棚卸管理は特に卸売業や小売業、製造業、建設業では大切になってきます。というのも粗利への影響が大きいからです。
売上ではなく利益で考えましょう。
粗利益をよくみる
粗利益というのは、売上総利益の商習慣上の表現で売上-売上原価で計算することができます。
製造業や建設業の場合は製造原価、工事原価になりますが、モノを生み出す、モノを流通させる、そういうビジネスの場合は原価があります。
サービス業の場合は会計上の原価はありません、人件費などが原価という考え方もありますがここではいったん会計上の原価に絞ります。
なぜ粗利益が必要かというと仕事をしても赤字になっていては意味がないからです。
仮に売上100万円の仕事で原価が100万円だとすると、粗利益はゼロです。
こういう仕事をしてよいかどうか。
仕事があまりにもなく次につながることを期待して、という場合には受ける選択肢もアリかもしれませんが、基本的に粗利益がゼロまたはマイナスの仕事は受けてはいけません。
その仕事をする従業員の労力や負担は目に見えない部分でのマイナスです。もし自分がしている仕事が赤字だと知ったらどう思うでしょうか。
モチベーションは大きく下がるでしょう。
これは売上100万円でも1,000万円でも1億円でも同じです。世の中には受けてはいけない単価の仕事がある、というのは経営者であれば知っておきたいことです。
1億の売上で原価が9,900万円の仕事であれば100万円の粗利益ですが、売上1,000万円の仕事で500万円の原価、粗利益500万円。
どちらをやりたいか。売上を追求しすぎるとこの辺りが見えなくなります。
本当に受けてよい仕事かどうかは受ける前によく検討したほうがいいでしょうし、あとで値上げをしても受け入れられるのは建設業ぐらいです。
利益ベースの計画
利益が出ないと事業継続できません、これは事業者であればうすうす気が付いていると思います。
これを意識せずに事業をしているとすればどこかのタイミングで行き詰まる可能性があります。
売上を追求しすぎて現場が回らなくなり従業員が退職して余計に現場が回らないことになると信用問題です。
仕事を受けるのであれば利益をみて受けるかどうかの判断が事業継続の鍵を握ることになります。
そのため、数値計画を作る際にもボトムアップで利益からスタートすると現実的な計画に近づきます。
数値計画を拝見する拝見する機会はよくありますが、原価や販売管理の費用の見積もりが甘く数値計画を改善するために強引に無理な売上になっていることは残念ですがありますので、利益=計算結果から計画をつくることをおすすめしています。
とかく売上信仰が強い経営者は多く、状況を改善するために売上アップを目指すと営業力がある社長だとすぐに達成できてしまいます。
現場のことを考えずに仕事を受けてくると疲弊するのは間違いなく現場です。最悪の場合は頑張って仕事をしても赤字を積み重ねることになりかねず、状況は悪化の一途です。
売上ではなく利益に目を向ける習慣をつけていきましょう。
粗利益の精度を上げるための棚卸管理
いくらのものを仕入れてきていくらで売るか、これがシンプルですが最も大事です。
なので仕入があるビジネスの場合には棚卸管理が会計上だけではなく、営業上も必要になってきます。
また売上原価で製造関係の事業の場合も同様に、いくらで作っていくらで売るか、ということの把握が必要です。
製造原価の場合は、仕入・外注費・人件費・製造経費によって構成されますが売上から変動費を引いた限界利益も意識しておきましょう。
仕入がある場合には変動費に含まれますのでやはり棚卸管理の精度が限界利益の金額を左右します。
棚卸しの管理の頻度としてはタイムリーに把握できるのが最も良いですが週次や月次で把握するためのルール策定をしておきましょう。
取り扱うモノが大きければ個別管理でExcelやスプレッドシートでの管理も可能ですが、取扱いアイテムが多い場合にはシステム・アプリの導入も選択肢です。
まとめ
何かを仕入れて販売する、製造するときには必ず商品や原材料などの仕入れが伴います。仕入があるということは使っていない分、販売していない分は繰り越すわけですから在庫です。
棚卸管理がずさんだとそれだけで利益の把握が困難になりますので、赤字の会社は特に粗利益をよく見て改善点がないか探ってみましょう。そのための在庫管理、棚卸管理です。