不動産賃貸をしているかたから相続対策になると聞いてということで、賃貸不動産業を法人化することを相談されることがあります。
どういった内容なのか整理してみましょう。必ずしも相続対策になるかというとそういうこともないです。
賃貸不動産業の法人化のパターン
賃貸不動産業を法人化するときのパターンとして代表的なものは3つあります。それぞれに特徴がありますので確認しておきます。
管理会社型
いわゆる不動産管理会社として法人を設立し、管理業務をその法人にやってもらうパターンです。
この場合、おカネの流れとしては個人(不動産所有者)→法人(不動産管理会社)への管理料の支払いになります。賃料を個人で受けるか、管理業務として法人で受けるかは不動産管理会社の業務範囲によります。
そのため、多くの金額を管理料として設定することができませんから(目安としては賃料の5%程度の管理料)、金銭的な移動がないため所得などへの効果が薄いです。
管理会社を設立して管理料を支払うということになりますので、管理会社側で管理業務を行う必要があります。
そのため不動産管理会社の運営のノウハウがあったほうがよいです。
サブリース型
個人が所有する賃貸不動産を一括で法人に貸し付けて、その法人とサブリース契約を結ぶというパターンもあります。
この場合のおカネの流れとしては法人が不動産の間に入ることになりますので、借主→法人→個人と賃料が流れていきます。
管理料としては10%から15%ぐらいが目安とされています。管理業務があるので不動産管理会社と同じタイプです。
不動産所有型
個人が所有する不動産を法人に移転し法人が所有するパターンです。一般的には不動産のうち建物部分を移転する方式とされています。
税金への効果が一番高いと言われていますが、その分注意点が多いです。
おカネの流れとしては建物所有の法人に賃料が入り、そこから個人所有の土地に対しての地代を払うという流れが一般的です。
法人側で建物を個人から購入するにしても購入資金の問題があったり、また建物の価格設定も注意が必要ですし、不動産移転コストもかかります。
個人の所得が下がるので賃料が多く、その分が個人の資産にストックされていく(つまり相続税が増えていく)ことが想定される場合には選択肢になります。
なぜ相続対策になるか
なぜ相続対策になるかというと不動産所有型で少し触れましたが個人の所得や資産を減らすことで相続税が減るという面があります。
というのも個人から法人に建物を動かすということは個人の資産が減ります、一方で対価がある場合には建物がお金に変わるだけですから動かすだけでは資産に変化はありません。
所得の積み上げが今後も予想される場合には、賃料が法人に入るわけですから所得の分散効果があり、不動産移転前は個人で賃料(地代含む)を受け取っていたものが、不動産移転後は個人で地代、法人で賃料となります。
個人側で積みあがっていくであろう賃料(地代含む)が地代になりゆるやかになることで相続対策になる、と考えることができるわけです。
注意したいポイント
注意したいポイントをいくつかピックアップします。
まずは管理会社型、サブリース型の場合には法人の業務が実態としてあるか、役員報酬の設定、管理料が適正な範囲か、というのがあります。
法人で業務をしていなければそもそものはなしではありますし、役員報酬を高く設定してもその金額が妥当なものかどうか、管理料についても同じくです。
法人設立する場合には、その株主を相続人にしておくことが望ましいです。というのも被相続人として想定される人が株主になってしまうと不動産が株になっただけと言えるからです。
また不動産所有型の場合には不動産の移転コストもかなりかかります。相続だとかからないものが贈与や売却だとかかることについて受け入れられるかどうか。
法人にすると設立コスト、不動産の移転登記の司法書士費用、法人の毎期の決算申告の税理士費用とかなりかかります。
意外と出ていくものが多いですし、それと比べて税金の効果は感じにくかったり、相続人のかたがそもそも賃貸不動産は相続したくないというケースもあって不動産は親の代で整理しておいて欲しいというニーズも見かけます。
まとめ
シミュレーションせずにいきなり法人化に踏み出そうとする方がときどきいらっしゃいますが、思ってたのと違うとなる可能性が高くなりますのでしっかり検討したうえで納得して進めるほうがよいです。
安易にやってしまうと後戻りできなくなるので慎重に判断しましょう。