相続のご相談でご家族が少ない方のご相談に対応することがあります。財産の行き先を整理して、ご自身の財産をどう引き継いでもらうか考えるきっかけにしてみてください。
親族別の財産の行き先
親族が少なくてもいわゆる直系のかたがいらっしゃればその方に財産を引き継ぐ権利があります。
- 配偶者がいなくて子がいる場合→子が相続人
- 配偶者がいても子がいない場合→配偶者と自分の親(又は祖父母)が相続人
- 配偶者も子もいなくて親が存命の場合→親が相続人
- 配偶者も子もいなくて親が既に亡くなっていて祖父母が存命の場合→祖父母が相続人
- 配偶者も子もいなくて親・祖父母が亡くなっている場合→兄弟姉妹が相続人
- 配偶者も子もいなくて親・祖父母が亡くなっていて兄弟姉妹も亡くなっている場合→兄弟姉妹の子(いわゆる甥姪)が相続人
という順番で見ていきます。
事実婚の場合の配偶者は相続人になれませんので注意が必要です。
家族関係の多様化や独身の比率が高まっていることもあいまってご家族が少ないケースも増えてきている印象です。
いわゆる法定相続人(民法で定める相続人)が少ない場合には相続税が課税される可能性も高まります。
相続税の基礎控除は法定相続人が多いほうが有利になる計算式です。
相続税の基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
ご家族が全くいらっしゃらないケースもあります。
まったくご家族がいない場合の財産の行き先
まったくご家族がいない場合というのもあって、ひとりっ子で親の兄弟もまったくいないというケースがあります。
そういった場合にはその方の財産はいったん相続財産を管理する人が必要ですので裁判所で相続財産管理人という人が選ばれます。
選ばれるのは主に弁護士さんが多いようです。
相続財産管理人になると、亡くなったかの血縁関係があるひとがいないか、また特別縁故者といって世話をしてくれた人がいないかなどを調べます。
それによりそういう人がでてきたら財産を相続してもらうかどうかを裁判所も含めて検討し引き継いでもらうことがあります。
また、そういった方が全くいなければ財産を処分して国庫に帰属させるというながれです。
2021年には一年間で600億円以上の財産が国に帰属したとされていて、金額の大きさにも驚きます。
もしご自身が財産を多少なりともお持ちで親族がいないという場合でも社会のために役立ててほしいということであれば、ご自身が希望する団体あてに財産を引き渡す内容で遺言を準備しておくのがよいです。
もし社会のために使ってほしいということであれば
相続の仕事をしている関係で遺言書を拝見する機会も多いですが親族がいらっしゃらないかたですと一定金額を公益のために役立たせたいとそういう団体に遺贈しているかたがいます。
日本赤十字社や盲導犬協会などがその対象に選ばれていることを見かけます。
また血縁関係はないけれどこの人に残してあげたい、お世話になったかたに残したいという意思があるのであればそれも遺言書に記載できます。
親族がいなくても健やかに日々を過ごしている方はたくさんいらっしゃいますしどうせ国に帰属するなら、何処かの誰かのために役立ててほしいという思いがあるかたもいます。
そういう場合には遺言を書くことを検討してみるのがよいでしょう。
遺言を書いたからと言って財産を使ってはいけないわけではなく、あくまで亡くなったと時点で残っていた財産の処分の話ですので必要に応じて使っていただいて大丈夫です。
まとめ
おひとりさま相続のかたでも遺言は活用できますし、認知症などの不安があれば任意後見などの手続きも視野に入ってきます。
もし今後のことが気になる、心配だ、ということであれば一度お近くの専門家に相談に行かれるのが良いでしょう。