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相続税申告書に計上すべき手許現金の考え方を解説

お財布、貯金箱、タンス

京都の税理士ジンノです。

相続税の申告書を作成する際や税務調査の場合には、名義預金の指摘が多いということを前回説明しました。

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名義預金と関係する財産として手許現金があります。手許現金の計上にあたり注意すべき点を解説します。

 

目次

手許現金に含まれる範囲

相続開始日(=亡くなった日と考えてください)において、預金口座に入っていないおカネ、手許にあるおカネについては相続税の課税対象となります。

手許現金として残っていた金額を相続財産として計上する必要があるということです。遺言がない場合には遺産分割の対象にもなります。

 

どこまでが含まれるかというと、亡くなった方のお財布、タンス預金がメインとなってきます。特殊なところでは金(金貨)もご自宅に保管しているケースがあります。

 

亡くなった方のお財布

お亡くなりになるとき、施設に入っておられたり病院に入院しておられる場合には多少なりとも病室に保管されているおカネがあることが多いです。

 

不用心なので持たせていませんでしたということであればそれでOKですが、もともとはご主人のおカネでそれを奥さんが預かっている、という状態であれば奥さんが預かっているおカネについては手許現金と指摘される可能性があります。

 

生活費をご主人の年金や給与、預貯金から支出している場合には、誰のおカネですかという名義預金の時に出てきた問題がまた顔を出してきますので注意が必要です。

 

本当にお手許になければそれで構いませんし、奥様の預かりも含めて手許にあったということであれば計上しましょう。

タンス預金

ご高齢の方からよく耳にするのが銀行に行く(おカネを引き出しに行く)のが億劫になってしまって、月に一回だけ生活費を引き出しに銀行に行く、ということ。

 

ご高齢の一定の方は預金通帳だけでキャッシュカードを作っていない方も意外と多いです。体力はもとより気力も関係して、外出の機会が減ってくるというのはよくあることです。

 

こうなると、その月一回の引き出しで比較的高額(20万~30万円ほど)を預金口座から引き出して自宅に保管することになります。

 

足りなくなると困ります(また銀行に行かなければならない)から多めに引き出して自宅に保管する方が多いのですが、多めに引き出していますので残っていくことがあります。

普段から管理していて足りなくなった分を引き出すのであれば余っていって残る、ということがないのですが、残っていても気にしない方も多いです。

 

例えば月30万円を引き出して、結局20万円しか使わずに10万円手許に残ったという場合。

この場合に次の月で20万円を引き出して残った分と合わせて30万円に調整できればよいですが、次の月も30万円を引き出して、となることもあります。

結果的に次の月も20万円しか使わないとなると毎月預金口座から引き出した金額から10万円が手許に残っていくことになります。

 

少し忘れっぽくなったり、引き出す金額を変更することが面倒になったり、そういうことはご高齢の方でなくてもあります。

お亡くなりになった後にご自宅を整理する機会があると思いますので、その際に上記のような生活費の余りをみつけたら、亡くなった時点ではそのまま残っていたと想像できますので、適切に計上しましょう。

 

金(金貨)が出てきたら

金への投資というのはバブル以後、手堅いということで取り入れる方が多くいらっしゃいます。ご高齢の方にも一定数、金に投資する方がいらっしゃって、金地金はハードルが高いですから金貨に投資する方が多いです。

 

金貨と言っても日本のものではなく、メインとしてはカナダ金貨(メイプルリーフ金貨)やウィーン金貨(ハーモニー金貨)です。

 

もしお亡くなりになったあと、ご自宅から金貨がでてきたら、こちらも手許にある財産として計上する必要があります。

現金であれば残高により計上することとなりますが、金貨も含めて金には相場があります。

 

亡くなった時点での時価を調べて適切に計上しましょう。もしお困りの場合には金を取り扱っている会社(大手だと田中貴金属工業など)に持ち込んでみてもらいましょう。買い取ってもらうことも可能です。

税務調査でどんな指摘がされるか

税務調査においては申告書を確認して指摘されます。

 

例えば、手許現金が計上されていない場合には、本当に手許に無かったのか確認されることになります。

 

生活費の拠出(どこから支払っていたか)はまず最初に聞かれることです。そのほかには預金通帳の動きを確認して大きな金額が引き出されていると使途(使いみち)を確認します。

 

特に預金通帳で亡くなる直前に引き出している金額がある場合には、その金額について亡くなるまでの間に費消(何かを買ったり支払ったり)がないかは必ず確認されます。

直前出金分を葬儀費用等に充当したということでしたら、亡くなった時点では手元にあることを意味しますので、計上する必要があります。

 

いやらしい聞き方としては、手許現金がないということを最初に聞かず、葬儀費用はどこから支払ったかを確認されます。葬儀費用は高額になりがちですから、振り込みをすることが多いことを調査官も経験として知っているわけです。

相続人の通帳なども確認していますから、相続人が自分の預金から支払った旨を伝えると本当かどうかすぐに分かります。

 

手許にあった、自宅に保管していたおカネでということになれば少なくともその金額が手許現金として計上されていなければ合理性が図れません。

このようにおカネの流れ、資金使途(つかいみち)については税務調査があった際に細かく確認されます。税務調査の前に基本的には亡くなった方とその親族については預金の動きを把握しています。

つまりは虚偽の内容で取り繕うとあちらこちらでほころんできますし、調査官の印象としては良くないものとなります。

 

おカネの流れを整理して手元にあったものを適切に計上すれば防げることですから、事前にチェックしておくことをオススメします。

まとめ

[box03 title=”本記事のまとめ”]
  1. 手許現金としてお財布、タンス預金の確認は必ずしましょう
  2. 税務調査では手許現金、直前出金については必ず確認されます
  3. おカネの流れを整理しておき説明できるようにしておきましょう
  4. 虚偽の内容で取り繕ってもバレます
[/box03]

手許現金がない場合もありますが、多少なりとも計上されることがほとんどです。特に直前出金については、預金口座に入っていないだけで手元にはあるわけですから注意が必要です。

おカネの流れをきちんと説明できることはとても大事ですから、専門家に相談して安心して過ごせるように対策をしてはどうでしょうか。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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