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相続税申告が必要なことに気が付かなかった事例

相続税申告が必要なことに気が付かなかった事例

相続税申告が必要なのに申告をしていなかったケースというのは実はあります。気が付いていなかったということもあるのですが勘違いしていることも。

どういったケースが該当するかチェックしておきましょう。

目次

特例の適用ができるから 申告が適用要件

特例によって基礎控除以下に財産金額が下がったり税額がゼロだから申告が不要だと思っていました、ということはときどき起こり得ます。

司法書士や弁護士、税理士に相談するタイミングがないと気が付かなかったりネットで調べてこれに該当するから申告は要らないね、と自分で判断したりすることが原因です。

代表的なものを3つ挙げてみます。

小規模宅地の特例

小規模区宅地の特例という相続税を計算するうえでの特例があります。

亡くなった方が住んでいたり、事業を営んでいたり、人に貸していたりする土地について、そのまま課税すると売却して相続税を払うことになりかねないので、一定の用途に使っている要件を満たした場合には相続税計算上は課税価格を割り引いて考えます、という特例です。

居住用といって亡くなった方の住むご自宅については330㎡まで80%減できるのでその効果は非常に大きいものになります。

ザックリとした例で示してみましょう。

事例
  • 自宅の土地:3,000万円(200㎡)
  • 自宅の建物:1,000万円
  • 現預金:1,000万円
  • 合計:5,000万円

相続人が2人(いずれも子)という場合を考えてみます。

そのままだと基礎控除が4,200万円(3,000万円+600万円×2人)ですから相続財産としては5,000万円で超えています。つまり申告が必要な状態です。

ここで申告が必要なことに気が付けばよいのですが、ネットで調べてどうやら小規模宅地の特例というのが使えそうだ、ということを相続人の一人が考えたとします。

330㎡まで80%減ですからもし適用できたとしたら3,000万円×80%=2,400万円となり差額である600万円として土地の価額を計算します。

これに基づいて財産の合計をしたら600+1,000+1,000=2,600万円ですので、基礎控除を下回っているから申告が必要ないね、と判断して申告をしませんでした。

ここまでで気をつけなければいけないポイントが2つあります。

ひとつ目が小規模宅地の特例は申告をすることで適用できる特例ということ。申告して初めてこの特例が使えるわけです。つまり申告をしていないと基礎控除は越えている状態です。

なので申告は小規模宅地の特例を適用してもしなくても、どちらにしても必要だということ。

そしてふたつ目が小規模宅地の特例は適用要件が細かく定められているので本当に適用できるかを自己判断するのは結構リスクがあるということ。

これだけ相続税への影響が強いわけですから適用するにあたってもルールが細かく設定されるのは当然といえば当然です。

330㎡まで80%減という点ばかり目がいってしまって、適用ができるかどうかの判断をおろそかにしていると実は適用できませんでした、というのが一番困るわけです。

申告が必要ないと思っていて実は申告が必要で、しかも特例が適用できないので税金がかかるのに、納税もしていない状態だと非常にまずいですよね。

配偶者の税額軽減

小規模宅地の特例と同じく気をつけたいのが配偶者の税額軽減の特例です。

こちらの特例は配偶者が相続した財産が法定相続分か1億6千万円までは相続税がかかりません、という内容です。

仮に配偶者が相続財産の全部として1億5千万円を相続したとした場合でも1億6千万円以下ですから相続税はかからない計算になります。

この特例は配偶者はその亡くなった人と協同して財産を築いた側面があるのと、配偶者の財産でその後も生活をしていくことが多いであろうことが予想されるので社会的な配慮としての側面があるとされています。

なので特例そのものは配偶者がいれば適用できるのですが、これをもってして相続税がゼロなので税金がかからないから申告が不要だと考えると早とちりです。

前段の小規模宅地の特例と同じく申告をすることで適用できる特例です。

また小規模宅地の特例と同じ点がもう一つあってそれは、財産の分け方が決まっている、ということ。

財産の分け方が決まっていて相続税申告をして初めて適用できる、というわけです。

なので「配偶者が財産を相続すると1億6千万円までなら相続税がかからない」から申告が不要、というわけではないので注意が必要です。

都合の良いように切り取ってしまうと本当は申告が必要なのに申告がしていなかった、ということになる可能性もあります。

孫が受取の死亡保険金

死亡保険金は法定相続人の人数×500万円までは相続税が課税されません。

これは相続税対策として今でも有効なことが多いのですが、保険の営業担当者に言われるがまま、お孫さんを受取人にしていたとしましょう。

この場合でも相続税がかからない、申告が不要かというと実はそうではないのです。

孫が代襲相続をしている場合、つまりなくなって時点で子がすでに亡くなっていたら法定相続人になるので死亡保険金の相続税非課税の対象になります。

子が存命の場合にはどうかというと、法定相続人ではない孫が死亡保険金を受け取っていると相続是の非課税の対象外です。

つまり相続税の申告が必要で、なおかつ相続税の納税も発生すると考えられます。

しかも2割加算というおまけつきです。

2割加算

亡くなったかたの一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。) および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算される

生前贈与加算の対象にもなり得ますのでかなり困ったことになることも。

仮に500万円の死亡保険金をお孫さんが受け取った場合ですと、相続税率が10%だと50万円、さらにそこに2割加算ですから合計で60万円の相続税が課税される計算です

申告が不要だと思っていたら実は申告が必要でなおかつ相続税の支払いも発生する、というのはこういう状況によることがあります。

まとめ

申告の要不要は慎重にすることをオススメしています。一度は専門家に確認しておくのがやはり安心でしょう。税務署に抵抗がない場合には税務署でもよいです。

特例を使って申告が不要になるケースは相続税においてはほとんどないので申告が必要かもしれない、という視点でチェックをしておくのが望ましいです。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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