漫画家のかた同人作家のかたで出版をしている場合(自分で印刷して、ということではなく原稿を出版社に納めて原稿料、著作権使用料を受け取っている場合)には、原稿料等から源泉所得税が差し引かれます。
源泉所得税の把握の仕方について整理しておきます。
明細がある場合
出版社から細かい内容の明細が届く場合にはその明細の通りに把握します。
電子系のところで大手はキチンとこういった明細を出してきます。
FANZAの場合にはデジタルコマースから、DLsiteの場合には株式会社エイシスから明細が届きます。
この2社の明細は売上金額と源泉所得税の金額が記載されていますので源泉所得税の金額を把握しやすいです。
手数料を引かれたりもなく、どの期間の売上かわかりやすいです。
あとはとらのあなやメロンブックスも期間と金額、あと源泉所得税がある場合にはきちんと記載されています。
こういったところと取引している場合には明細がでてきて、振込手数料なども記載があるので売上の期間対応、源泉所得税の把握がしやすいです。
明細の通りに入金されているはずですからその通りに計上しましょう。
例えばデジタルコマースでいうと以下のようになります。
7/31 (売掛金)〇〇円(売上)☐☐円
7/31 (事業主貸 源泉所得税)△△円(売上)✕✕円
8/20 (普通預金)〇〇円(売掛金)〇〇円
源泉所得税部分は売上に含めて計上します。(売掛金)の金額が入金金額です。
とらのあなだとこういった形です。
7/31 (売掛金)〇〇円(売上)☐☐円
7/31 (事業主貸 源泉所得税)△△円(売上)✕✕円
8/31 (普通預金)◆◆円(売掛金)〇〇円
(手数料) ▲▲円(売掛金)▲▲円
7/31に計上した売掛金の金額と、8/31に入金になったときの売掛金(普通預金)と売掛金(手数料)の合計が一致します。
明細がない場合
問題は原稿料等についての明細が届かない出版社と取引している場合です。
大手の出版社でも入金の都度、原稿料に関する明細を出していないケースもあり、新興から中堅の出版社だと割と多い印象です。
この場合には毎月の入金金額から源泉所得税を割り戻して計算して計上する必要があります。
いくら源泉所得税を差し引かれているか明細がないため入金金額から推測するということです。
このままだと計上した金額が合っているか答え合わせができませんので、支払調書を年明けに受け取ったときに確認をします。
もしくは最初の契約の時に以下のことを確認しておきましょう。
入金される金額はいつの期間に対応するものか。例えば8月に入金される金額は7月分の原稿料等としての分か、さらにその前月の6月分なのかなど。
あとは消費税の部分に源泉所得税をかけているかどうかも確認しておきましょう。
税込金額に源泉所得税をかけているか、税抜金額に源泉所得税をかけているか、という部分です。
税抜金額に源泉所得税がかかっていることが多いというのが個人的な印象です。
税抜きの本体価格に源泉所得税がかかっている場合は以下のような計算になっています。
本体価格50万円の原稿料だとすると
原稿料:50万円
源泉所得税:50万円×10.21%=51,050円
消費税部分:50万円×10%=50,000円
入金金額:500,000円-51,050円+50,000円=498,950円
です。
本体価格50万円の原稿料にたいして消費税を含めて源泉所得税がかかっている場合には
原稿料:50万円
源泉所得税:(500,000円+50,000円(消費税部分))×10.21%=56,155円
入金金額:550,000円-56,155円=493,845円
となります。
消費税相当の部分に源泉所得税がかかっているかの違いで入金金額が違います。
源泉所得税がどこにかかるか(税抜価格なのか税込価格なのか)で天引きされている所得税の金額が変わりますので確認しておきましょう。
支払調書のみで確認する場合にも割り戻し計算をして源泉所得税の部分を確認しておきましょう。
税抜き価格に源泉所得税がかかっている際の割り戻し計算式は
100万円以下の場合には(振込手数料はかかっていないものとします)
手取金額/0.9979で税抜き本体価格が計算できます
100万円超の場合には
(手取金額-102,100円)/0.8958で本体価格です。
またときどきあるご相談で、確定申告が終わった時点で去年の売上期間にかかる明細が届き入金があるケースがあります。
例えば8月に去年の6~12月分の売上が入金になるようなケースです。
この場合にはこちらで売上の把握が困難であることを考えると、計上するのは現実的には難しいと思われますので入金のタイミングで売上計上をせざるを得ません。
いつ入金になるかわからないものを待っていては確定申告がいつまでたってもできませんので、処理としては致し方ないと考えます。
まとめ
漫画家や同人作家のかたのご相談を受けると源泉所得税がいくらか、どうやって確認するかをよくわかっていない、という方が多いです。
場合によっては入金金額を売り上げに計上していて源泉所得税を確定申告の時に精算していないというケースも見かけます。
ある程度金額が大きくなってくるまえに一度専門家に相談してチェックをしてもらうようにしてみましょう。