不動産を共有することはなるべくなら避けたほうがいい、というのが相続実務のセオリーではあります。
ただ、セオリーではあってもやむなく共有状態になってしまった、という状況はあるものです。
共有して相続した後のはなしとしてどういう経緯となるか整理しておきましょう。
ほったらかしだとどうなるか
甲乙ふたりで親から不動産を共有して相続したとしましょう。
実家の場合には誰も住んでいないと「とりあえず置いとけばいいか」となりがちです。
そういった場合、もし共有の状態でそれぞれに相続が発生してしまうことがあります。
甲さんの1/2の持ち分は甲さん側の親族がその持ち分を相続しますが、配偶者なのか子なのかはケースバイケース。
配偶者がそのままの持ち分を引き継ぐこともあるかもしれませんが、子が等分で相続ということもあり得ます。
子が3人いてそれぞれが等分に相続ということで甲さんの親族側で遺産分割されたら、子3人がそれぞれ1/2×1/3=1/6ずつ所有することになります。
こうなると実家の持ち分がある登場人物は乙1/2 甲の子3人 1/6ずつです。
ここからさらに乙さんに相続が発生してしまって乙さんの子が相続をしたら、登場人物がどんどん増えていきます。
いとこ同士で相続持ち分がある、となりかねません。
何が問題かというと登場人物が多くなり、それぞれの関係が希薄だと、まとまる話もまとまらなくなります。
それぞれの動機や思惑が絡み合ってくるため、いざ売却しようと誰かが言い始めてもすんなりいかなくなります。
これが甲乙の2人のときだけだとまとまる話もあったかもしれませんが登場人物が増えれば増えるほど、本来まとまるはずだった話がまとまらない。
そのうちまた甲乙それぞれの子に相続が発生すると、、、もう当事者同士では収拾がつかないです。
それぞれがある程度顔見知りで仲が良い、方向性が一致することはまれで、それぞれの子に配偶者がいたりして口を挟んでくるともう大変です。
また甲乙それぞれ配偶者や子がいる前提でここまで起こりうることを見てきましたが、配偶者だけで子がいないケースだと、配偶者側の親族に持ち分が渡っていくことも大いにあり得ます。
解決しようと思うとどうするか
こういう状況になることを避けるためには出来ることをひとつずつやっていくしかありません。
まず有効活用ができないのであれば売却をすることを考えます。
甲乙の意思が同じであれば売却にもスムーズに進んでいくことがありますので、まずは話し合いをしてみることです。
お互いの意思確認がせず、こう思っているはずというだけで事を進めることはできませんので、方向性の確認も含めて話をしましょう。
登場人物が多くてもまずは話し合いの場を作るか誰かが音頭を取って確認していくのが望ましいです。
こういったことが困難、話し合いを持てない、ということもあるでしょう。
甲乙の仲が悪くとりあえず相続で1/2ずつ相続したがそのままほったらかしでここまで来てしまった、ということも無きにしも非ずです。
こういう場合には当事者どうして話し合いが難しいとなると裁判所の力を借りることが最もお互いに遺恨が残りづらいです。
共有状態になっている財産を共有を解消するための請求ということで共有物分割請求と呼びます。
裁判所に申立てをして分け方を決めてもらうことに最終的にはなります。
手順としては
- まず共有物分割請求の相手方への申し入れ
- 拒絶や無視をされたら裁判所に申し立て
- 裁判所で共有状態の解消に向けて話し合い
- 解決しなければ競売にかけるなど
というおおまかな流れです。
共有状態の解消としては、現物をそのまま分ける現物分割、一方が買い取る形で金銭を出す価格賠償、売却して換価しそれを分割する代金分割の3つです。
不動産については現物分割は難しいでしょうから一方が買い取る形か売却しておカネにして分割する形が多いです。
相手方であっても第三者相手であっても売却することになれば利益がでると税金のことが付いて回ります。
譲渡所得という不動産や株を売却したときの利益について所得税がかかる可能性がありますので、そのあたりもケアしつつ問題の解決が出来るように進めていきましょう。
まとめ
共有物分割請求の手続きは交渉も含めて弁護士に依頼することをオススメします。
税金のことは税理士ですが、まずはどういう方向性で分け方や売却が決まるかのほうが優先事項です。
その方向性が見えたときにどれくらいの税金がかかるかがはじめて検討できます。
登場人物が少ないうちに共有不動産をどうしていくか決めておくのが相続対策のひとつでもあります。