高齢の方は上場株式を保有しているケースが意外とあります。昔に買ったものをずっと持っているんですね。
相続財産に上場株式がある場合の財産の整理の仕方についてまとめます。
上場株式そのもの
上場株式そのものの把握からスタートです。
証券会社の資料がないかまずは確認していきましょう。ネット証券ではない場合には取引残高報告書が四半期に一度送られてきているはずです。
高齢の方にはネット専業やオンライン発行は選択のハードルが高いでしょうからたいがい紙で届いてます。
そこには各証券会社の証券口座に預け入れている上場株式の記載がありますのでそこから把握するのがひとつです。
もうひとつは配当が出ている会社だと配当通知があるはずなのでこちらもどこの会社の株式をどれくらい保有しているかがわかります。
ただし証券会社は配当通知には記載がないので証券会社がどこかを調べるには足りません。
取引残高報告書以外でいうと年間の取引報告書が年に一度確定申告のために送られてきているはずです。
書類関係からまずはどこの証券会社に口座を持っているのかを確認していくことが一番確かで簡潔です。
株数については注意が必要なケースもあって、ほふり制度=株式等振替制度が開始する前から株を持っていて、株式分割などが証券口座で反映されていないケースがときどきあります。
こうした場合は証券会社発行の残高証明書と配当通知をみると株式数のずれが生じていることがあり判明しやすいです。
あとはそういうことが起きていそうだなというときには証券代行部に株式の保有証明書をだしてもらうことで株式数の確定ができます。
上場しているその法人はその株式の名簿管理などを信託銀行の証券代行部に委託していますので、「会社名と証券代行部」で検索をかけるとどこの信託銀行の証券代行部の管轄かがわかります。
管轄がわかればその信託銀行の証券代行部の問い合わせ窓口に照会をかける、という流れです。
漏れがないように丁寧に確認しておきたいところです。
未収配当や配当期待権
未収配当は配当期待権の把握漏れがあるケースも見かけます。
未収配当は亡くなるまでに受け取れる配当を手続き上受け取れていなかったものです。そのため相続財産に組み入れられます。
配当受取書(通知書と一緒に送られているケースが多い)から把握して、前段で触れた信託銀行の証券代行部で未収配当の受け取り書類の請求が必要です。
郵便局でいつも換金していたという場合にはその配当受け取りの書類が必要になるケースもあるようですので廃棄処分せずに保管しておきましょう。
配当期待権は配当の基準日、仮に9月末が配当の基準日だとするとそこから2~3か月以内に配当の支払いがあります。
この配当の基準日と配当の支給日の間に亡くなった場合には配当を受け取る権利を持ったまま亡くなったといえますのでこういう配当のことを配当期待権と表現します。
未収配当とはまた別の区分です。未収配当は受け取り手続きをしなかったがために受け取れるものを受け取らずに亡くなった状態ですが、配当期待権はご本人が亡くならなければ受け取ることが期待できたものです。
少し違いますが本人が受け取れたはずのものがあるかもしれない、という意識で財産調査をしておくのが望ましいです。
配当がでている上場株式を保有している場合には決算短信などで配当の基準日と金額を確認して配当期待権の可能性がないかを確認しています。
手続きには余裕をもって
銀行口座の場合は相続手続きも選択肢があります。名義変更したり解約して自分名義の口座に振り込んでもらうことが可能です。
証券口座の場合は少し違っていて、亡くなった方の証券口座がある証券会社でまず相続人等のかたの名義の証券口座を作る必要があります。
そこではじめて移管手続きができるので、証券口座を作るのに時間がかかり、移管手続きにもまた時間がかかるわけです。
大和証券の亡くなった方の証券口座から野村証券の相続人の証券口座にはダイレクトに移せないというわけなので、手続きにものすごく時間がかかるケースが出てくるわけです。
あまりオススメはしていませんが上場株式の譲渡対価で相続税納税をしようと考えている方はタイムスケジュールを間違えないようにしましょう。
上場株式の手続きも遺言がなければ分割協議を経る必要があるので、分割協議に時間がかかると納付が間に合わなくなる可能性があります。
手続きには余裕をもって取り組んでおくのが望ましいです。
まとめ
ネット証券を使っている高齢のかたはまだ少ない状況かと思われますが、今後はオンライン化が進んでいくことで既存の証券会社も書類を発送しない可能性がでてきます。
相続財産の把握の漏れがないように準備しておきたいところです。エンディングノートなどを活用することも視野に入れておきましょう。