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遺言書がデジタル対応になる未来はあるか

遺言書がデジタル対応になったとして

法務省では自筆遺言のデジタル化が検討されています。現在は要件が緩和されて財産目録のみパソコン等による作成が認められたり。預金通帳と不動産登記簿のコピー添付が可能になっています。

これについてデジタル技術をさらに活用した遺言制度を改善していきたいというのが方向性のようです。

目次

自筆遺言の問題点

相続の現場に身を置くと家族での揉め事というのは一定程度目にすることになります。

多くが遺産に関わることでおカネにまつわることですので余計にということですが、問題が起きているパターンとしては遺言がらみのことも多いです。

特に遺言として問題になるのが自筆遺言です。

自筆遺言は要件が緩和されて冒頭でも触れたように財産目録はパソコン等での作成が可能であり、預金通帳と不動産登記簿もコピーで対応できます。

また法務局で自筆遺言の保管制度が創設されたこともあり、自筆遺言で遺言を残せないかというご相談は増えています。

ただ揉め事を回避したいという考えでの遺言であれば自筆遺言はオススメしません。

まずいまでも本文、氏名、日付が直筆である必要がある点です。

自筆遺言での揉め事の多くが「自筆遺言を作成した時点では認知症の症状が進んでいたのでこれは本人の意思ではない」という主張に基づきます。

つまり誰かが吹き込んだりして本人の意思が明確ではない状態で作られた遺言なので無効だということ。

こうなると遺産相続が泥沼化します。お互いに譲れないでしょうし、同居して世話をしていた相続人もとことん争うことがあります。

直筆であることが必要な以上は認知症があるとそういう疑いをかけられる可能性があるということです。

こうした同居していた相続人や自筆遺言で得をするような内容で相続できる相続人に対しての不満が爆発して遺言無効の調停や裁判などで争いごとになってしまいます。

自筆遺言の保管制度ができた法務局であっても本人が法務局に出向く必要があります。

身体が不自由だったりすると法務局に出向くことが難しいでしょうから前述の問題は依然として残ります。

これが公正証書遺言だと公証人といういわばお墨付きを与える人がいます。

認知症の症状が進んでいる場合は遺言作成ができないこともありますし、施設などで頭はしっかりしているけれど身体が不自由で寝たきりの場合などは証人さえクリアできれば出張での公正証書遺言の作成が可能です。

揉め事をなくそうとして遺言作成したはずなのに自筆遺言だとそれがあるがゆえに揉め事になってしまったというのはなんとも歯がゆいです。

そういう理由から相続に関わる士業であれば可能であれば自筆遺言ではなく公正証書遺言にしてはどうかと提案するのです。

デジタル対応になったとしても

デジタル対応にしようという意図は分かりますが果たしてそれが可能かどうかはかなり疑問符が着くと考えています。

というのも現状の自筆遺言では本文・氏名・日付が本人直筆であることが求められますし、全てのページに押印が必要です。

話は少し変わりますがインボイス制度や電子帳簿保存法でデジタルインボイスやタイムスタンプのはなしが出てくることがあります。

タイムスタンプひとつとってもまだまだ進んでいないのに個人が電子認証などで遺言をデジタル対応できるようになるかはかなり難しいと考えています。

例えばマイナンバーカードを使って電子認証するにしても暗証番号とカードリーダーさえあれば本人以外でも認証は可能です。

悪意を持っている相続人がいればデジタル対応可能になったとしても本人の意思が明確になっているとはいえないのではないでしょうか。

高齢の方にとってマイナンバーカードを使ったとしても本人の意思確認や電子認証が簡単に済むとは思えません。

デジタル化も方向性としては大切かもしれませんがそれであれば公正証書遺言の場合には相続税をいくらか控除します、というほうが遺言を作る動機になるのではないかなと個人的には考えています。

まとめ

遺言があれば万全というわけではなく揉め事は起きがちですが少なくとも自筆遺言よりも公正証書遺言のほうが揉め事は少ないというのは現場の感覚だと思います。

それであれば無理して自筆遺言のデジタル化を進めるよりも公正証書遺言による相続のほうにメリットを持たせる方が効果的だと考えます。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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