相続税申告や相続対策のサポートをしていますともし揉めたらどうなる?というご質問をいただきます。
もし揉めたら失うものがたくさんありますので今回はそのお話を書きます。
お金
仮に相続で揉めるとすると多くが財産の分け方です。相続税申告が必要な場合でも分け方で揉めて申告期限までに分けられないケースというのはあります。
相続税申告の場合には未分割申告というものがありそれで対応しますが、相続税の金額は財産の分け方が決まっている場合と比べて高くなることがあります。
相続税計算上のルールで特例が各種用意されていますが基本的に財産の分け方が決まっていることが前提での特例適用です。
配偶者の税額軽減も小規模宅地の特例も分け方が決まっていないと適用できないため、相続税の支払いが増えます。
またそれにあたって財産の分け方が決めれていないということは遺産から相続税の支払いができないことが多く、相続人個人の財産からの持ち出しになる可能性があります。
財産の分け方が決まったら改めて分け方が決まった状態での特例適用などをして申告のやり直しができますが、一時的にせよ相続税の支払いが増えることになります。
もし揉めてしまいそうということであれば死亡保険金で相続税が支払えるようにしておくと少し安心です。
死亡保険金は受取人の固有財産であり遺産分割の対象外です。そこから相続税がいったん納められるのであれば持ち出しをしなくて済むかもしれません。
相続税計算上の死亡保険金の非課税枠も遺産分割が未了でも適用できますのでその点も安心です。
揉めてしまった場合には弁護士に依頼して調停や裁判に移行するケースがあります。
この場合には弁護士費用がかかりますのでスムーズに遺産分けができて弁護士に依頼せずに済む場合と比べるとお金は減ることになります。
時間
遺産分割で揉めた場合には当事者同士で話し合いがつかなければ弁護士に依頼したり、調停に移行することになります。
いきなりすぐに財産の分け方が決まるわけではなく複数回にわたって双方の主張をしていきますし、そもそも裁判所が間に入るのでものすごく時間がかかる傾向があります。
一年や二年だと早いほうかもしれません。
5年、10年と骨肉の争に発展してしまうケースもあり、それだけ揉めていると時間もまた相当かかります。
揉めずに遺産分けができた場合と比べるとその遺産でできたであろうことも機会を失いますし、時間が過ぎていく感覚が強く残るそうです。
お金もある意味で取り戻せない部分がありますが、時間のほうがより顕著に取り戻すのが困難です。
何に価値を置くかはそれぞれの考え方がありますが、争いごとで時間を失うぐらいなら自分の取り分は少なくてもいい、と考える方もなかにはいらっしゃいます。
そういう人ばかりだと遺産分割もスムーズかもしれませんが、実際お金が絡んでくるとそういう訳にも行きません。
相続人のかたが遺産を目論んでいろんなことを考えていたケースなどでは引くに引けない事情もあってなかなか合意に至らないこともあります。
相続で揉めてしまうと時間もお金も失うことになりかねない、というのは頭の片隅に置いておいた方がよいでしょう。
家族関係
そもそも揉めるぐらいですから相続人同士の家族関係はあまりよくないケースが多いですが、相続で揉め始めるとそれが決定的になります。
当人同士ならまだしも、相続人それぞれの配偶者など相続人ではない親族が相続の場面で出てくるとより一層こじれます。
こうなると円満な家族関係の構築は今後も難しくなるでしょう。
相続の前から揉めているケースだと葬式や法要は相続人が別々に行うみたいなこともどうやらあるようです。ここまで来ると極まってしまった感はありますが。
お金が絡むので遺恨が残りがちです。
相続前からそういった揉めごとが懸念される場合にはそれを望んでいるなら良いですが避けたいという思いがあるなら遺言を準備いただくのがよいでしょう。
過去の相続のときのことを精算しようなどと考え始めるともう収拾がつかなくなってしまいますのでそういったキーワードが出てきた段階でリスキーな相続になります。
まとめ
どこに重点を置くかで相続対策の方向性が全く変わってきます。とにかく揉めないようにということなら必要最低限の対策で相続税のことについては後回しにすることもあります。
揉めてしまった相続の話はいわば家の中の話でオモテに出てこないことも多いですが、職業柄拝見する機会があるとなんとかならなかったのか、亡くなったかたが草葉の陰でどういう風に見ておられるだろうかと思ってしまいます。
揉めてしまうといろんなものを失ってしまいますのでその点は頭の片隅において方向性を考えていただくのがよいですね。