京都の若ハゲ税理士ジンノです。
相続税対策のご提案をしているとよく耳にするのが、「相続税を減らしたい」というキーワード。
もちろん気持ちはわかりますが相続税対策をする前に行うべきことがあります。それはご家族でのおカネに関する価値観を共有することです。
相続税を支払うのは誰か
相続税を減らしたいというニーズは一定程度あるのも確かです。ただし私はいつもお客様にはこのようにお伝えしています。
相続税を支払うのは誰でしょうか、と。
お父さんお母さんの財産を引き継ぐ場合において相続税を支払うのはその亡くなった方ではなく、財産を引き継いだ人です。
相続税の支払いを減らしたい、しっかりと相続対策をしていきたいと思うのは親心です。財産を遺す予定の方からよく聞くのがこの相続税を減らしたいというキーワードです。
ここに認識の違いが生まれてしまうことがよくあります。
財産を遺す人が相続税を減らしたいと強く思っていても相続税を実際に払うのは財産を引き継いだ相続人の方です。
もちろん、税金の金額を減らしたいと思う気持ちもよくわかりますし、いろんな方法がありますので実行するかどうかというのも検討をしたほうが良い場合もあります。
例えば借り入れをして不動産を建てそれを貸しに出すような場合において、相続税対策を開始した年齢にもよるのですが亡くなった時点で大きく借入金が残る可能性もあります。
小規模宅地の特例など例外はありますが、 相続税が減るということは相続財産が減少することを意味しています。
借入をして建物を購入や建築をすると借入金額よりも建物の価格の方が相続税の計算上は低くなりますのでその差額を利用することで相続対策になります。
つまり1億円で建物を建てると6000万円ほどに建物の価格がなりますのでその差額4000万円が単純に考えると減少することになります。
また贈与においても財産が相続人やその他の人に移転します。例えば210万円を5人の相続人に毎年贈与する場合は、210万円×5人=1050万円が毎年相続財産から減少していくことになります。
相続税は亡くなった時点における財産に課税されるものですので、税金を減らす=財産を減らすことに直結します。
相続税対策においては相続税が支払えるかどうかというのはかなりポイントになるのですが、対策を実行する際にはいくらの相続税がいくらになりそうか対策の効果をきちんと見極めることが大切です。
相続税を減らす方向の相続対策は良かれと思ってやっていても相続財産を減らすことになること、 相続税を支払うのは相続人であることを意識しておいた方がよいです。
おカネに関する価値観の共有とは
相続対策のご提案や報告をする際にはおカネに対する価値観を共有しておいた方がよいですねと伝えしています。
というのも前述のように借り入れをして不動産を建築する場合において借入金が多く残る可能性もあるわけです。
親心として良かれと思っておこなった相続税対策が相続人にとってプラスになるかというと必ずしもそうはなりません。
また相続税が支払える財産が残されているのであれば無理をして対策をする必要はないと考える方もいらっしゃいます。
財産を遺すことについてご家族で話し合う機会というのがあまりないことも影響してか、ご家族さんと話し合いをしないまま対策をどんどん進めていく方も中にはいらっしゃいます。
おカネに関する価値観、ここで言うと例えば借入金をたくさんして相続税を減らしたいのか、そこまで無理をする必要はないと考えているのか、という部分をご家族でぜひ共有して話し合ってもらうことが必要です。
相続の難しい部分の一つとしてご家族の数だけ答えがあるということです。もっと言うと答えが一つではないということ。
おカネに関する価値観が共有されている場合には相続対策を実行した後お亡くなりになっても、対策の意図がきちんと伝わっているのであれば納得感は強く、仮にもし借入金があっても何で借入金があるのかというのが理解しやすいです。
反対に価値観が共有されていない場合には、なぜこんな対策をしたんだろうかという疑問や不安が残ります。
文句を言おうにも相手はお墓の中ですから言うわけにもいきませんし、亡くなった方はもちろん死人に口なしなので弁明をする機会もありません。
ご生前に対策をしたいと考えている方はこの価値観の共有は是非しておいた方が良いです。
あとで恨み言を言われることほど辛いものはありません。
もし何か考えていることがあればしっかり検討して実行の前にご家族さんと話し合いをしておくのが大切です。お盆の時期や正月の時などご家族が集まる時に少し話をしておくだけでも違ってきます。
そういう場面でお声がけをいただいて財産を遺す方のお話のサポートをする機会もあります。
まとめ
ご家族の仲が良ければ事前にしっかり話し合いをしておく方が良いですし、もしご家族の仲が悪いようでしたら事前の相談ではなく、話し合いの余地がなくなるように遺言を残しておくことも検討しておきましょう。
おカネに関する教育というのを家庭でやらないというのはよく聞きますが、対策の第一歩としておカネや財産についてどう考えているのかは伝えておきましょう。