こんにちは、京都の税理士ジンノです。
ひとつ前の記事で相続に関する法改正について解説しました。
そのなかで「相続した土地について要件を満たす場合には国庫に帰属させる、つまり引き渡すことができる制度」が創設されることに触れました。
概要が公表されていますので、どのような土地について利用できるかを少し見ておきましょう。
制度の概要
全国的に所有者不明な土地が多く存在していることが知られており、相続登記の義務化などの法整備が進んでいます。
そのなかで相続したけれど使いみちがなく放置している土地や管理ができない山奥の土地など売却さえも困難な「相続しても処分に困る土地」が所有者不明な土地の多くを占めているとも言われています。
巷では不動産にかけて「負動産」とか「お荷物不動産」などと呼ばれ、相続して困るもの代表的な財産のひとつとなっています。
こういった状況を改善すべく、相続した土地について一定の要件を満たしている場合には国にその所有権を帰属させる、つまり引き渡すことができる制度が創設されることとなりました。
どんな土地であれば国に引き渡すことができるか要件を確認してみましょう。
帰属させることができる土地の要件
「承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない」と列挙されておりどれか一つでも満たす場合には承認手続きができません。
- 建物の存する土地
- 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
- 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
- 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
- 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
- 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
- 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
- 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律より抜粋)
言い換えると以下のようになります。
- 建物の立っている土地
- 金融機関などの担保設定がされている土地
- 通路など他人が使用が予定される土地
- 土壌汚染されている土地
- 土地の境界が明らかでない土地、相続争いなどがある土地
- 一定の勾配・高さのある崖がある土地
- 放置車両や樹木など除去しなければいけないものがある土地
- 地下に除去すべきもの(産業廃棄物など)がある土地
- 隣人トラブルがある土地
- 上記に掲げるような土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地(管理費用や手間が余計にかかる土地)
となり10要件とされています。
これらに該当しなければ国庫に帰属させることができる土地として申請できる可能性があります。
手続きの流れ
手続きの流れをおさえておきましょう。
- 承認申請
- 法務局(法務大臣)による要件審査・承認
- 10年分の土地管理費相当の負担金を納付
- 国庫帰属
という4つのステップです。
この中でポイントなのは③の負担金の納付です。
現状では原野で約20万円、宅地(200㎡)で約80万円とされていますが細かい内容は今後政令により定められます。
要件を満たした土地について費用負担をして手放せることの効果は、望まない相続財産を将来において断ち切ることができること。これにより所有者不明の土地が減ることが期待できます。
まとめ
要件は比較的厳しくまた費用負担の面もあることからどれだけこの制度の利用が進んでいくかは未知数です。
今後運用が進んでいくことで制度そのものが利用しやすいように改善していくことを期待しています。
2023年中に施行される予定です、情報が出次第またご紹介します。