こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
ときおり「相続税申告をしないといけないようなのですができていません」というご相談をいただきます。
もし相続税申告をしないといけないのにやってない、ということに気が付いたら、ということを解説します。
相続税の申告書が必要なケース
相続税申告が必要なのは相続税の基礎控除額を超える財産を亡くなった時点で所有していた場合です。
基礎控除の金額は3,000万円+600万円×法定相続人の数という算式で計算をします。
配偶者とお子さん2人が法定相続人の場合には3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。
お子さん1人が法定相続人の場合には3,000万円+600万円×1人=3,600万円となります。亡くなられた方のご家族の状況によりこの基礎控除の金額が変わります。
法定相続人はどういう人が該当するかもあわせて整理しておきましょう。(養子がいる場合は省略します)
配偶者がいる場合(婚姻関係にあるひと、内縁関係の場合などを除く)には必ず配偶者が法定相続人になります。これはどれだけ配偶者と仲が良かろうと悪かろうとそう決まっています。
法定相続人の第一順位はお子さんががいる場合には子が法定相続人です。子がいたけれど今回のご相続以前に亡くなっている場合に孫がいる場合には孫が法定相続人です。
この相続関係が引き継がれることを代襲と言います。この場合には配偶者と子(または孫)が法定相続人ということになります。
法定相続人の第二順位は子や孫がいない場合には親世代です。親が存命の場合には上に上がるというイメージです。
親が既に亡くなっている場合で祖父母が存命の場合は祖父母になります。ここで注意が必要なのは親と祖父母は同時に法定相続人にはならない、ということです。
親が存命なら親まで、親がいずれも亡くなっている場合には祖父母、という形を取ります。
配偶者がいる場合には配偶者+親(または祖父母)が法定相続人です。
法定相続人の第三順位は子や孫がおらず両親や祖父母が亡くなっている場合には亡くなった方の兄弟姉妹(けいていしまい)となります。
兄弟姉妹が亡くなっている場合には一代だけ代襲をします。つまり兄弟姉妹が亡くなっている場合には亡くなった方からみて甥姪までが法定相続人です。
親族関係によって法定相続人に該当する人が変わります.(民法887、889、890、900、907)
国税庁には相続税の申告要否判定コーナーといって申告が必要かどうかをザックリと判定してくれるツールがありますのでこちらを活用するのもよいでしょう。
国税庁 相続税の申告要否判定コーナーhttps://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/formRequest/ac0200/init#bsctrl
申告しなくてよいと思ってしまった理由トップ3
相続税申告の提出・納付の期限はその亡くなったことを知った日の翌日から10月以内とされています。
もしお亡くなりになったのが2021年9月2日でそれを知ったのが同日の場合には2022年7月2日です。
納税と申告のタイミングは上記の期限内であればズレても問題ないです。期限内にいずれも完了していればよいです。
相続税申告をしていなくて、でも実は必要だった、というかたからご依頼をいただくときにはなんで申告しなくてもいいと思ったのか差し支えない範囲で教えていただくようにしています。
そのなかでもトップ3の理由をお伝えすると
1.そもそも申告が必要なことに気が付かなかった
2.税務署から書類などが来ると思っていた
3.特例を適用して必要ないと思った
この3つがお伺いしている中では多い印象です。ひとつずつみていきます。
1.そもそも申告が必要なことに気が付かなかった
誰しも自分が相続税の申告をしなければいけないと気が付けるかと言うとそうではないでしょう。
自分とは無縁の世界だと感じるのも無理はなく、相続税の申告が必要となる人は統計上でだいたい100人お亡くなりになったら8~9人と言われています。
富裕層のお話で自分には関係ないと思うかもしれません。
ただ前述したとおり親族関係により相続税の基礎控除は変わりますが都内23区など市街地の中心部で自宅をお持ち、相続人が子どもさん1人とかだと基礎控除をアッサリ超えていることが多いです。
土地の相続税評価額が高かったりすると本当にアッサリ超えます。こういうことがないように相続税がひょっとしてかかるかもしれないと少し気を付けておくのが大切です。
イメージで言うといわゆる市街地、都市部に一軒家をお持ちで相続人が少ない場合は特に注意が必要です。
前段でお伝えした国税庁のホームページのツールで確認を事前にしておくのもよいですし、お近くの税理士に相談することもよいでしょう。
2.税務署から書類等が届くと思っていた
税金は申告納税制度と賦課課税制度といって2種類に分類することができます。
申告納税制度は自分で申告書を作って提出し納付をする税金で、法人税や消費税、そして相続税も申告納税制度の税金です。
賦課課税制度の税金は自動的に役所などから納付書が送られてくるイメージの税金で、自動車税や固定資産税などがこれに該当します。
自分で申告をすることが前提になっていますので基本的には「あなたの相続税はこれですので払ってください」というのはありません。
ただし税務署からは「相続税申告のお尋ね」といった書類が届くことがあります。
税務署側ではその管轄地域で亡くなった方の情報が市区町村から共有されますので、ひょっとしたら相続税がかかるんじゃないか、というひとにはお尋ねという形で書類が届きます。
このお尋ねですが届かなければ申告が必要ない、というわけではありません。反対にお尋ねが届いたからと言って必ずしも申告が必要だ、というわけでもないです。
あくまで参考程度にひょっとして申告が必要じゃないですか?というアナウンスをしているわけです。
なのでこのお尋ねが届かないからといって申告が必要ないというわけではありませんので注意してください。
3.特例を適用して必要ないと思った
相続税を計算するうえでは様々な特例があります。代表的な特例としては、小規模宅地等の課税価格の特例と配偶者の税額軽減があります。
小規模宅地等の課税価格の特例は一定の土地について相続税計算上の評価額を減額します。
配偶者の税額軽減は配偶者の相続した財産について法定相続分か1億6千万円までは相続税がかからない、という特例です。
いずれの特例もポイントとしては相続税の申告をすることが要件となっています。
つまり特例の適用をして相続税がかからない場合でも特例適用前の財産の内容として基礎控除を超えているなら申告の必要はあります。
申告は必要だけれど納税がないというパターンは相続の場合あり得ますのでそれに該当するとしても相続税の申告をするようにしましょう。
もし申告してないことに気が付いたら
もし申告をしていないことに気が付いたらどうするか。シンプルに早く準備をして提出し納税をするということが大切です。
申告期限を過ぎている状態で既に無申告の状態かつ納める税金を納めていないので延滞税がかかっていることが想定されます。
時間が経過すればするほど延滞税は増えていきます。
また無申告の状態で税務調査があった場合には無申告加算税というペナルティ的な税金が課されます。
税務調査がある前に自主的に申告をすれば無申告加算税は課されません。
つまりなるべく早く自主的に申告をすること、これがまず目標となります。
まとめ
近年は相続税の無申告の補足や調査も増えてきており税務署側でも力を入れています。
もし申告しなければいけないのに申告できていなかった、という場合にはなるべく早く対応していくことが必要です。
事情をくみ取って早く対応してくれそうな税理士を探すことも選択肢のひとつです。