まだタイミングじゃないな、という方はぜひ毎月末の事務所通信メルマガ(無料)の登録をこちらから!

デジタル遺産への対処方法としてのエンディングノート

デジタル遺産への対処方法としてのエンディングノート

相続関連のご相談をいただく際に、最近よく見聞きするのがデジタル遺産への対応です。デジタル遺産が相続財産に含まれるとき、最大の問題として「把握の難しさ」があります。この問題を可能な限り軽減するため、当事務所ではエンディングノートの活用をおすすめしています。

目次

デジタル遺産の把握の難しさ

デジタル遺産は、スマートフォンの発達とともにどんどん広がりを見せています。

例えば証券会社ひとつをとっても、オンラインのみで窓口や支店がないタイプの証券会社が増えています。楽天証券、SBI証券、松井証券、マネックス証券など、大手と引けを取らないほどの顧客を抱えている証券会社も多くなってきており、当然ながら相続財産として、こうした証券会社との取引が増えてきているともいえます。

以前のように窓口や支店での取引のみの場合は、証券会社から取引に関する資料や明細が送られてくることが常でした。そういった書類の存在が「証券会社での取引があるかもしれない」という気づきになり、相続財産の漏れを防いでいた面は大きいと私は考えています。

ネット証券の課題

ネット証券の場合はどうなるかというと、基本的に書面でのやり取りはなく、オンラインで完結することが前提になっています。取引残高報告書なども電子交付が一般的ですので、手元に書類がなく、どういった証券会社で口座があるかわかりづらいという面があるのです。

特に、亡くなった方と物理的に距離がある相続人の場合などは、相続財産の漏れなき把握は困難になりがちです。また、メールなどで基本的にネット証券とのやり取りを行っているため、亡くなった方のメールアカウントを見ることができないと把握が困難な状態ともいえます。親のスマートフォンでも暗証番号がわからなければ開けない時代です。

ネット証券を例にしましたが、ネット銀行も状況としては似たような形になりますし(キャッシュカードがあるだけまだわかりやすいですが)、仮想通貨を代表とする暗号資産と呼ばれるものの把握は同様に困難といえます。

相続税申告における重要性

相続税申告において重要なポイントのひとつが、相続財産を漏れなく把握して計上することです。これにより相続税の税務調査の可能性は格段に下がることが期待できますし、後で財産が出てきたときの手続きの煩わしさも軽減されます。

では、ネット証券に代表されるデジタル遺産の把握としてできることがないか考えたとき、デジタル遺産とは対極のアナログな対応になりますが、エンディングノートを活用することが選択肢になります。

エンディングノートの活用

エンディングノートは、財産を把握しておくために気軽に取り組みやすいもののひとつになります。

いまでも遺言に対するハードルを高く感じる方は多く見受けられますが、エンディングノートならと気軽に手に取りやすい内容になっています。

注意点

注意点としては、遺言のように「誰に財産を渡したい」といったことを書いたとしても、遺言としては有効ではないということです。遺言は民法にのっとった厳格な様式で作成されることが求められていますので、もし財産の行き先を指定したい場合は、エンディングノートでは不十分になります。

エンディングノートは、あくまでもご自身の財産の把握のために活用するつもりで書いていただくのがよいです。

記載する内容

どこの銀行に口座があるか、証券会社はどことの取引があるか、保険会社なども記載しておくとよいでしょう。もちろん財産の把握のためだけではなく、ご自身の経歴や葬儀の方式の希望、誰に連絡してほしいかなどがあれば書いておくことができます。

遺言の前段階で整理をするために作ってみるというのも、活用方法としておすすめです。ご家族が手続きで困らないようにするため、知っておいてほしいことを書いておくぐらいのつもりで、ひとつずつ記載していきましょう。

入手方法と管理

書店で取り扱いがありますので、そういったところでエンディングノートを購入していただくのもよいですし、ご自身がお手持ちの手帳やノートに記載することでもよいです。

そういった場合には、エンディングノートを書いてどこに置いてあるかということを、手続きをするであろうご家族に伝えておくことを忘れないようにしてください。遺言もそうですが、発見されないと効果が半減どころか、もったいないことになりかねません。

まとめ

デジタル化が進む現代において、デジタル遺産の把握は相続手続きの大きな課題となっています。ネット証券やネット銀行、暗号資産など、従来の書面によるやり取りがない金融商品が増える中、相続人が財産を見落とすリスクは高まっています。

この課題に対する有効な対策として、エンディングノートの活用をおすすめいたします。法的効力はないものの、財産の所在を整理し、ご家族に伝える手段として非常に有用です。相続税申告の漏れを防ぎ、税務調査のリスクを軽減するためにも、ぜひエンディングノートの作成をご検討ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

目次