こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
相続税対策で贈与をご提案することがあるのですがそのさいに「いくらぐらいまで贈与すればいいかゴールの設定をどうしましょうか」と聞かれることがあります。
確かにずーっと贈与し続けると相続税は確かに減りますが自分の財産も減っていきます。ゴールの設定を考えてみます。
相続税率と贈与税率の差
贈与を考えるときには税率の差があるかどうかをシミュレーションして確認をします。
贈与税率のほうが移転する財産の価額に対して高く設定されていますので、贈与をしすぎるとトータルで見たときの相続税と贈与税の合計が結果的に贈与をしなかったときの相続税よりも高くなる可能性があります。
相続税をコントロールする目的で贈与をするという側面があるはずなので、ここをキチンとシミュレーションしておく必要があります。
例えば財産5,000万円のかたで相続人がお子さん2人の場合だとトータルの相続税は80万円と計算できます。
お子さんに210万円ずつ贈与した場合には贈与税の合計は20万円です。
5000万円に対しての80万円は1.6%の実質的な相続財産に対しての相続税の割合で、贈与財産420万円に対しての20万円は4.76%の実質的な贈与財産に対しての贈与税の割合です。その差はおよそ3倍。
この差をどう考えるかがカギになってきます。
行った贈与に対して、相続税率のほうが贈与税率よりも高い状態であれば贈与をすることで相続税が減っていきトータルの税金も減っていきますが、贈与税率のほうが相続税率よりも高い状態だと贈与税がかかる金額を贈与すると税金トータルとしては増えてしまいます。
相続税は財産全体から計算がスタートしますが贈与税は一対一の関係(贈与者と受贈者)で計算できますので簡単に感じてしまいますが、結果的に贈与しないほうが良かったとならないような事前のシミュレーションが必要です。
ひとまずのゴール設定
贈与をしたほうが良さそうだというシミュレーションができたら続いてはどれくらい贈与しようか、ということを考えます。
財産が多額にあって贈与しても全然問題ないですという場合でも贈与をすれば財産は減っていきますし、贈与されたほうの金銭感覚がおかしくなってしまうことを心配される方も多いです。
例えば高校生のお孫さんに毎年110万円ずつ贈与して自分で自由に使っていいのよ、というとお孫さんはお小遣いを月10万円もらえたと勘違いし散在する可能性が高いです。
そうなるとロクなことにならない可能性もあるわけでそこが心配だと仰る方は多いです。贈与したいけど無駄遣いしてほしくない、というのは素直な感情ではないでしょうか。
なによりもずっと贈与し続けるわけにもいきませんのでどれくらい贈与すれば一安心かなと考えたとき、お客様には受け取った人が相続税が払えるぐらいまでがひとまずのゴールでいいんじゃないか、とお伝えしています。
相続税がかかるときに自分の財産から支払うのか、遺産の中から支払うのか、という2択を考えますが、事前に贈与された財産(自分の財産ではあるのですが)で相続税を払えると負担感は減ります。
相続税の前払いのような形で考えておくと一旦そこをゴールに設定してみることをオススメしていて、この場合には定期金給付契約、連年贈与ではないかという指摘を受けないように手当てしておくことがとても大事です。
(定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、(国税庁HP タックスアンサーより抜粋))
贈与された現預金を使ってほしくないなと思うのは親心ですがそういう場合には保険料の贈与(受贈者が贈与者を被保険者とする生命保険に加入し贈与された現預金で保険料をまかなうスタイル)を考えてもよいです。
いわゆる保険料贈与プランですが贈与の実態が伴っており贈与が成立していることが必要ですので必ず事前に専門家に相談しましょう。(親から子への現預金が移転して子が保険料を支払っている、契約書が残っている、贈与税の申告をしている、生命保険料控除しているのが子である、など)
財産をどこまで減らしても大丈夫か
贈与プランを作れたら必ず贈与をする前に前述のようなシミュレーションを贈与をする際には毎年、その都度みてみることもあわせてお伝えしています。
贈与に乗り気でどんどん行った場合はご自身の財産もどんどん減っていきます。
ご自身の生活が苦しくなるほど贈与してしまっては元も子もありませんので、ご自身のライフプランとともに財産をどこまで減らしても大丈夫か考えてみましょう。
人の命はいつまでというのは誰にもわかりませんが、分からないから考えなくてもよいかというとそうではありません。
ご自分が心に余裕をもって穏やかに暮らしていける財産がどれくらいあれば大丈夫なのか、相続税を減らすことだけに一生懸命になるとそこの視点がすっぽり抜け落ちてしまいます。無理のない範囲の贈与プランを目指していきましょう。
まとめ
贈与はある意味手軽にできる相続対策のひとつですがその分気をつけなければいけないポイントがたくさんあります。
相続税の税務調査のときに贈与を指摘されるケースも多く、贈与していることに対して無自覚なケースもありますので、事前に専門家に相談することをおすすめしています。事後だとどうにもできないことがありますので。