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相続税申告での過去の資金移動のチェックと対応

資金移動のチェックと対応

相続税申告の際には可能な限り亡くなった方の過去の預金通帳を拝見し、資金移動をチェックします。

その中で多額の資金移動があったときにどう対応するか、チェックの重要性などについてお伝えします。

目次

過去の資金移動チェックの重要性

おカネが出て行っているなら何に使ったのか、通帳間の移動なのか、手元においていたのか(いわゆるタンス預金)など行方を確認するためです。

申告書を提出した後には税務署でも同じことをしていると考えられており、事前にあやしいところをつぶしておく、整理して記録しておくためにおこなっています。

税務署に申告書を出した際には、亡くなった方の通帳の履歴、相続人の通帳の履歴は基本的にチェックされています。

そのなかで、通帳の履歴を見ただけでは使途が分からないものが多数ある場合には確認したい、という方向性で考えることが予想されます。

相続税申告の税務調査は概ね3年以内におこなわれることが多いですが、1年経ってからというケースも多く、タイミングとしては申告書を提出してから1年~2年ぐらいが最も多い印象です。

この間に過去のことを覚えていて、通帳の履歴を見て何に使ったのか、贈与かどうなのか、ということを説明できればよいです。

分からなければそれでよいのですが、もちろんわかってきちんと説明できるのが望ましいです。

そうはいっても相続人の立場からすると例えば遠く離れた場所で生活していて親の通帳の履歴を見ても何か判然としないということももちろんあるでしょう。

徹底的に何が何でも調べるというよりかは、分かる範囲で教えてください、思い当たることはないですか?と私の場合はお伺いしています。

旅行に行ったとか、家の修理をしたとか、車を買ったり売ったりといろいろと見聞きしたこととの整合性があるかを確認していきます。

全てのことがわかるというわけではないのですがそれは税務調査官も同じです。

丁寧に資金移動をチェックしていくことがやはり税務調査時の指摘のリスクを軽減しますし、事前に確認し記録しておくことが安心にもつながります。

そんななかでも多額の場合には資金使途はある程度確認しておいた方がいいと考えています。

資金移動といっても亡くなった方の別の口座に移動していることもありますし、どこにも移っておらず使ったのかどうか、また相続人の方の口座に移動していることもあり、それぞれについて確認して対応していくことが必要です。

その資金移動は贈与?貸付?預り?それとも費消?

資金移動のパターンとしては大きく3つあります。

亡くなった方の別口座への移動

これはご本人しか訳を知らない可能性もあります。何気なく資金を移動したみたいなこともありますし、ペイオフ対策ということで移しておられるのかなと想像することも。

ただこの場合にはご自身の口座からご自身の口座にそのままスライドしているだけですので問題にはなりません。

亡くなった方の口座から相続人の口座への移動

亡くなった方の口座の通帳を確認して資金移動を追いかけていき、そのなかで相続人の方の口座に移動していることが判明することがあります。

ご存命のかた(相続人)のかた通帳を拝見するのは時としてハードルが高いのですが、亡くなった方の通帳から出金しているものをピックアップしてヒアリングをしていくことである程度カバーしていきます。

そのなかで、相続人のかたの口座に移動していることが分かった場合にはさらにおおきくわけて3つのパターンになります。

①相続人の認識として贈与だった

贈与税の申告があったかどうかを確認します。贈与税の申告があれば金額の確認がしやすいです。

相続開始前3年以内の贈与であれば生前贈与加算、贈与税額控除の適用について検討します。

まれに贈与という認識だったけれど贈与税申告を失念していたということがありますのでそういう場合には相続税申告前もしくは申告と同じタイミングで贈与税の期限後申告書を提出することを検討します。

②相続人の認識として貸し付けだった

親族間、親子間などでおカネの融通をするということはあることです。

ただし、いわゆる貸付の契約書があるかというとないことのほうが多いので、借りたものであれば返した実績などがあるかどうかは確認しておきたいところです。

贈与か貸付かの争点は税務調査においても時折見受けられます。貸借の契約や返済計画があって、それが無理のない計画かどうかもポイントです。

貸付ということであれば亡くなった方の財産として貸付金を計上することを検討します。

③相続人の認識として預りだった

自分にもし何かあったらここから各種の支払いをしてほしい、と相続人に後のことを考えて一定程度おカネを預けるということもあり得る話です。

この場合、数百万円だと現金で手元に置いておくのは防犯上の理由などからお勧めできませんので相続人の口座に移す、ということもままあります。

相続人の認識として預かっていたものだ、ということで相続人名義の口座に入っている場合にはその金額を預かっていたものとして計上することを検討します。

亡くなったかの口座からどこの口座にも移っていない

この場合は費消、つまりその引き出したおカネを使った場合、また現金として自宅に保管(いわゆるタンス預金)になっている場合のいずれかが考えられます。

すべての費消を相続人が把握できるわけではないですがある程度大きな金額(50万円以上など)であれば内容把握に努めます。

家の修理をしたとかなにかを購入した、また高額な自費診療のため、薬のために引き出していたと推定できる場合もあります。

それがなにかのモノに変わっている場合には相続財産に該当することが考えられますのでその方向性で検討します。

家に保管されていた場合には相続開始日現在の推定される手許現金として相続財産に計上します。

まとめ

すべての預金引き出しについて把握できることは理想ではありますが、何かのために引き出したけれど何で使ったか分からない、ということも起こり得ますのである程度の線引きをしていくことも時には必要です。

相続人にわからず、手元にも残っていないのであれば税務調査においても追及しづらいことは考えられます。

預金通帳の不明出金については丁寧にかつ慎重に検討し記録を残しておくことが大切です。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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