こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
相続のお仕事をしておりますと、相続税と揉め事を一緒に考えてしまうかたがいらっしゃいます。
実はこの2つの問題は全く別の問題で、相続税は財産を引き継いだという結果に対してのものですが、揉め事というのはそもそも分けられない状態です。
相続税よりも心配したほうがいいことはたくさんあると私は考えています。事前相談に勝る安心の源はありません。
税金の話と揉め事は別の問題
例えば地主さんでアパートが2棟、Aというアパートは少し古く立地も良くない、Bというアパートは新しく立地も良い、という状況の場合があるとします。
こういった時にAとBのアパートそれぞれを子ども二人にと考えるのか、いずれも共有(AとBをそれぞれ半分ずつ)にするのか、という問題が出てくることがあります。
資産家の方や金融機関の方からご相談いただくことのひとつに資産管理会社の活用があります。
不動産を多数所有している個人の方が資産管理会社を活用して、その保有する財産の管理を担う、と文字にすれば簡単ですがそうやすやすとはいきません。
資産管理会社を作って建物を法人所有にするという資産管理会社活用パターンもありますが、その資産管理会社の株式を複数の親族で共有する、ということを考えるかもしれません。
資産管理会社を作って安心しているとこれが落とし穴になる可能性もあって、不動産は共有していないつもりでも資産管理会社を共有しているので実質的に不動産も共有している状態になります。
財産は共有しないほうがいいというのはよく聞くお話かもしれませんが、相続の現場では不動産や会社の株式(非上場)は共有してはいけないというセオリーがあります。
というのも、もし仮に共有している親族同志で意見が合わない場合、処分したり保有し続けることに支障が出る可能性が高いからです。
意見が合わないとやさしく書きましたが、実際にはそれだけでは済まずにいわゆる骨肉の争いに発展することもあります。
これは共有する方がたとえ兄弟姉妹でも、です。むしろ兄弟姉妹だからこそ、共有しないほうがいいと言えます。
昔の話が蒸し返されたり、両親の愛情に偏りがあると自分がないがしろにされている気持ちになり、せめて相続で財産を多く取得してこれまでの不均衡を精算したい、と考える人もいます。
それゆえ財産を共有にしてしまうと、相手に対して嫌がらせが出来てしまうのです。
財産の分け方をどうしようかというのは未来の話も含んでいます。将来の生活設計ももちろんですし、次の世代にどう引き継いでもらうのか、それとも引き継いでもらわないのか、財産の分け方は将来に大きな影響を及ぼします。
一方で相続税は財産をいくら相続したかによる結果に基づく話です。
相続税とは切り離したところで一旦、財産の分け方を共有しないことをベースに考えてみることをお勧めしています。
事前相談という処方箋
相続税は確かに少ないほうがいいと考える方が多いですが、あくまで財産を分けた結果にかかるものですので、最優先事項にはしないようにお伝えしています。
ご相談を受ける際にはこういうことをしようと思っているけどどういう風に税金を計算しますか?という内容が税理士という仕事柄とても多いです。
もちろん税金のことも大切ですがもっと大事なことがあります。
チョットその前に分け方はどういう内容に決めていますか?とお伺いしてみると多くの方からとりあえず相続対策したいからまだです、というお答えをいただきます。
相続対策はとりあえずして何とかなるものではありません。むしろとりあえずやると後で後悔してしまうことがたくさんあります。
家族の仲が悪くなって喜ぶ人はいませんが、揉め事に発展してしまうと間違いなく家族仲は悪くなります。
納得できる財産の分け方を考えていただくほうが税金を納める、減らすということよりも重要性が高いと考えています。
それは多くの相続を経験してきて揉め事があると本当に家族関係が崩壊するような場面に多く遭遇し、事前に相談をいただいていたらこうはならなかったんじゃないか、と思うことも多いからです。
目先の税金の多い少ないに捉われすぎずにまずはどう分けるのがいいか、そのうえで税金を考える順番でオススメしています。
相続税は事後(亡くなった後)にどうにかできることは少なく、小規模宅地等の課税価格の特例(相続税計算上の特例)などの各種特例も亡くなった時点でどういう状況だったかで判断をします。
事前相談をすることで安心という処方箋をもらっていただきたいです。
まとめ
事前相談を予防歯科と同じようなイメージで捉えてみてはどうでしょうか。
悪くなる(揉め事が起きる)前にできる対策をしておく、悪くなってしまうと歯を抜く選択肢しかなくなるかもしれません。
たくさんの選択肢を持っている事前の状態でご相談をいただくことが安心につながります。