揉めてしまっても相続税申告の期限はありますので未分割だろうとなんだろうと申告をする必要があります。
揉めていないケースだと穏やかに相続財産の把握のための資料を収集いただくのですが、揉めている場合はそうもいきません。
相手方が非協力的な場合も多いのでエネルギーが必要ですが、揉めてしまった相続の資料収集についてお伝えしておきます。
不動産
不動産を所有しているかどうかは役所に確認をすることになります。
相続人であれば固定資産税の明細や名寄帳を取得できますのでそれらの取得がまずは大事です。
亡くなった方のご自宅に行って資料が残っていないか確認することができる場合にはその方法でもよいですが、縁遠い場合には家探しも一苦労でしょう。
綺麗に整頓されていたとしてもどこに保管してあるかがわからなければ探し物の労力は大きいです。
いっそのこと役所で取得したほうが費用は掛かりますが早いということは十分にあり得ますので、持ち家等がある場合には役所での取得も検討してみましょう。
金融資産
金融資産も場合によっては確認が困難なことがあります。
まず亡くなった方がどこの金融機関に口座をお持ちだったかの確認からスタートです。
お財布のなかにキャッシュカードがないか、ご自宅に通帳がないか、証券会社からの取引残高報告書が届いていないか。
この辺りから探してみましょう。
ネット証券やネット銀行だとこういった書類関係や通帳がないのでもう一段大変です。
そうはいっても確認をしておくに越したことはないですから通帳などがあればそれをもとに残高証明などを取得していきます。
通帳やキャッシュカードが一切見当たらないという場合でも近隣の金融機関に口座があるかもしれません。
こういった場合には口座をお持ちだったかどうかの照会を金融機関ごとにやっていくのが望ましいです。
相続人であれば事情を説明して対応をしてもらうことができるはずです。どこまで対応できるかというのは悩ましいですが、口座がないことの確認も含めてやっておいたほうがよいです。
転勤が多かった場合などはすべてを確認できない可能性もありますが少なくとも近くの金融機関はあたっておくのがよいでしょう。
マイナンバーが金融機関の口座に紐づくようになればこの辺りはかなり便利になるはずです。銀行協会などが預金照会制度を作ってくれると漏れがなくなってよいと個人的には思うのですが、今のマイナンバーの管理体制を見ているとまだ先の話になりそうです。
保険契約
生命保険関係の契約も縁遠いと確認が難しいケースはあります。
保険証券など大事なものを保管している自宅の場所が分かればそれが一番なのですが、証券を失くしているケースもあります。
書類を探してみる、預金口座があれば保険料の支払いや引き落しがないか確認をしてみるのもよいです。
証券があればそれに基づいて確認をする、もしなければ生命保険契約に関しては保険照会制度がスタートしています。
生命保険協会が行っている制度で生命保険契約の有無を確認することができます。
もし手元に書類がなく、全く心当たりもない場合には念のための確認を含めてこちらの利用も検討してみましょう。
債務関係
借金がないか支払いがないかはやはり気になるところです。相続するものよりも多く借金があるとなると相続しない選択肢もでてくるでしょう。
相続の実務では亡くなった方の財産に手を付けると基本的には単純承認といって、プラスのものもマイナスのものも相続することを承認した、とみなされます。
そのため相続することそのものに迷いや検討をしている状態であれば、こういったことを避けるためにもまずは亡くなった方の財産には手を付けないというのが大事です。
そのうえで、債務がないかの確認をしていくことになりますが、連帯保証などは書類上上がってこないこともあるのでなおさら注意が必要です。
ご本人名義の借り入れについては、CIC、JICCなどの個人信用情報の開示が安心です。
ただしここでも連帯保証やいわゆるサラ金からの借入については把握できません。
生前の様子などから借入が多額にありそうだなという場合は特に気を付けたほうがよいでしょう。
揉めていても相続をしない選択肢は取れますのでその選択肢も場合によっては検討しておくのが望ましいです。
まとめ
揉め事がある場合でも遺産分割協議のため、相続税申告のためにも財産把握は必要です。むしろ漏れなく財産を計上できるかどうかが相続税申告の大きなポイントでもあります。
そのためには出来るだけ丁寧に財産の把握をして計上をしていくことが望ましいですし、そのためにできることは相続人であればある程度まではカバーできますのであきらめずに取り組んでいきましょう。