小規模宅地の特例は相続税の計算上、とても大きなインパクトを与えます。適用できるかどうかで税額が大きく変わるからです。
一方で、税額への影響が大きいことからその特例の適用要件もあり、適用に迷うこともしばしばあります。
そういう場合に考えておきたいことを整理してみます。
小規模宅地の特例の怖いところ
小規模宅地の特例は相続税を計算する際の土地の評価額について、一定の要件を満たしている場合には評価額を減額できる特例です。
仮に1億円の土地で、特定居住用宅地(ざっくりとした説明ですが亡くなった方が住んでいた建物の敷地)に該当し、330㎡だとすると、1億円の評価額のものを2,000万円に計算上は減額して計算します。
相続税率が10%だとしても減額された8,000万円の10%で800万円の相続税計算上の減額になり得ます。
特定居住用宅地に該当すると330㎡まで80%の減額となるため、20%が課税対象と考えてもらうとよいです。
この部分だけでもかなりのインパクトがあることがお判りいただけたと思います。つまりは適用できるのであれば適用したほうが有利になることは明らかですので、適用を目指したいところです。
ほかに事業に使っている土地、貸し付けている土地などについても一定要件を満たした場合には特例の適用ができる場合があります。
これだけ相続税へのインパクトが大きい特例ですので特例も厳しくなってきています。
そのため、適用できるかどうか状況として微妙というのはあり得るため判断に悩ましいケースもでてくるわけです。
そして小規模宅地の特例の怖さは特例が適用できないということではなく、本当は適用できたのに適用せずに申告をしてしまうことです。
小規模宅地の特例には当初申告要件といって、最初に申告したときに適用をしておくことというのが基本ルールになっています。
最初の申告の際に特例を適用せず、あとになってから「やっぱり適用できそうなので申告しなおします」といういわば後出しのじゃんけんは小規模宅地の特例に関しては基本的にできないということです。
分け方が決まっていない状態で申告をする際には分割見込み書を提出して、あとで特例適用をすることが認められるケースがありますが、あくまで例外的な取り扱いです。
適用に迷ったら
小規模宅地の特例については基本的に評価替えが認められないので、判断に迷った末に適用せずに申告をするとあとで取り返しがつかなくなる可能性が高いです。
更正の請求という申告のやり直しで小規模宅地の特例関係をやり直すことができないというのはかなりまずい状況になり得ます。
そのため、適用できるかどうかがかなり微妙なケースであればその旨を納税者の方に十分説明したうえで小規模宅地の特例を適用して申告することも検討しておきたいところです。
明らかに適用できないという場合には別ですが、あとでやり直しが効かない以上は当初申告で適用しておくことは積極的に考えておいたほうがよいです。
専門的なことになりますが、当初申告で小規模宅地の特例の適用をして税務調査になった際にはその特例適用を認めない判断をしようとすると基本的に税務署側が立証責任を負います。
適用できない根拠や事実認定をいかに行うかは税務署側の調査官が説明をすることになるのが基本ということです。
まとめ
適用できるかもしれないという場合にはそういったことも念頭におき、納税者に十分な説明(万が一税務調査になった際に否認される可能性があること)をしたうえで適用するかどうかの判断を行ったほうがよいでしょう。
可能であれば適用に際しての承諾を書面に署名してもらう形でも残しておくことが望ましいです。