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事業所得と雑所得の違いと考え方

事業所得か検討

こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

確定申告の時期が近づくとよくご相談として「副業を事業所得として申告したい」という内容を耳にすることがあります。

事業所得のほうがいろんな税制のメリットが受けられるのでそう望む方も多いのですが、実際には副業である限りは事業所得となるケースはかなり稀だとわたし自身は考えておりますのでご要望にお応えできないことが多いです。

この点についてわたしの考え方を整理してお伝えします。

 

目次

事業所得と雑所得の境目

所得税の申告においては収入の種類によってその内容が所得区分として分けられています。

所得は以下の区分とされています。

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
  7. 山林所得
  8. 譲渡所得
  9. 一時所得
  10. 雑所得

この10種類に分けてそれぞれの所得計算をし申告をします。

 

このなかで雑所得というものはどういう性質のものかというと、

雑所得とは、上記1から9までの所得のいずれにも該当しない所得をいいます。

例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します。

(1) 公的年金等
(2) 非営業用貸金の利子
(3) 副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)

(国税庁HPより)

 

世の中の大半の方が給与所得者(いわゆるサラリーマンとして)として働いている現状は大きな変わりはないですが、働き方そのものは変わってきています。

 

一方で事業所得というものがどういうものかというと、

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得をいいます。

(国税庁ホームページより)

とされています。

 

自分の副業が事業所得か雑所得か、という判断は難しく裁判になっているケースもあり、平成26年9月の裁決(判決のようなもの)において、その違いは総合的に判断するべきではあるがいくつかのポイントが明示されました。

少し長いですが抜粋すると以下のように判断しています。

このように、所得税法第27条第1項及び所得税法施行令第63条に規定する「事業」については、その意義自体について一般的な定義規定を置いていないところ、その意味するところは、自己の危険と計算において独立して行う業務であり、営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるものであると解される。
そして、ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり、この場合において「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきである。

(平成26年9月1日付裁決より抜粋)

これをかみ砕いてみましょう。

 

「事業」については、その意義自体について一般的な定義規定を置いていない

どのようなものが事業であるかは一般的に規定がないが

 

その意味するところは、自己の危険と計算において独立して行う業務であり、営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるものであると解される。

自分の責任とリスクにおいて独立して行う仕事で、利益を生むもの、対価をもらうものであり、一回こっきりではなく継続して仕事を続ける本人の意思と、社会的にもこれは事業だねと認められるようなもの、が事業である。

 

そして、ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり

ある人の所得が事業所得かどうかの判断をする際には、その所得が上記の「事業」といえるほどの規模や様式において、利益をうむか、対価があるか、反復継続するか、という事業活動によって生じているかで判断するべきで

 

この場合において「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきである。

事業といえるほどの規模・様式といえるかどうかは、事業者の責任とリスクにおいて行われる計画性があり意図があるか、精神的にも肉体的にも労働時間等を費やしているか、ヒトやモノの設備があるか、といった点をその人の職業や経験などに照らして総合的に勘案して判断すべき

とざっくりと翻訳するとこのような内容となります。

 

営利性があるか、有償性があるか、反復継続しているか、計画性や意図があるか、時間や労働を投下しているか、設備があるかなどを総合的に判断して事業所得かどうかを判定しましょう、といっています。

 

このように考えると本業・主業がサラリーマンの方にとって、それと同等もしくはそれ以上に副業から得られるものがないと事業所得とするのは難しいと考えています。

 

ご自身がなにで食べているか、生活をしているか

特にお勤め先の企業・会社から副業が解禁になったことでお勤め先とは別に収入源が生まれやすくなってい方も増えてきていて、本業・主業の合間の時間に副業をされている方もいるでしょう。

 

この本業の合間に行う副業という時点でもって既に時間的な部分として事業所得とするのが難しい面もあります。

 

お客様にお伝えしていることとして「ご自身が何で食べているか、生活しているか」ということがあります。

 

サラリーマンの方にとって副業がない状態で生活できるのか、もしそうではないのならどの程度副業による収入の割合が全体に占める割合の中で大きいのか、そういったことは上記で説明した事業や事業所得としての要件と同じように重要性が高いとわたしは考えています。

 

もちろん副業ではあるけれども事業所得として申告ができる内容であるものもあるでしょうが、そのようなケースは極めて少ないです。

 

副業による所得を事業所得として申告できると、事業所得での計算によるメリットがたくさんありますが、無理筋なこともありますので十分検討、納得したうえで副業を事業所得として申告することも考えておきましょう。

 

まとめ

副業を事業所得として計算するので副業で損失を出して給与所得と損益通算できると考える方は多くいらっしゃいますがその分リスクもかなり高いです。それは解説の中身で言うと営利性に問題が生じるからです。

税務調査が来るタイミングはこちらで分かりませんが少なくとも全くもって安全とは言えない状況ですので、再度どの所得で申告をするか判断が必要かなと考えています。

 

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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