京都の相続に強い税理士ジンノです。
[chat face=”hair_biyou_kirei_ojiisan.png” name=”” align=”left” border=”yellow” bg=”none”] 会社は厳しい状況だから相続財産はないよ [/chat]中小企業の社長さんから相続に関するご相談を受けるとこのようにおっしゃる方がいらっしゃいます。
実は、会社の経営が厳しいことと相続財産の多い少ないは別の問題です。
中小企業の社長さんの相続財産として気を付けたいものや注意点について解説します。
会社の株式
会社を作るときには会社の種類として、株式会社が今も多いです。株式を発行して、出資を募り、最初は資本金を基に会社を運営していきます。
創業者の場合であれば、株式の引き受けがすべて社長本人というケースがいまは大半です。
かつては、株式会社を作る際には7人の発起人が必要でしたが、今では一人株主、1円資本金も可能です。
資本金1円でも会社設立できますが、借入が難しいなど不具合もありますのでよく検討しましょう。
額面で相続の勘違い
株式を発行する際には一株いくらにするか決めますが、仮に額面100円で発行し、社長本人が1万株を保有したとします。そうすると、100円×1万株=100万円となり、資本金は100万円です。
社長がお亡くなりになった時には、額面分100万円の株式を相続すると思いがちですが、100万円はあくまで額面です。
お亡くなりになった時の株式の価値が相続財産としての株式の財産額です。
この中小企業の上場していない会社の株式のことを「取引相場のない株式」と相続税の世界では呼びます。取引相場のある株式は上場株式です。
中小企業の会社の株式は取引相場がない=売買の対象に通常はならないので、上場株式のように市場が決めた値段、というものがありません。
その意味で取引相場がない株式という名称になっています。
上場株式であれば、株式市場がオープンの時の価額を財産価額として使えますが、取引相場のない株式は、額面ではなく、あるルールに基づいて計算をします。
このルールのことを財産評価基本通達といいます。
このルールに基づいて株式の価額を算定する行為を評価すると言いますが、実際に株式の評価をしてみると、額面100万円になることはまずありません(ごくまれにたまたま一緒ということはあり得ますが)。場合によっては100万円の額面の株式が億単位になったり、ゼロ円評価のこともあります。
例えば会社を30年前に起こして、経営を続け株式を保有したまま亡くなったとき、会社の状況は30年前と亡くなったときとで会社の状況は大きく変わっているでしょう。
その30年分の会社成績の成果が株式の価額に集約してきている、そんなイメージです。
株価が高くて嬉しいか嬉しくないか
この上場していない取引相場のない株式ですが、誰か欲しい人がいれば売れる場合もありますが、たいていは親族の方や後継者が相続します。
社長にとっては大事な会社の株式ですが、会社に関係のない親族にとっては相続税だけがかかるお荷物財産になるケースもあります。
相続税の計算は、全体からスタートします。相続財産全体にかかる相続税を、財産のうちどれくらい取得したかで相続税を按分します。
よって、株式を相続した人だけが相続税が高いわけではなく、株式の財産額が高ければ財産全体にかかる相続税が高くなります。
以前に相続税の申告を担当した社長のご親族から、絵に描いた餅ですね、と言われたことがありますが会社に関係のない人からすると相続税が高くなる原因の一つにもなり、またその株式で相続税が払える訳もなく、残念ですが誰も欲しくないこともザラです。
資金化が難しいのが中小企業の株式ですから、株式があるがゆえに税負担が重く感じてしまうのも無理はありません。
中小企業のオーナー・社長さんの相続では、この株式の評価、事業承継がおおきなウェイトを占めます。
株式の評価を毎年しているだけでも、株価の現在地が分かりますので、贈与するのか株価対策をするのかという選択肢を検討することができます。
実際に株式を贈与するかどうかは、そもそも事業を継続するのか、後継者の問題はどうするのか、社長ご自身の相続税との兼ね合いなどもあり慎重な判断が必要ですが、判断材料としての株価の把握は価値が高いと考えています。
会社への貸し付け
中小企業の社長さんは、会社のことが大好きな方が多いです。生涯現役として働きたい、自分の仕事を貫きたいというかたも多いように思います。
従業員も雇ったりしていますと、会社に何か急な支出や資金繰りが窮することがあると、社長さんが会社にお金を入れます。多くは社長から会社への貸付で会計処理されます。
サラリーマンにはイメージしづらいかもしれませんが、かなり多くの中小企業でその貸付が行われます。額面で数百万円などは一般的にもよく見かけます。
決算書上でいうと役員借入(会社から見て社長から資金を借りているため)という勘定科目になり、社長側では貸付金となります。
実はこの会社への貸付金も相続財産になります。会社からお金を返してもらうあてがあれば良いですが、社長が会社にお金をいれるぐらいですから、資金繰りが良いケースはまれです。
今日明日で会社が倒産するという緊急事態を覗いては基本的に相続財産として認定されますので、返してもらえるあてのない貸付金に相続税が課されることになります。
前述の株式と合わせて、会社に関係のない相続人にとって価値を感じにくい財産が増えてしまうことになります。
会社への貸付金も事前の対策が非常に重要です。貸付金について債務免除したり、役員報酬がでているなら役員報酬を減額して、その分を貸付金の返済にしてもらったり。
会社の資金繰りなどの状況を見ながら、柔軟なオーダーメードの対応が必要です。
会社の借入金の連帯保証
中小企業の社長さんは、会社が金融機関からの借り入れをする際に個人で連帯保証人になっている場合が多いです。
言われてはじめて気が付く人も多いのですが、連帯保証債務は相続財産になります。マイナスの相続財産です。
さらに質の悪いことに、この連帯保証は債務の額が確実でないことから債務控除の対象にならないことが多いです。
つまり、連帯保証の部分だけを相続して、その債務については相続財産から差し引けません。会社に何かあれば、お金だけは払う必要がでる可能性があります。
金融機関からの借り入れで団体信用保険が付与できていれば良いですが、団体信用保険を付与すること=金利が上がることを意味しますので、
結構な割合で会社の借入金には団信保険は付与されていません。
これは民間の生命保険で、団信保険の役割を充当できることがありますので、これについても事前の対策が重要です。
そもそも目に見えない財産として連帯保証は気が付きにくいですし、連帯保証のサインをしたご本人しか知りえない情報でもあります。
知り合いの社長さんから頼まれて連帯保証の欄にサインしていませんか?
相続対策をする場合にはぜひ一度確認しておいて場合によっては連帯保証を外してもらう交渉も必要です。
まとめ
[box03 title=”本記事のまとめ”]- 中小企業の社長さんの相続財産は、株式・貸付金・連帯保証に気を付けよう
- いずれも資金化が難しく、会社に興味がない相続人からすると負担になる
- 事前の対策は必須で亡くなった後に出来ることはない
ちまたでは相続を三回経験すると財産はなくなる、などと都市伝説のように言われたりしますが、キチンと対策していなければ、という前提が抜けています。
最良の相続対策は事前相談です、事前相談で相続財産を守ることをオーダーメードで考えていきませんか?
事前相談の重要性についての記事はこちら