こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
相続税申告のサポートをしておりますと親族間で揉め事が起きてしまうことがあります。もし揉め事が起きてしまったら申告はどうなりますか?というご質問をいただくことがありますので顛末を整理してみましょう。
揉めている状態の相続税申告
財産の分け方で親族間で折り合いがつかない状態だとなかなか先に手続きも含めて前に進めないことになります。
遺言があってもなくても揉めるときには揉めてしまうのですが少し方向性が変わってきます。
遺言があるとき
遺言があるときには揉めないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
例えば自筆遺言の場合にどういうことがおきるかというと、「この字はお婆さんの字じゃない」「日付から考えると認知症だったので遺言は無効」「元気だった時にきいていた話と中身が違う」「誰かが横で財産の分け方について吹きこんだ」といった主張が成されるケースがあります。
こうなると遺言が有効か無効かを争われることになり家庭裁判所で調停、そこで折り合いがつかなければ地方裁判所で裁判と進んでいきます。
相続税の申告書の作成が必要な場合においては相続税計算上の財産の内容を収集し、評価計算が必要な財産については相続税評価額を算定する、というのは同じ流れです。
遺言に基づいて申告をするか否かについては2つの選択肢があります。
ひとつは一旦遺言の通りに申告をして遺言が無効となった場合に修正申告、更正の請求をするパターンです。
もうひとつは遺言が無効という前提で遺産未分割として申告をし、確定した段階で申告のやり直しをするパターンです。
どちらで進めるかは相続人の方との相談になりますが一旦は遺言の通りに申告するパターンのほう多い印象です。
というのも未分割申告の状態だと各種の相続税申告上の特例が利用できず相続税が特例適用前の高額な金額になることがあるからです。
状況に合わせて申告をどのような形で行うかを決める必要があります。
遺言がないとき
遺言がないときは相続人で遺産の分け方を相談し決定してもらう必要があります。
遺産分割協議という話し合いを通じて誰が何をいくら相続するのかを決定するという流れをとります。
遺言がない状態ですので申告期限までに遺産分割がまとまらない状態であれば未分割による申告を行います。
未分割申告の場合には「申告期限後3年以内に分割見込書」を添えて申告を行うことが一般的です。
この見込書を提出することにより3年以内に遺産分割がまとまって申告をやり直す際に各種特例を適用して相続税を計算することができます。
もし3年以内に分割できない状態の場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続」をその申告書を提出した税務署に提出します。
これにより3年の期限が再延長されるようなイメージです。
ちなみに「やむを得ない事由」というのがどういうものかと言うと、その遺産分割について調停や裁判が行われていることが主な事由です。
揉めてしまったときの顛末
揉めていても相続税の申告が必要な場合には申告期限までに申告書を作成し提出し、納税金額があれば納税をすることが必要です。
遺産の分け方がきまらない状態というのは預金口座の解約、名義変更等も出来ないことになりますので財産は一旦塩漬けの状態です。
この場合、納税にあたって新設された預金の引き出し制度を使うことも可能ですが、基本的には遺産からではなく、ご自身の財産から納税をすることになります。
税務申告上は一度申告をしていますのであとは遺産の分け方が決まる、調停・裁判の結果が出るのを待つ、ということになります。
間に入って取り持つことはできませんので、遺産分割の結果をもって申告をすることを税理士としては様子を見て待つしかありません。
また相続人の方の立場で考えると遺産の分け方が決まれば以前の申告を担当した税理士に申告のやり直しを依頼することになります。
3年以内の分割見込書を提出していた場合には各種の特例が適用できますので、当初の未分割申告よりも納税金額が下がることが多いです。
申告の内容としては還付してもらう内容の更正の請求となります。
まとめ
相続税申告において揉めてしまった時の流れを解説しました。
いずれにしても揉めてしまうととてもエネルギーを消耗し、親族関係も修復困難になります。
揉めそうなのであれば事前の対策を専門家と一緒に考えていくのがよいでしょう。