こんにちは、京都の税理士ジンノです。
相続財産で計上漏れがおきやすいものをピックアップしていますが、今回は手許現金関係について確認していきます。
なかなか現物を確認することが難しかったり、意外と高額になったりするのですが丁寧にお話を伺って確認をしつつ計上漏れがないように努めることが必要です。
手許現金とは
手許現金とは文字通り手許にあるおカネのことです。今の私の現状であればお財布に入っているおカネと、小銭を入れている貯金箱、この2つで手許現金を構成しています。
相続の場合にはお亡くなりなった時点で手許にある現金を指します。
例えば前述のようにお財布があればその中身、事前にお亡くなりの前に金融機関の口座から引き出している金額があるのであればそれも手許にあるものとしてみます。
この亡くなる直前に預金から引き出している現金は通夜や法要の際の費用に充当されており、お話を伺った段階(概ねお亡くなりになってから2~3か月後)には使用していて残っていないということもあります。
でもあくまで亡くなった時点での判定ですので預金口座に預け入れてなかっただけで現金として手許にあるのであれば計上します。
葬式費用については通夜、本葬までの費用は債務として計上しますので、事前に引き出しておいた現金だけが計上されて税金計算上不利になるということは避けられます。
反対に事前に引き出しておいた現金を手許現金として計上せずに、葬式費用だけ債務として計上していると、計算上は誤りがあることになりますので注意が必要です。
税務調査を見越した確認の方法で言うと、相続税の税務調査時に債務葬式費用が高額な場合にはその支払をどこから支出したか確認されることがあります。
親族が立て替えているのであればその親族の通帳を確認すれば判然としますが、そうではなくどこから支出したかを確認されて亡くなった方の家にあった現金で充当しました、ということもあり得ます。
こうなると直前に金融機関の口座から出金していたかどうかは関係なく、相続開始時点で現金が少なくとも葬儀費用等に支払った分はあったと考えられて手許現金の計上を求められる可能性が高くなります。
相続税申告の際には直前の入出金を亡くなった方の預金口座については確認するのがセオリーですが、そこから直前の出金がない場合には「葬儀費用は誰かが立て替えているのか?」という確認をしておくと計上漏れを防ぎやすくなります。
直前の出金ではなくても自宅にタンス預金として現金を保管している方は意外と多いです。
お亡くなりの時点で自宅にあったのであれば誰の現金なのかも含めて確認しておくことが大切です。
手許現金が高額になる理由
相続業務を担当することになって初めて知ったことなのですが、意外とご自宅に現金を保管している高齢者の方は多いです。
さまざまな理由がありますが、見聞きした範囲でピックアップしてみると
・足腰が悪くなって銀行に行くのが億劫になり、一度に生活費+念のための引出しをする
・ペイオフ対策(預金保障制度 1金融機関1預金者あたりの元本1,000万円+利息等が保護対象)
・病院の費用等々で念のために引き出したものが結局使わず残った
このあたりの理由が最も多い印象です。
こちらで想像するよりも自宅で現金をいわゆるタンス預金している割合というのは多い、という心づもりでお話を伺うようにしています。
不用心ではあるかもしれませんが、現実問題として手許にあるのであれば相続財産として計上する必要があります。
他に手許現金関係で注意すべきもの
現金そのものだけに気を取られていると計上を漏らしてしまう可能性があるもので、いままで私が経験したものをお伝えすると
・金貨(ウィーンやメープルリーフ)
・金の延べ板
・互助会積立金(葬儀会社へ預けている金銭)
・老人ホーム等の入居預り金の返還
このようなものが出てくることがあります。
現金そのものではないですが、亡くなったかたの関係で支払ったものに加えて、受け取ったものについても確認が必要です。
まとめ
現金が家にあるから悪い、というわけではもちろんないので、丁寧にお話を伺ったうえで適切に処理をしていくしかありません。
また現金関係も税務調査では指摘事項に比較的よく上がってきますので、その点も踏まえて事前に確認をしておくことが必要ですね。