フリーランスが免税事業者の場合にインボイス登録前に確認しておきたいことを整理します。2割特例と簡易課税方式の選択についてです。
2割特例の対象期間かどうか
まずはご自身がインボイス登録をしたら2割特例の対象かどうかを確認してみましょう。
現時点では激変緩和措置の2割特例は、R5年10月から12月分、R6~R8年分の計4回分の申告についてが予定されています。
2割特例の対象となるのはインボイス登録に伴って課税事業者になった事業者です。
注意点としては「インボイス登録に伴って」という部分です。
というのも2割特例の対象になるのはインボイス登録をしなければ元々免税事業者だった、という事業者ですので、元々課税事業者だった期間は2割特例の対象になりません。
例えば、R5年の消費税の納税義務の判定はR3年の売上で行います。
R3年の売上から見てR5年は元々免税事業者→インボイス登録で課税事業者、2割特例適用可能
R4年の売上から見てR6年は元々課税事業者→2割特例適用なし
という判定になります。
記事執筆時点でR5年ですのでR4年までの売上は確定しているでしょうから、R6年分まで2割特例適用が可能かどうかはチェックできます。
売上にかかった消費税の2割を納める消費税として計算できるわけですから、簡易課税との比較で有利不利もあります。
簡易課税制度を選択しておくかどうか
インボイス登録をする際に簡易課税制度を選択しておくかどうか判断に迷うというかたもいらっしゃるでしょう。
仮に上記のように2割特例が外れる期間がすでに判明していて、試算をしたら簡易課税制度のほうが有利になりそう、ということであれば一緒に手続きをしておくのもよいです。
ただし簡易課税制度は2年適用の縛りというルールがあります。途中でやっぱり原則課税にしたい、ということが現状では難しいです。
なので、簡易課税制度を選択するのであれば今後の事業年度において簡易課税のほうが有利かどうかの判定も合わせて行っておく必要があります。
例えば経費が多くて利益が少ないような場合には、原則課税のほうが有利になっている可能性はあります。
目安しては簡易課税制度のみなし仕入れ率より消費税がかかる仕入・経費の割合が高いと原則課税のほうが消費税計算上は有利です。
サービス業のかたで数字で確認してみましょう。
売上:880万円 経費660万円(いずれも消費税込みの金額 すべて消費税のかかる取引)
簡易課税の場合:みなし仕入れ率50% つまり売上にかかる消費税のうち50%を納税
よって880万円×10/110=80万円→80万円×50%=40万円
原則課税の場合:売上にかかった消費税から仕入・経費にかかった消費税を引いて計算
よって880万円×10/110=80万円 660万円×10/110=60万円 80-60=20万円
ちなみに2割特例をうけている場合には売上にかかった消費税の80万円の2割ですから、16万円の消費税の計算です。
卸売業はみなし仕入れ率90%ですので、売上にかかった消費税の10%の消費税計算ですし、小売業はみなし仕入れ率80%ですので、売上にかかった消費税の20%の消費税計算です。
手続きを忘れないようにするのもかなり大事です。
原則として簡易課税制度を選択する場合にはその適用を受ける課税期間の初日の前日までに選択届出書を提出する必要があります。
原則的な取り扱いで言うと今期に簡易課税の適用を受けようとすると前期末が提出期限です。
インボイス登録をしてその登録日から課税事業者になるケースだと簡易課税制度の選択に間に合わないことが考えられますので、特例ができました。
経過措置の期間中(R5.10.1~R11.9.30)にインボイス登録を受けて課税事業者になる場合には、その登録日の属する課税期間中に簡易課税制度選択の届出書を提出すれば、その課税期間の初日の前日に届出書を提出したものとみなして、その登録日の属する課税期間から簡易課税制度で計算することができる、となっています。
例えば、R6年にインボイス登録をして課税事業者になった個人事業者は、R6年」12月31日までに簡易課税選択届出書を提出すればR6年分の消費税について簡易課税方式により計算できます。
まとめ
フリーランスのかたがインボイス登録をする前に確認しておきたいことを整理しました。
申告の手間もそうですが契約が継続するかなど事業継続のために何が必要か必要でないのか、見極めて一つずつクリアにしていきましょう。