前回から引き続いて新マンション評価通達の確認です。今回は実際にどんな風に計算をするのか試してみます。
新しいルールで計算をしてみる
新しいマンションの財産評価をする際には今までと同じく自用地での財産評価をまずはします。
ここは変わりませんんが後段で補正率を乗じて市場価格と相続税評価額の乖離を修正するという方法が取られているので、手順としては①通常の財産評価(自用地)②評価乖離率の計算と適用、の2段階です。
通常の財産評価は例として計算したものとして用いることにしてここでは評価乖離率を重点的に確認してみます。
計算しやすくするため数字は簡略化したいわゆる丸い数字を使うことにします。
- 分譲価額1.5億円
- 築年数3年 敷地利用権面積10㎡ 建物の固定資産税評価額2500万円
- 総戸数40戸 専有部分面積90㎡ 路線価4,000千円/㎡
- 所在階数 25階
こんな数字の前提でなおかつ自用地評価は財産評価上の補正率は適用せずにで試算してみます。
土地 4,000千円×10㎡=40,000,000円 建物25,000,000円×1.0=25,000,000円
合計で65,000,000円
①評価乖離率計算(A+B+C+ D+3.220)
A:3年×△0.033=△0.099
B:1×0.239=0.239 小数点以下第4位切捨
総階数指数 40階÷33階=1.212>1 ∴1(1といずれか低いほう)
C:25階×0.018=0.45
D:0.112×△1.195=△0.13384→△0.134
10㎡/90㎡=0.1111111→0.112 小数点以下第4位切上
△0.099+0.239+0.45+△0.134+3.220=3.676
評価乖離率は3.676と計算できました
②評価水準と補正率の計算
1/3.676=0.2720となり評価水準0.6未満に該当するため補正率は評価乖離率×0.6
3.676×0.6=2.2056として補正率を計算
③評価額修正
自用地評価65,000,000円だったので補正率を乗ずると
65,000,000円×2.2056=143,364,000円となり改正前と比べるとかなり高く修正されていることがわかる。
実際のところはどうなるか
評価に際しては登記簿謄本から読み取れる情報が多いので評価乖離率の計算自体は問題なくできるはずです。
財産評価のソフトウェアで対応することになるでしょう。
注意が必要なのはこの新しいマンション評価ルールの適用を忘れないように行うということです。
マンションが相続財産に出てきたときにはチェックリストなどで改正評価するかどうかを必ず判定しておく必要があります。
今回の例では65,000,000円の評価額が143,364,000円と倍以上に補正されました。
市場価格は例ではありますが1.5億円の分譲価額ですからほぼ市場価格になっていて、今回の評価ルールの改正の主旨としては1.66倍以下に乖離を抑えるというのが目的とされていますのでその範囲に収まっています。
今回の例はうまく評価の乖離率が反映されて市場価格と同等の金額になりましたが、いわゆるヴィンテージマンションと呼ばれる中古マンションで都心に近いものだとうまくハマらないケースもあるようです。
市場価格と新しいルールでの評価額があまりにも乖離している状態だと依然として総則6項の射程に入ってくるとみられますので、鑑定評価を取るかどうかも含めて今後は市場価格との乖離が財産評価上の重要性をより増してくると考えられます。
まとめ
あたらしい財産評価のルールについて確認をしてみました。
マンションの物件によっては市場価格にかなり近くなるケースもありますので、評価漏れなどが内容にしておきたいですし乖離が大きい場合には鑑定評価の検討も必ず入れておきたいですね。