こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
相続人間で揉め事や争いがある場合の相続税申告書についてご質問をいただくことがあります。別々で提出できるのか、といったところはご質問としては多いです。
相続人同士で別々に申告書を提出することはできますが注意点はありますので整理しておきます。
申告書は別々で提出可能
相続税の申告書は相続人ごとに別々で申告書を準備して提出することは可能です。
相続税の計算は亡くなった方の財産をベースに計算をし、相続財産の割合に応じて計算した相続税を負担する流れです。
相続税の申告書そのものも全体からそれぞれに分けていくという様式になっていますので、相続人それぞれで提出することもできますし別々で提出することもできます。
揉め事や争いがない場合には共同して提出してよいということになっていますので、特段の事情がない場合には申告書の提出先が同じ(亡くなった方の亡くなった時点の住所地を管轄する税務署(日本国内の場合))です。
添付する資料などが相続人ごとで基本的には同じため、共同して提出することが多いというのが実際のところです。
共同して提出する場合のイメージですが、申告書を上から並べると
申告書第1表
申告書第1表(続)
申告書第〇表(必要に応じて)
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申告書添付資料(財産評価明細、残高証明書など)
申告書第1表:亡くなった方の氏名、財産額などが記載され、相続人等のうちの1人の情報が記載されます。
申告書第1表(続):相続人等が複数いる場合には1用紙に2人ずつ情報を記載されます。
相続人が単独で提出する場合のイメージは
申告書第1表
申告書第〇表(必要に応じて)
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申告書添付資料(財産評価明細、残高証明書など)
相続人等が複数いる場合でそれぞれ単独で提出する場合にはこのセットを人数分用意することになります。
別々で提出する際の注意点
申告書を作成する際には基礎控除額の計算などで法定相続人の記載が必要となるため申告をしない人の氏名も申告書に記載されることになります。
以前は申告書の相続人の欄に斜線を引くことや申告書に押印をしないことでその相続人が共同して申告書を提出していないことを明示していました。
押印廃止に流れに伴い相続税申告書にも押印不要となった影響で、申告書に押印をしていない=共同して提出していない、という判断が出来なくなり、申告書の様式のうち押印欄が参考欄となりました。
もし共同して申告書を提出をしない場合にはその相続人欄の右側の参考欄に〇印を付すこととなっています。
また共同して提出しないケースはどういった場合かと言うと相続人同士で争いがあり、それぞれの相続人が別の税理士に申告書作成を依頼しているケースです。
この場合において仮に相続人Aと相続人Bがそれぞれ申告書を別の税理士に依頼して出来上がった申告書があるとします。
この申告書A(相続人A側)と申告書B(相続人B側)の申告書の内容が異なる場合には税務調査の可能性が上がります。
というのも亡くなった人はひとりで亡くなった時点の財産額を計上して税金計算をしているわけですから、異なる内容の申告書が2つあると単純にどちらが正しいのか、という話になるからです。
税務調査はいつ誰に、というのは分からないものではありますが、出来れば可能性は低くしておきたいところです。
もし申告書A、申告書Bが出来てしまう場合でも税理士同士のすり合わせができそうであればそれも一考する価値はあります。
揉め事はないほうがもちろんいいけれど
揉め事はもちろんないほうが良いでしょうし、亡くなった人もそれを望んではいないでしょう。
家族がいま仲が良くてもずっと仲が良いかと言うとそう決まっているわけではないです。また財産やおカネに関わることではまた別の人間性が表出することもあるわけです。
親族どうしであるがゆえの遠慮のなさというのもあります。
もし親族間で争いや揉め事があっても申告期限は待ってくれませんので、未分割の場合には特例を適用できず一旦は特例適用をしないものとして申告・納税となります。
一定の場合には分割が確定した時点で申告のやり直し、納めすぎた税金があれば還付となりますが心理的な負担は一度の申告で終わる場合と比べると大きくなります。
揉め事や争いがなく相続人みなさんが納得して遺産分割や申告をするためには生前のご相談が欠かせません。
もし心配事があるようでしたら早めの対策を講じましょう。
まとめ
揉め事や争いがあると精神的なストレスや負担はかなり大きくなります。また遺恨が残りぎくしゃくしてしまうこともあります。
申告書の様式について解説をしましたができることなら共同で提出できる親族関係がよいでしょう。事前のご相談でそれぞれの事情にあわせた対策を検討し実行することで回避できることはたくさんあります。