当事務所では漫画家、イラストレーターのお客様が複数いらっしゃいますがそのうち結構な割合で通知がない入金、遅い入金があります。
通知がない入金や遅い入金の処理について整理をしておきます。
通知がない入金の処理
入金にあたって通知がないケースというものも一定数あります。
電子書籍系であってもきっちりしているところとそうではないところがはっきり分かれる印象です。
例えばデジタルコマース(DMM、FANZAの運営会社)や、エイシス(DLsiteの運営会社)、とらのあな(店舗販売、EC、Fantiaなどの運営会社)、メロンブックス(店舗販売)は毎月の支払通知がきっちりしています。
源泉徴収税額や支払手数料なども細かく記載があり経理処理をする際にはわかりやすいです。
一方で古くからある出版社や新興の電子書籍系の会社からは通知がない場合、かなり遅れる場合があります。
その際には基本的に書籍や本を印刷して卸しているわけではないでしょうから、印税、原稿料、著作権の使用料の対価と考えられます。
よって入金金額から源泉所得税を割り戻して計算することで売上金額、売上にかかる消費税額、源泉徴収税額の把握をします。
消費税部分に源泉所得税がかかっている場合とかかっていない場合がありますので、出版社に確認をしておくのがいいでしょう。
契約書に記載されているケースもありますし、出版社側で処理を統一していると考えられますので一度確認しておくのが安心です。
売上計上のタイミングですが通知があるところをみていると月締めで早いところだと5日や10日に入金のケースもあります。
この場合は前月末で売上計上、入金時に売掛金消し込みとなります。
3月31日 (売掛金)/(売上)
4月10日 (現預金)/(売掛金)
3月分の売上として4月に入金されたものを処理するイメージです。
通知がない場合も同様です。少なくとも当月分を当月に支払う処理のところはないでしょうから前月または前々月の分のはずです。
入金金額の計算方法と同じく、通知がない場合には出版社の担当者の方を通じて確認をしておきましょう。
遅い入金の処理
入金がかなり遅くなる売上というのも見かけます。
例えば電子書籍系ですと前年分の期間に対応する電子書籍販売による収入の通知と入金が年明け4月にあったりします。
一定金額にならないと支払をしないというケースがこの場合には多いです。
ではさかのぼって確定申告書を修正して出し直すのかと聞かれることが多いのですがこちらで把握できないモノについては致し方ないとも言えます。
振込と同時期に通知があってそれがすでに申告をした前年分に該当する場合には入金ベースで処理することもやむを得ないと考えています。
金額が大きい場合には遅れてということはなさそうですが、自分で入金処理をする場合とは別です。
自分で入金依頼をかける場合にはその期間に対応した売上を確認する必要があります。
例えば3月分の売上をご自身でウェブサイトなどで確認できる場合にはその確認した金額を売上として3月末に計上しておくのがよいです。
一定程度金額が貯まってきたら入金処理をする場合には以下のような処理になります。
1月31日 (売掛金)/(売上)10,000
2月28日 (売掛金)/(売上)30,000
3月31日 (売掛金)/(売上)50,000
4月20日 (現預金)/(売掛金)90,000
という形です。
売上をご自身で確認できる場合にはこのように売上が発生したベースで処理ができます。
支払調書頼みにしない
漫画家の方やイラストレーターの方に多いのが支払調書ベースで売上を把握している方です。
支払調書は入金ベースで作られる書類ですので発生ベースで売上を集計したときとズレが生じます。
また支払調書は本来は報酬を支払う側、今回でいうと出版社等が〇〇さんに原稿料等をいくら払い、それに対する源泉所得税をいくら納めました、ということを税務署に報告するための書類です。
通知があればそれをもとに発生ベースで売上を把握するのが最も確かですので、支払調書頼みの経理をやめていきましょう。
まとめ
通知がある場合の処理、入金が遅く通知も遅れる場合の処理などをお伝えしました。
入金ベースではなく発生ベースで売上を計上できるように情報を収集して整理しておきましょう。
複数の出版社と取引している場合などはそれぞれで処理が異なるケースもありますのでその点も注意が必要です。