事業者にとって事業継続のために必要なのは利益です。何をするにしても利益が出ている状態を目指すのがセオリーです。
利益は売上から仕入・経費を引いて計算しますので、利益はもとより売上と仕入・経費をよく見ている、という方は多い印象です。しかし、もうひとつ経費の割合を見てみることをお勧めしています。
経費の割合をチェックすることの効果についてお伝えします。
経費の割合もいろいろある
経費の割合といってもいろんな指標があります。どこの部分を見ていくかで数字の持つ意味が変わってきますので、その点も気にしつつ、経費の割合をチェックしてみましょう。
分かりやすく損益計算書の上から確認していくことにします。
まず、仕入や原価のあるビジネスの場合には、売上原価というものが損益計算書上に表示されます。
サービス業は原価がないので、それ以外の卸売・小売・製造・飲食などと考えてもらうとよいでしょう。
今回は製造業で考えてみます。
製造業の場合は製造原価がありますので、損益計算書を上から見ると、売上の次に表示されるのが製造原価です。
売上-製造原価=売上総利益、いわゆる粗利益と呼ばれるものになります。売上に対して製造原価がどれくらいかの割合は(製造)原価率と呼ばれるものです。
製造原価÷売上×100で割合を求めることができます。
業種や規模によって様々ですが、売上に対して何パーセントかということになりますので、仮に製造原価率が100%を超えてしまっていると赤字を意味します。
それぞれが製造している製品などによって製造原価率の目標値は変わりますので、中小企業統計などで該当する事業の中小企業平均などを見ておくとより効果的です。
製造原価の下に続く項目は販売費・一般管理費の経費項目が損益計算書上に表示され、売上-製造原価-販売費・一般管理費=営業利益となります。
販売費・一般管理費の売上に占める割合は売上高販管費率と呼ばれます。
原価がないビジネスだとこの部分が人件費などで高くなることが多いです。
飲食店事業などではLF比率やLFR比率と呼ばれる指標を使っていることも多く、これはL=Labor(労働=人件費)、F=Food(食材)、R=Rent(家賃)が売上に占める割合を意味します。
利益率をチェックすることももちろん大事ですが、経費が売上に対してどれくらいの割合になっているかは決算書や月次決算の資料で確認できますので、少し電卓をたたくかExcelで見てみましょう。
では、数字が確認できたらそれをどう活かすかを確認しておきます。
外れ値がないか
まず月次でも年次でもですが、通常の経費割合や目標値があるはずですので、そこから外れていないか、ということは確認しておきたいところです。
月次で外れ値になっていたとしても年次で見ると均されてちょうどよい数値になっている、ということもあります。
例えば一時に支出が重なるタイミングとして賞与や納税などがありますが、こうしたイベントがあると外れ値になりがちです。
そういったイベントがないにもかかわらず外れ値が生じている場合には、売上の計上タイミングにズレがあるか、経費のいずれかが多いなど、何かしらの要因があるはずです。
少なく外れていても多く外れていてもチェックをしておくのが望ましいです。
例えば通常は20%の売上高販管費率にもかかわらず、30%や10%になっている場合にはどこに原因があるかは見ておきましょう。
そのうえで対策として何かできることがないか、次のアクションを考えやすくなります。
どこに収束させたいか
経費の割合に限らず事業に関する指標というのはそれこそかなりの数があります。
そのすべてに対して目標を設定してもよいのですが、結局は使いきれずに終わってしまう可能性は比較的高いです。
情報が多すぎると選択するのにノイズになる可能性はあります。
ご自身にとってどの指標が有用なのか、そういうものをまず見つけていただくのと同時に、どこに収束させたいか、というのは考えておいたほうがよいです。
経費も多少なりとも必要と考えているのであれば、そこまで細かく見ずに売上を増やす施策を考えるのか。
経費はできるだけ削って無駄を省きたいと考えるのであれば、経費の項目は定期的に見直ししておくのがよいでしょう。
収束させる数値目標についても、中小企業統計などでチェックはできますが、そこよりも良い数字でないと生き残りは難しくなるかもしれません。
他者比較も大事ですが、自分の事業にとってのベストな割合や数値を探っていくのも大事です。
まとめ
経費の割合をチェックすることは、事業の健全性を把握するうえで非常に有効です。
原価率や売上高販管費率などの指標を定期的に確認し、外れ値がないかをチェックすることで、経営上の問題を早期に発見できます。
すべての指標を追う必要はありませんが、ご自身の事業にとって重要な指標を選び、目標値を設定して管理することが大切です。
中小企業統計などの平均値も参考になりますが、最終的には自社にとって最適な数値目標を見つけ、それに向けて改善を続けていくことが事業の継続と成長につながります。
定期的な経費割合のチェックを通じて、より健全で収益性の高い事業運営を目指していきましょう。
