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相続における著作権の評価についての検討

相続における著作権の評価についての検討

相続財産に含まれる権利として著作権があります。この著作権については財産評価という相続税や贈与税を計算する際のルールに基づいて評価額を計算しますが、この評価のしかたについて検討してみます。

目次

著作権の財産評価の流れ

作家業の方に相続があった場合には著作権の財産評価を行い相続財産として計上することになります。

相続財産の総額が基礎控除以下であれば申告の必要はありませんが、著名な方に限らず同人作家の方でもかなりの所得になっているケースもありますので注意が必要です。

個人で同人誌を電子配信という形でリリースしたり、ゲームを制作してプラットフォームを通じて販売するなど、作家だけにとどまらず作品を制作してリリースする裾野はかなり広がっていると感じます。

著作権の価額は財産評価基本通達というルールに基づいて相続税を計算することになり以下のような計算式で行います。

著作者について一括で行う場合と著作物を個別に計算する場合と2つ選択できます。

年平均印税収入額×0.5×評価倍率

項目をひとつずつ確認しておきます。

年平均印税収入額とは、その著作者のかたの過去3年間の平均印税収入をいいます。

仮にR6年にお亡くなりになったとすると、R5年、R4年、R3年の印税収入3年間分を3で割って平均を出します。

R5年が2,000万円、R4年が3,000万円、R3年が4,000万円だとすると、2,000+3,000+4,000=9,000となり、9,000/3で3,000万円という計算です。

0.5を乗じるのはこれは私の私見ですが将来的なことを加味するのは難しいので0.5でいわば斟酌(しんしゃく)しているのだと思われます。

さらにここに評価倍率を乗ずるのですが、評価倍率はその著作物に関して精通している(つまりは詳しい)専門家等の意見をもとにして推算した印税収入期間に応じずる基準年利率による複利年金現価率とするとされています。

例えばR6年12月に同人作家の方が亡くなったとして、印税収入期間が5年と意見をつけてもらった場合には、R6年12月の5年の基準年利率は0.75です。ここから複利年金現価率を確認すると4.889と確認できます。

こうして各要素が確認できたので例をもとに算定すると、3,000万円×0.5×4.889=7,333.5万円と計算できます。

計算そのものは簡便ではあるのですが、実際のところの運用としては悩ましい部分もあるかと考えています。

疑問点等の検討

最大に疑問に感じているのは評価倍率の部分で、「著作物に関して精通している専門家等の意見をもとにして推算した印税収入期間」のところです。

作家のかた自身であっても今後どれくらいの期間にわたって著作から印税収入期間が見込めるかはかなり見通しが難しいと思います。

ましてや著名な漫画家さんにもなると金額も相当になるでしょうし長く売れるということも考えられます。

なので同じ漫画家であっても著作物の内容やこれまでの販売部数などによってこの印税収入期間が変わってくる可能性はあります。

それに精通した人が果たしてどれくらいいるのか、誰に意見を求めればよいのかが判然としない部分があるのかなと。

公益社団法人日本漫画家協会では著作権事業として著作権等管理事業を行っているそうなので相談してみるのもよいかもしれません。

アダルトコンテンツがメインの同人作家の方だと印税収入期間も少し違ってくる印象はあります。

通常の漫画家のかたよりも売上の上下動が激しい方が多く、また新作がでるタイミングで過去作が一緒に売れるというのはよく見聞きします。

亡くなった後のことなので不明な部分が大きいとは思いますが、亡くなった後は新作を出せませんので収入期間も変わってくるのではという気もします。(個人的な意見です)

まとめ

いわゆる書画骨とうなどの美術品については鑑定を行う民間業者が多数存在するため、その美術品に精通した鑑定人に真贋鑑定を含めて鑑定書や目録、意見書を依頼することになります。

それとは異なり著作物の財産評価については裁決や裁判例もほぼないため、いかにして財産評価に必要な要素を客観的に収集するかで評価内容の精度が変わってきます。

著作物がある場合の相続税評価については慎重に判断し対応していくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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