こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
フリーランスの方には事業用の現金を使わないようにしましょう(事業主勘定を使う)とお伝えしています。
では法人でひとり社長の場合はどうでしょうか?法人の経費を立て替えることがあると思います。
ひとり社長が会社の経費を立て替えた時の処理と注意点について解説します。
法人としての現金をもたないメリット、デメリット
個人のほうはこちらの記事を参考にしてください。
メリット、デメリットで考えると同じような内容になります。
メリットは法人の現金勘定の管理の必要がないということです。そんなに大変だろうかと感じるかもしれませんが事業主、経営者のかたですと法人の現金があるなら財布が2個あるような状態です。
プライベート用の自分の現金と事業用の法人の現金をひとりの人が持っているとします。
何か支払いをするときにこれは法人の分で、こっちは個人の分で、という分ける行為が普段から適切にできていれば問題ないですが多くの場合混同してしまうことがあります。
法人の勘定科目で現物があるものについては残高が合うことが必要となりますので、残高が合うように現金をチェックする必要があります。
もし法人で現金の取り扱いをなくせれば管理の必要がないですし、残高が合わないという状況も生まれません。
ただし法人の規模が小さくてひとり社長の場合ですとか、小売り業などで日々現金を取り扱う事業の場合はどうしても現金を取り扱います。
デメリットとしては経理処理が少しややこしくなるということ。
というのも法人の経費を法人の現金で払っているなら簡単ですが、法人の経費を社長がプライベートで立て替えている状態ですので、ワンクッション入ります。
あとで触れますが精算をしないと立て替えている分がどんどんたまっていきますので、そこをチェックする必要があります。
少し手間がかかりますがメリットの方が大きいですので、後段でお伝えする方法をおすすめしています。
ひとり社長が会社の経費を立て替えたら
ひとり社長が自分のプライベートのお財布から会社の経費を支払ったとします。
このときは会社から見ると立て替えてもらっている状態です。もしこれが社長じゃなくて従業員の場合はどうでしょうか。
経費精算して会社の預金から立て替えた従業員に経費立替分を精算しますね?同じことをひとり社長がした場合にも資金的に問題なければ精算をします。
5月20日に社長が事業で使う文房具330円をプライベートの財布から購入した場合を例にして考えます。法人には現金がない状態です。
経費精算は購入した後の日付けですが購入したのは5月20日ですので5月20日の日付で仕訳入力します。
5月20日 (勘定科目)(勘定科目)330円
勘定科目は文房具ですので消耗品費で良いでしょう。そうするとこうなります。
5月20日 (消耗品費)(勘定科目)330円
日付と経費の科目は決まりました、あとは相手勘定(貸方、右側)です。
ここで社長のプライベートの現金で払ったことを無視して現金勘定を使うとどうなるでしょうか。
5月20日 (消耗品費)(現金)330円 となり一見正しいように見えます。
でも法人には現金を置いていない状態ですから入力はできても残高が現金-330円となります。現預金がマイナスの状態は明らかに何かがおかしいのですがわかりますでしょうか?
自分のお財布を想像してほしいのですが、おカネがマイナスの状態をお財布の中で作れるか、というと作れませんね?一番少ない状態は0円です。
つまり現金の残高がマイナスになっている状態はどこかがおかしいから、ということになります。
この場合で言うと「社長のプライベートの現金で支払ったことを無視した」という部分です。
会社のおカネで払っていないので会社の現金勘定を使ってはいけません。
そうすると一つ戻って消耗品費の相手勘定はなにを使えばよいでしょうか?ポイントは会社から見てどうか、ということ。
会社は自分がおカネを出していないけれど経費を支出している、誰かが会社の代わりに払ってくれた、借りがある状態です。
借りがある状態ですのでシンプルに借り入れていると考えてみましょう。役員借入金という勘定科目がありますのでそれを使ってみますと
5月20日 (消耗品費)(役員借入金)330円 となりました。
会社は立て替えてくれた誰か(この場合は社長)に借りを返す必要があります。精算をするというのはそういう意味です。
月末締めで立て替えてもらった経費を精算するとしましょう。その場合には
5月31日 (勘定科目)(勘定科目)330円
会社の普通預金から支払いをしたとします。
5月31日 (勘定科目)(普通預金)330円 となります。
ここで文房具代の立替だから相手勘定は消耗品費だとすると間違いです。消耗品費は5月20日の時点ですでに計上されていますので
5月31日 (消耗品費)(普通預金)330円 とすると経費二重計上で間違うことになります。なので消耗品費ではないと。
借りを返すことを思い出してみると相手勘定は5月20日の仕訳は「役員借入金」となっていました。この借りを返すのですから
5月31日 (役員借入金)(普通預金)330円 となると役員借入金が相殺されて残高はゼロになり、経費精算もできた状態です。
経理処理の注意点
上記のように一つずつ確認しながら処理をすると間違いが少なくなりますが、上段で見たように現金がマイナス残高になったり、経費が二重計上になる可能性があります。
慎重に経理をして正しい残高の決算をやっていくためにはこのような間違いはなくしていかなければいけません。
なので残高を確認するというのはとても大事なんですね。
また従業員さんだと経費精算を行ってもひとり社長だとあとでいいかとほったらかしにしてしまうことがあります。
経費自体が適切に計上されていないので利益がその分多くなります。普段からできる節税としては経費が漏れのないようにするというのは地味ですが大切です。
また経費自体は計上したけれど役員借入金が残ったままだとどうかというと社長から見ると会社に貸しているわけです。
これを相続の視点でみると会社への貸付になりますので相続財産に該当します。つまり相続税の課税対象財産になりうるということです。
会社からおカネを返してもらえるのであれば可能な限りほったらかしにしないで精算をしておくことをオススメしています。
まとめ
ひとり社長が会社の経費を立て替えた場合の処理と注意点について解説しました。
現金を使わなくても大丈夫なビジネス(おつりが必要ない)の場合には役員借入金を上手に使って精算をしましょう。
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