遺言を準備するのは被相続人ではあるのですが相続人の立場になったときに遺言があったほうがよかったかもとなるケースはあります。
相続人の立場でみてみましょう。
相続人間の仲が悪い
相続人間の仲が悪いケースはものすごく多いわけではないですがあり得ます。特に弁護士さんのところに話が持ち込まれるケースだとそうです。
仲が悪いと相続人間で遺産分割協議がまとまらない可能性が高まります。
財産は基本的に塩漬け(亡くなったかたの名義のまま)になりますし、相続税がかかる場合には相続人でいったんは負担(遺産からの支払いが難しくなる)する必要が出てきます。
また相続税計算上は財産が分けれていることで受けられる特例計算があります。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の課税価格の特例といった計算の方法が適用できるかどうかで税額は大きく変わります。
分け方が決まっていることが要件になっている特例は分けれていないと適用できませんので税額が高い状態でいったん納付します。
その後分け方が決まった場合の救済(3年以内の分割見込書の事前提出と分割確定後の申告(更正の請求))はあります。
でも結局分けれるのであれば最初から分けれているほうが負担は軽減されます。
相続が揉め事に発展すると弁護士費用や裁判・調停のための費用、相続税の一時的な負担増、精神的な疲労が発生するものです。
それは揉め事を起こす方も起こされる方も程度の差はありますがストレスがかかるという点では同じですので、可能であれば遺言があったほうがよいでしょう。
親世代の財産が複雑(共有がある)
親世代の財産が複雑なケースはあります。親がその親からの相続財産があり共有になっている場合にはそのまま引き継がれることになります。
子が複数いればさらに分散する可能性もあります。
そのため、財産構成が複雑な場合には誰か一人にそれを担ってもらうべく遺言があったほうがよいです。
お互いに相続したくない財産があるとそれだけで遺産分割協議が進まなくなる可能性が高まります。
また、有価証券がたくさんある場合なども誰がどの株式を相続するか今後の配当のことなどを考えると悩ましい部分はあります。
それぞれが引継ぎたい財産、引き継ぎたくない財産を主張し始めると財産構成が複雑であればあるほどまとまりません。
そういうことが想定される場合には遺言で分け方を決めてもらったほうがラクと言えるでしょう。
会社経営にかかわる相続人とそれ以外がいる
親が会社経営者の場合には株式を保有しているケースがありますのでこの場合も遺言はあったほうが相続人の立場だと安心です。
特に事業を引き継ぐ相続人とそうではない相続人がいる場合には明確に株式を相続する人を後継者である相続人にしておくほうがよいです。
事業に関わらない相続人にはその分金銭などで見合った金額を渡せるようにしておくのが望ましいですが、株式を相続して会社経営をすることの大変さは事業にかかわりのない相続人には理解しづらいものです。
配当を出してほしいなどややこしいことを言い始める可能性もありますので非上場の株式がある場合には遺言があるのが望ましいでしょう。
まとめ
揉めている相続にあたることは専門家としてはときどきあるものですが一般的にはそれほど多くはないでしょう。
相続人の立場から遺言を書いてほしいと親に伝えるのは難しいケースもあるかもしれませんが、専門家の助言をもらいつつアプローチしているのもよいかもしれません。
意外と親も気にかけていてキッカケがほしいだけかもしれませんし。