相続を考えることができますし、居住用の控除(いわゆる3,000万円控除特例)も適用しやすいことが多いです。

無理強いできることではありませんが、もう戻る見込みもつもりもない、相続人が複数いてそれぞれ家を持っていたり遠方でその不動産に住む人がいない、という場合には生前の売却か不動産の共有相続も検討してみてください。

共有不動産の売却後の税務

共有不動産の税金の話についても触れておきます。

共有して相続した不動産が無事に売却できました、となると気になるのは税金のことですよね。

基本的なルールとして抑えておきたいのは2つです。

ひとつめは売却した価額-取得価額(※)=譲渡による利益が発生している場合には譲渡所得税の申告が必要なこと。

譲渡所得税は申告分離課税といって、給与や年金などの税金の計算とは分けて税金計算を行います。

利益に対して税率が決まっていて長期一般と呼ばれる不動産の譲渡区分であれば、所得税は15%、住民税が5%です。

利益が発生してそれが1,000万円でした、という場合に4人で共有相続している場合には1人当たり250万円の利益分配です。

その利益250万円に対して長期一般の場合にはそれぞれが合計で20%(復興特別所得税は考慮していません)の税率を乗じた50万円の税金という計算ができます。

ふたつめは※印をつけた取得価額については購入してきた価額も相続しているということ。

亡くなった方が購入しているのであればその価額を引き継ぎますし、その方が親や配偶者から相続したものであれば最初に購入した価額を引き継ぎます。

購入時の契約書がない場合や古すぎて価格がかなり低い場合などは売却価額の5%を取得価額とすることができます。

相続税がその共有不動産にかかっている、という場合には相続税の取得費加算という特例が使えることもありますので譲渡をして利益が出ている場合には税理士に一度相談をしておいた方がよいでしょう。

また譲渡した不動産の状況によってはほかの特例(空き家の譲渡特例など)が使える可能性もありますので、そちらも合わせて税理士に確認しておくのが望ましいです。

事前に不動産売却時点でいくらで売れたらどれくらいの譲渡所得税・住民税がかかりそうか、というシミュレーションをしておくとより安心ですね。

まとめ

不動産をあえて共有にするパターンについて解説しました。共有にしないほうがいいのはいいのですが、状況によってはあり得ると考えています。

誰も相続したがらない、売却することが前提になっている、という場合には共有も選択肢に入れてみてください。遺産分割がスムーズに進むこともあり得ますし早期解決も見えてくるでしょう。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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