こんにちは、京都の税理士ジンノです。
相続税申告の際に不動産をお持ちのときは名寄帳をお願いすることがあります。財産をもれなく計上するためです。
もれなく財産を把握する
相続税の申告の調査の状況が毎年国税庁から発表されています。令和元年分によりますと申告漏れ財産の価額のうち12%ほどが土地・家屋にかかるものです。
相続税申告の申告漏れ財産の一番多いものは現預金ですがこれは名義預金の発覚によるものが相当数を占めていると考えられますが、不動産についても把握できていなかったものが一定程度あると考えられます。ほかには財産評価の計算誤りもあります。
名義預金については見解の相違というのも税務調査ではよく見受けられることがらで、簡単に言うと認識の違いとも言えます。
贈与されたものだと思っていたとか、存在すら知らなかったというケースもあります。
もれなく相続財産を把握するというのは実はとても難しいものです。
地主さんであれば代々引き継いできたものが地番がかわり、測量があって地籍が変わったりと、一見すると変わりがないように思うかもしれませんが不動産にも変更事項はあります。
こういった不動産の財産の状況は口伝される(口伝えに伝えられる)こともあり、漏れが起きやすいです。
特に田舎のほうに山林を持っていたり、不動産を持っている場合には「山のほうに土地を持っていたらしい」というあいまいな情報もよくあるものです。
こういった不動産がどうやらありそうだぞ、というときには市区町村で名寄帳(なよせちょう)を取得していただくことがあります。
相続人の方が思いもよらかった不動産がポロっと出てくることはしばしばあります。
固定資産税課税明細は全部を把握できるわけではない
固定資産税評価額を用いて家屋や土地の財産評価を行うことがありますので、固定資産税評価証明(明細書)を取得するのですがそこに記載されていない不動産もあります。
というのも固定資産税には免税点というものがあります。この金額より下であれば課税しませんというラインです。
課税標準額という固定資産税の税率をかけるもとになる金額が土地については30万円、家屋については20万円未満であれば固定資産税が課税されません。(合計金額で)
つまり固定資産税が課税されない範囲で不動産を持っている場合には固定資産税評価明細そのものが手元になりケースもありますし、明細書を取得しても記載されていないことがおこりえます。
これにより免税点以下の不動産について計上漏れが発生してしまうというわけです。
一方で名寄帳の場合は例えば京都市で取得をすると京都市にあるその人の所有する不動産がすべて把握できます。
名寄帳は固定資産税の課税の有無ではなく所有者で把握できますので所有する物件を把握する際には固定資産税課税明細ではなく名寄帳がよいです。
そのうえで物件を確認し登記簿謄本などを取得して財産評価を進めていくのが漏れが亡くなる良い方法と考えられます。
名寄帳はその市区町村役場で取得することができます。
市区町村の対応窓口で取得するか郵送により取得することができますので請求する市区町村役場のホームページで手続等を確認しましょう。
財産の漏れがあると不都合が多い
財産の漏れがあると相続税の計算上も漏れていることになりますので追加で申告が必要となります。いわゆる修正申告というものです。
一方で申告が必要ないケースでも財産を把握できていない場合には不都合があります。
それは最悪の場合にはその新たに出てきた財産、分割協議書に記載していない財産について遺産分割協議を必要とする可能性があるからです。
当初の遺産分割協議書にその漏れていた財産が計上されていないかった場合には、分割協議書にその旨(新たに発見した財産の相続割合等)が記載されいていない場合にはその新たに出てきた財産について分割協議が必要となります。
一度で済ませられるならそのほうがいいでしょう。
ちなみにその新たに出てきた財産以外の当初の遺産分割協議で決まった遺産相続の内容を新たな財産と一緒に変更してしまうと贈与税の課税対象となります。
法律上は遺産分割協議を何度してもよいですが税務上は一度確定した遺産分割協議についてやり直しをすると贈与したとみなされるからです。
財産の漏れを見越した遺産分割協議の内容(後日判明した新たな財産についての分け方の言及)は確認しておくのが望ましいです。
まとめ
相続の資料集めにおける名寄帳の重要性についてお伝えしました。計上漏れが発覚するといろんなところに影響しますので丁寧にやっていきましょう。