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試算表・決算書に役員貸付金が計上されている理由

役員貸付金

こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

試算表(月次決算)や決算書をよく見ると「役員貸付金」という項目が計上されていることがあります。

これってどういうこと?社長が会社からおカネを借りていること?そんなことしてないぞ、と思うかもしれません。計上されている理由などを解説します。

 

目次

役員貸付金が計上されている理由

試算表や決算書を眺めていてふと「役員貸付金」という項目があることに気が付くことがあります。

 

会社の書類に記載されている役員貸付金ということなので、会社から役員、社長に対しての貸付金という意味です。

 

この項目を見て「いや、わたしは会社からおカネを借りた覚えはない」という方は結構な割合でいらっしゃいます。

 

確かに会社からおカネを借りているわけではないというのは正しく、給料以外には会社からおカネを受け取っていないぞ!という方も多いです。

 

でもちょっと確認したいのですが、会社のおカネでプライベートの支出を払っていませんか?こう聞くとドキッとする方が同じく多いです。

 

自分の会社のおカネなんだから多少なりともそういうことはあるよ、ということもよく分かります。

 

ただ会社のおカネはその会社の事業を行うために使うものであって、社長さんのプライベートのために使っていいものではないです。線引きはとても大事です。

 

例えば会社の現金から社長さんがプライベートで行っているスポーツジムの月会費7,700円を払ったとしましょう。

 

支払日は今日とすると
5月22日 (勘定科目)(現金)7,700円 というのがまず浮かぶと思います。

問題は支出の内容をあらわす勘定科目を何にするか。

 

会社で働く自分のための費用なんだから福利厚生費だろう、と思う方がいるかもしれません。

 

気持ちはとてもよくわかりますが役員さんのみに対しての福利厚生費というのはなくて、福利厚生費はそもそも従業員さん向けの費用です。

 

福利厚生費というのは役員さんのみだと突然厳しい目で税務署からは見られます。税務調査なんかでもピックアップされる項目のひとつですから気をつけましょう。

ここでは福利厚生費にしたい気持ちをグッと抑えて違う項目を考えます。

 

このようにお話するとじゃあ交際費かなと思う方もいます。でも会社にとって事業に関係のある費用かどうかがそもそも問題です。

 

ジムに行って営業をしています、という説明はやはり苦しいものです。ジムで営業活動しているかたを見たことがあるでしょうか?わたしはいまのところないです。

 

たまたま仲良くなったひととジム終わりにお茶したり、食事に行ったり、ということはあるかもしれませんが、じゃあそれは仕事ですか?プライベートですか?と聞かれるとハッキリと仕事だと言える方は少ないように思います。

 

もしわたしがそういうお付き合いがジムでできたとして、その人に「キミとのお茶や食事は交際費だからジムの費用も交際費なんだ」と言われたら悲しくなると思います。ビジネスの関係だと言われているわけですから。

 

そんなことわざわざ言わないと思うかもしれませんがどこでどう伝わるかはわかりませんし、雰囲気で察するかもしれません。やたらと領収書をもらうな、とか。

 

福利厚生費でも交際費でも難しいとなったらやっぱりプライベートの費用なんだから経費として処理するのはやめておきたいところです。

 

そうするとどの項目を使うかというと「役員貸付金」となります。やっとでてきました。

会社のおカネを社長の個人的支出のために使っているので、仕訳としては以下のようになります。

5月22日 (役員貸付金)(現金)7,700円

 

ようやくここで役員貸付金の正体が見えました。

結局のところ事業に関係のない支出を会社のおカネでしてしまうとそれが役員貸付金になっちゃうということです。

 

現金に限らず、会社名義のクレジットカードで社長のプライベートの支出をした場合も同じことになります。

 

社長のプラベートのジム月会費をカードで決済をした
5月22日 (役員貸付金)(未払費用)7,700円

5月分のクレジットカードの代金が翌月末に引き落とされた
6月30日 (未払費用)(普通預金)7,700円

こんな感じで役員貸付金はひょっこりと、社長さんの意図しないところで出てきます。

 

原因と対策

ご自分で経理記帳をしているひとり社長さんの場合には、プライベートの支出を事業用の経費として計上していることがあり、役員貸付金は項目として見かけることはかなり少ないです。

 

それはそれで問題がある(事業経費としてプライベートの支出を計上している)のですが、それは役員貸付金とは別の問題なのでここでは「役員貸付金がどういう事情で現れてくるのか」を考えます。

 

この役員貸付金がでてくるのは税理士事務所に記帳代行を丸投げしているパターンのときが圧倒的に多いです。

 

記帳代行をしている税理士事務所の担当者の気持ちで考えてみます。

担当者が社長からドサッと経費の領収書を預かったとします。項目が明らかなものについてはそのように処理をしますが、明らかではないものについては確認をしたり、もしくはしなかったり。

 

本来はよくないことですが社長さんがお忙しく支出の内容を聞くに聞けない、そんなときに税理士事務所の担当者はどう考えるか。

 

ひとまず仮払金で処理をしておくというのであれば丁寧です。

仮払で処理をしてまずは現預金の残高を合わせたいと思うのは素直な発想です。(わたしが実際に記帳代行をする際にも内容がよく分からないものについては仮払金で処理をします)

 

ここをすっとばす担当者もなかにはいて、少し乱暴かなと思わないでもないです。

 

担当者が勝手に判断をして「ジムの月会費なんか事業経費になるわけがない」と思い「役員貸付金」として計上する、みたいな流れになることが残念ですがよくあります。

 

別に税理士事務所の担当者に悪気があるわけではなく、ヘタをすると正義感が源だったりします。(正しい利益計算をするため、税務調査があったときに変に指摘されないため、など)

 

こういった流れで社長が全く意識せずに「役員貸付金」が生まれるというのが大方の流れだと思います。

 

じゃあこういった項目がある場合にはどうすればよいでしょうか?

すでに役員貸付金があるのであればそれを精算してきれいにしておくのがいいでしょう。

もし融資を受ける場合などで会社の決算書をみられることがあれば、役員貸付金をみた銀行の担当者はどう思うか。

 

銀行の担当者のアタマの中(ここの社長さんは銀行が貸したおカネをプライベートで使ってしまうんじゃないか)

そう思われたら融資のハードルが高くなることはアタマの片隅の置いていただきたいところです。

 

今後のこと(役員貸付金を計上しない方向性)で考えると記帳代行が悪いわけでもなく、確認をするというコミュニケーションが大事だと私は考えます。

 

何の項目かわからなければ社長さんに聞いてみる、というのはやはり大事で、これは経費だろうか、それとも経費じゃないのか。コミュニケーションが不足するとこういうことは起こりやすくなります。

 

プライベートのものを経理処理をする書類の中にいれないということも大事です。担当者からすると事業に関係があるかどうかはわからないこともよくあります。

 

最初からプライベートのモノは会社の資金で支払いをしない、もししてしまう可能性があるならその旨を担当者に伝えてコミュニケーションを図る、そういう丁寧さが記帳代行であっても必要ではないでしょうか。

 

まとめ

役員貸付金の正体が見えたと思います。

役員貸付金の印象というのは中の人(社長さん)からすると別段気にならないかもしれませんが、会社の外の人がみると「この会社は事業用資金を社長が使い込んでいる」と思われる可能性があります。

できればないほうがいい項目ですので、なくしていけるように気を付けてコミュニケーションをとっていきましょう。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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