こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
漫画家さんのための確定申告のチェックポイントと題して、売上、経費、平均課税について解説していきます。
売上についてはこちらで解説していますので見てみてください。源泉所得税と販売手数料などについて解説しています。
この記事では経費について解説していきます。事業にかかった費用、外注費か給与か、迷いがちなポイントに触れていきます。
事業にかかった費用
経費と一言で言っても事業に応じていろんな費用が掛かります。モノを仕入れて売るのか、製造するのか、サービスを提供するのか。
色んな事業の形があるようにそれに合わせたいろんな経費の種類があります。
漫画家の場合には、漫画を描く場所、漫画を描く道具、ソフトウェア、このあたりが経費としての項目で大きなものとして挙げられます。
場所代
オフィススペースを借りている場合にはそこで支払った家賃、水道光熱費、利用料などが経費となりますのである意味シンプルです。
自宅で作業をしない場合には作業をした場所で払ったものを経費として考えます。
よく聞かれるのがカフェで作業をしている場合にはどうか、ということですが場所代としてのコーヒーであれば会議費という項目で経費とすることが多いです。
ただしカフェで作業をしたことにしてなんでもかんでも経費に入れる、というのはルール違反です。
この○○したことにする、というのは後で税務調査があったときに見抜かれますので、30分、一時間、そのカフェや喫茶店で作業をしたのならその時に払った飲料代は経費とする、というルールを自分で決めておきましょう。
プライベートでもカフェを利用することはあるはずですので、プライベートでのカフェ代のレシートと事業における会議費としてのカフェ代のレシートを両方保存しておくことをお勧めしています。
こうしておけば、全てのカフェ代が事業経費として計上されているわけではないということが後で見てわかります。
自宅の一室を作業スペースとしている場合には、賃貸の場合は賃料をその仕事に使ったスペースの割合で経費として計上します。
これを家事按分といって、プライベートと事業の両方に共通する項目は合理的な割合で按分することでプライベートの支出と経費とに分けます。
賃料のほかには水道光熱費、特に電気代や通信費についても同様に事業に要した割合で分けていきます。
持ち家があってその一室で作業をしている場合には賃料はありませんが、建物の減価償却という形で経費計上を検討します。こちらも全体に対しての作業スペースとしての部屋の割合を元に計算をしていきます。
機材代
漫画を描く道具は昔は紙とペンでしたが、いまはパソコンと液タブ(液晶タブレット)と専用のペンです。
これらは漫画を描くために必要な道具ですので経費計上となります。
10万円以下のものであれば消耗品として経費となります。それ以上の金額のモノについては青色申告しているかどうかで対応が変わってきます。
いわゆるプロ仕様の液タブですと20万円ぐらいのものが多いようです。パソコンもそれなりの性能があるものでないと描いたものの処理等ができないのでスペックとしては見合ったものが必要です。
青色申告の承認を受けている場合には一式として30万円未満のモノで、年間300万円に達するまでは少額減価償却資産として一括で経費計上できます。
多くの機材はこれに当てはまることが多いので初期投資の段階でほとんどが経費計上となるケースを多く見かけます。
他にはデスクとイスですが、イスは座り仕事ですのでそれなりの価格がするものを購入している方が多いです。こちらも青色申告をしていて30万円未満のモノであれば対応は同じとなります。
ソフトウェア
機材があれば絵を描ける、というわけではなくソフトウェアが必要となります。
ソフトウェアにはサブスク型(毎月一定額を支払うもの)と買い切り型(ライセンスを購入したら半永久的に使えるもの)の2種類があります。
サブスク型の場合には毎月の支払額がそのまま経費になり、買い切り型の場合は無形固定資産となりますので、10万円以下、30万円未満の特例等の対象となります。
CLIP STUDIOなどは買い切りと月額制と両方のプランがありますので、ずっと使い続けるなら買い切りにすればよいでしょうし、ちょっと試してからということでしたら月額プランで申し込んでそのあと検討する方が多いようです。
外注費か給与か
アシスタントさんに作業をお願いする際にも注意が必要なことがあります。それは外注費か給与か、という点です。
一概にこうだと外注費、こうだと給与、みたいな線引きがキッチリ決まっているわけではなく、点数制のようなイメージを持ってください。
国税庁から発表されている以下のような基準のうちいくつ当てはまるか、総合的に見て判断していくことになります。契約書が雇用契約だろうと業務請負契約だろうと、実態で判断をします。
1.他人が代替して業務を遂行すること、又は役務を提供することが認められるかどうか。
2.報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受けるかどうか。
3.作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるかどうか。
4.まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払いを請求できるかどうか。
5.材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうか。
この5つポイントのうちいくつ当てはまるか、ということになります。
漫画家の場合で解きほぐして考えてみますと以下のようになります。
1.他人が代替して業務を遂行すること、又は役務を提供することが認められるかどうか。
→アシスタントAさんの都合が悪いのでアシスタントBさんにお願いできるか。
(交代してもいいのなら外注費的、交代できないのなら給与的)
2.報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受けるかどうか。
→例えば1ページ、1話ごとの作業に対しての報酬なのか、時間給・日給・月給など作業時間に対しての報酬なのか。
(作業そのものに対してならば外注費的、時間に対しての報酬なら給与的)
3.作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるかどうか。
→ある程度の裁量をゆだねているか。すべて指示通りに作業をすることを求めるか。
(業務請負であっても作業の指示はありますので程度の問題はあります。委ねている部分があるなら外注費的、指示通りの作業なら給与的)
4.まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払いを請求できるかどうか。
→何らかの理由で途中までの作業しかできなかった場合に報酬を支払うか否か。例えば体調不良で依頼していた1ページが途中だった場合など。
(成果物の引渡しがなければ報酬を請求できない条件なら外注費的、時間基準なのであれば給与的)
5.材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうか。
→漫画家さんの方でアシスタント用の機材やソフトウェアなどを準備して提供しているか否か。
(こちらも事業の性質上多くがアシスタント用の準備をして提供していることが多いので一概には言えません。例えばアシスタントが自宅作業がメイン、いわゆるリモートなら外注費的、全て用意して提供しているなら給与的)
当てはまる項目が多ければ多いほど、外注費・給与いずれかとして判断する基準となります。
ひとつの項目が当てはまったからといって必ずしも外注費になる、給与になるという訳ではなく総合的に勘案し判断をします。
イベント関連の費用
オンラインだけで作品を提供している場合は問題ないですが、コミケ(コミックマーケット、アニメ漫画などの大きなイベント)にて書籍を売っている場合にはそのための費用も経費になります。
一番大きな支出としては書籍を印刷する印刷代、出展料、交通費・宿泊費などが該当します。
これらはイベントで書籍を売るために必要だった費用ですので内容としてはシンプルです。計上漏れがないようにレシートや領収書は保管をしておきましょう。
コロナウィルスの影響もありコミケを含めた大きなイベントが軒並み中止になっています。今後は本の売り方も電子書籍のほうにシフトしていく可能性は十分あります。今のうちに準備しておいても損はないでしょう。
まとめ
漫画家さんの経費回りについてポイントを確認してきました。
書籍売上が減少し、電子書籍の売上はこの巣ごもり需要により増えてきているそうです。事業環境に合わせて提供するチャンネルも変えていくことが必要です。
固定費(毎月かかるもので仕事の多い少ないに影響されない支出)は減らしておくことも大切です。