2022年末の税制改正大綱により贈与に対する税金の仕組みが変わる予定です。(法律はまだ成立していませんのでここでは予定としています 2023.2.6時点)
相続時精算課税贈与を選択するかどうかについてリスクを考えてみます。
相続時精算課税贈与で大きく変わる部分
相続時精算課税贈与は相続時に精算課税贈与として手続きした以後の贈与を足し戻して相続税を計算するしくみです。
相続税の申告のときに贈与を精算する、ということで相続時精算課税贈与という表現になっています。
いままでと改正があったあとで変わるのが相続時精算課税贈与を選択した後でも基礎控除が使えること。
110万円までは贈与税がかからず相続財産への足し戻しの対象にならない、というのはかなりの大盤振る舞いに見えます。
実際に法案が成立して令和6年1月1日以後から改正の内容が適用されるようになると相続時精算課税贈与を選択したいと考える方も増えると予想されています。
ここで相続時精算課税贈与を選択するときのリスクについては改めて念頭に置いておいた方がいいでしょう。
リスクとリターンを比較してどうするか考えていくのがセオリーですが何分、相続や相続時精算課税贈与は亡くなるタイミングに大きく影響されます。
何を重視するかはそれぞれの状況や考え方で違ってきますのでこうしてくださいというのがお伝えしづらい部分です。
メリットやリターンはいつ亡くなるかが分からない以上、今後の生活などにも影響しますし断定できません。
ただし、リスクを正しく認識しておくことはどなたに対しても出来ることかと考えています。
相続時精算課税贈与のリスク
リスクとして2つ抑えておきたいことをお伝えします。
撤回できない
相続時精算課税贈与の最も注意すべき点として一度選択すると「撤回できない」ということがあります。
今までもこれからもこれは変わりません。
一度本人の意思で選択することを届け出ると贈与する方が亡くなるまでずっとそのまま適用されます。
この「途中でやめれない」というのは先が見えない状況においてはかなり大きなリスクになり得ます。
人の生き死にですから先が見通せないものです。
その点を相続税対策のおいてどこまで織り込むか織り込まないか。
状況が変わる
状況が変わるというのは法律が再度変更になって相続時精算課税贈与の基礎控除がなくなる可能性もゼロではありません。
簡単に言うと梯子を外されるということ。
そのほかには暦年贈与のほうが得だったかも、ということはあり得ます。
例えば210万円を5年間贈与した場合を考えてみると、早めにはじめて早めに終われば暦年贈与の生前贈与加算の対象となる7年間から外れることも充分に考えられます。
相続時精算課税贈与を選択してた状態で210万円×5年間をした場合には110万円の基礎控除を考慮しても500万円(210万円-110万円=100万円の5年間)は精算課税の対象です。つまり相続税申告の際に足し戻すということ。
早めに贈与をはじめて早めに終わるというのも検討したほうが良いでしょうし、生前贈与加算の対象外になる方が増える、ということもあり得ます。
生前贈与加算の対象者は今回の税制改正でも変わりません。相続遺贈で財産を取得した相続人等が対象です。それ以外の方は生前贈与を受けていても加算対象外です。
相続人のかたでも相続遺贈で財産を取得しなければ加算対象外ですし、相続人以外のかたはそもそも相続遺贈で財産を取得しないことのほうが多いので加算対象外です。
お子さんは相続人になる可能性が高いですが結婚して配偶者ができ、子ができる、贈与する方から見ると孫ができる、こうなると状況が変わります。
相続時精算課税贈与は途中でやめれないので状況が変わったときに選択肢を変更することができません。
どこまで状況が変わるかはこちらも予測不可能なことがありますので、相続税対策で贈与をしたいと考えたときにはアタマの片隅に置いておきたいことです。
まとめ
精算課税贈与のリスクについてお伝えしました。生前贈与加算の対象期間が7年に延長されることと合わせて、どういう選択肢があってどういうリスクがあるのかは判断材料に入れておきましょう。
精算課税贈与の改正は令和6年1月1日から(予定)で、生前贈与加算の対象期間が7年になるのは令和13年から(予定)です。
相続税対策が必要なかたは選択肢が増えたと言えますので再検討してみましょう。