こんにちは、京都の税理士ジンノです。
相続対策のご相談をいただくとご自分の遺産を公益の目的のために遺贈したいというご要望をお持ちの方がいらっしゃいます。
選択肢として遺産を寄付するということを考えてみるのも自分の財産をどこに、ということを考えるキッカケになるでしょう。
財産を遺贈するということと注意点について解説します。
公益目的の団体への寄付
公益目的の団体と言うとどういうものをイメージするでしょうか。いままでの相続のご相談で私が見聞きしたもので言うと以下のような団体が多いです。
(医療関係)
日本赤十字社
国境なき医師団
公益財団法人がん研究会
日本臓器移植ネットワーク
(障害者福祉、教育関係)
関西盲導犬協会
交通遺児育英会
独立行政法人日本学生支援機構
等といった団体への遺贈(遺言による贈与)についてご相談があり、実際に遺言にその旨を記載されているものも拝見したことがあります。
こういった団体への遺贈については相続税は課されませんので、それぞれの団体が掲げる公共の目的に沿って遺産が活用されます。
例えば盲導犬協会であれば盲導犬の育成や健康維持管理、利用者への貸与などにかかる費用を賄うために遺産が活用されます。
ご自身の財産をより活用してもらうということで遺言のご相談のときにはこういった公益目的の団体への寄付がありますとご案内をしています。
財産を遺贈したらどうなるか
遺産を受け取る団体がどのような団体かにより取り扱いが変わります。
受け取るのが国や地方自治体、上記のような公益目的の事業を行う法人等の場合には相続税が課税されません。
受け取った法人側でもそもそも公益法人の場合は法人税が課されません。
公益目的ではない普通法人の場合は相続税が課税されるかと言うと相続税は課税されず、法人税が課税されることになります。
なのでもし法人に対して遺贈をしようと考えている方は受け取る法人がどのような法人なのかは確認をしておいたほうがいいでしょう。
公益目的の法人は広く寄付を募っており個人が寄付をした場合の所得税計算上の優遇措置があったり、財産の遺贈についても周知をしていますので一度そういった団体のホームページや案内冊子をチェックしてみるのもよいです。
注意点
財産を公益法人等に遺贈しようと考えている場合にもいくつか注意点があります。
まずは相続人がいる場合には遺留分という最低限その人がもらえる財産の割合というものがあります。
そこを無視して遺言を作成し、相続人から遺留分をください(遺留分侵害額請求)があると話が非常にこじれる可能性があります。
遺留分については揉め事のタネになる可能性をはらんでいますので慎重に判断し対応する必要があります。
公益法人に遺贈しない場合でも遺言を作成する場合にはケアしておきたいところです。
もうひとつが遺贈する財産が値上がりするような財産の場合には所得税の話がでてくることがあるということです。
例えば所有している不動産を公益法人に遺贈した場合を考えてみましょう。その場合には亡くなった方からその公益法人に対して不動産をみなし譲渡(譲り渡した)とみなされます。
このとき、亡くなったかたが不動産を譲渡したことになるので譲渡所得税が課税される可能性があります。
この譲渡所得税については亡くなった方の相続人が亡くなった方の代わりに申告し納税をすることになります。自分は不動産をもらっていないのにということになりかねません。
一定の要件の場合にはこの譲渡所得税は非課税となりますがこのハードルが非常に高いので不動産を遺贈する場合には注意が必要です。
可能であれば事前に不動産や株式の売却整理を生前に行い、現預金〇〇万円という形で金銭による遺贈が望ましいとされています。
まとめ
ほかにも遺言内容を包括遺贈ではなく特定遺贈にしておくといった話もありますので、遺言を作成する際に公益法人等に遺贈をすることを検討する場合には専門家に相談をしましょう。
ご自分の財産を公益のために使ってほしい、というご相談は近年増えてきているように思います。