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相続開始年分の贈与があった場合の取り扱い

相続税対策で贈与をしているケースは多くあります。亡くなるタイミングは誰にもわからないのですが、一定期間ずっと贈与していたというケースもよく見聞きします。相続税対策で贈与している場合に起きやすい勘違いや取り扱いについて、少し整理をしておきます。

目次

生前贈与加算に関する勘違い

生前贈与加算とは、相続税を計算するときの特例計算になります。亡くなる3年前(今後は7年に延長していきます)において贈与があった場合には、その贈与した財産を相続財産に足し戻す形で相続税を計算するというルールです。

これとセットになっているのが、その贈与について贈与税を払っている場合は、贈与税額控除を受けられるというルールです。生前贈与で贈与された財産について、足し戻した分に関しては贈与税を控除することができます。

相続開始年分の贈与とは

一方で、亡くなるタイミングは誰にもわからないので、亡くなった年に贈与があったというケースもあります。例えば7月に贈与を行っていて、12月に亡くなるということは起こり得ることです。この場合、その亡くなった年に行われた贈与のことを「相続開始年分の贈与」と呼びます。

相続開始年分の贈与については、贈与税の申告は不要とされています。なぜかというと、相続財産として生前贈与加算の対象になるため、贈与税を払って贈与税を控除する必要がないという考えがあるからです。いずれにせよ、相続で課税されるので、贈与税の申告をしなくてもいいということになります。

ここで少し勘違いが起きやすいのは、「そもそも贈与はなかったのか」という点です。贈与はあったという形になります。贈与税の申告をしないだけで、贈与は生前贈与加算の対象になります。なので、贈与の財産については贈与税が課税されるのではなく、相続税が課税されるという形を取ることになります。

生前贈与加算の対象になる人

さらにもう一つ勘違いが起きやすいのが、生前贈与加算の対象になる人です。生前贈与加算の対象になるのは、その亡くなった人から相続または遺贈で財産を取得した人が生前贈与加算の対象になります。なので、相続または遺贈で財産を取得しなかった相続人等については、生前贈与加算の対象ではありません。

では相続開始年分の贈与はどうするのかというと、相続税で課税するから贈与税の申告が不要だったということですので、相続税の申告が必要ない人に関しては贈与税の申告が必要です。

孫への贈与で特に注意が必要なケース

ここは少し勘違いが起きやすい部分で、具体的にいうと、お孫さんがいる場合で相続税対策をしているときに、この部分を勘違いしているケースが時たま見られます。

【ケース1:孫が相続または遺贈で財産を取得していない場合】

例えば、孫に毎年贈与していて亡くなったとします。そのお孫さんは代襲相続をしているわけではなく、相続または遺贈で財産を取得していませんので、相続税の申告をする必要はありません。ただ贈与を受けているわけですので、贈与税の申告は基礎控除を超えている場合には必要になります。

ただし、この贈与が相続時精算課税贈与で行われている場合には、相続または遺贈で財産を取得していなくても、相続税の課税対象になります。相続時精算課税は相続税で課税するから優遇されている贈与だからです。

通常は相続または遺贈で財産を取得していない孫は生前贈与加算の対象ではなく、相続税を申告しませんので、贈与税の申告が必要になります。

【ケース2:孫が遺贈で財産を取得した場合】

では、これとは別のパターンを考えてみましょう。孫が遺贈で財産を取得した場合を考えてみます。遺言で孫に財産を相続させるという文言があり、実際に相続した場合には、相続開始年分の贈与は、相続または遺贈で孫が財産を取得するわけですので相続税の申告をすることになります。

これにより、相続または遺贈で財産を取得している孫は生前贈与加算の対象になるため、相続開始年分の贈与は生前贈与加算の対象として足し戻して計算をすることになります。

【ケース3:死亡保険金を孫が受け取る場合】

基本的に代襲相続をしていない孫は遺言がないと財産を取得することはできませんが、ここでもさらに勘違いというか間違いが起きやすい部分があります。それは死亡保険金の受取人を孫にしているケースです。

この場合は相続人ではないため、法定相続人に認められる死亡保険金の非課税の対象外です。死亡保険金を孫が受け取っている場合には、遺贈で財産を取得したとみなされるため、相続または遺贈で財産を取得した形を取ることになります。

つまり、遺言で財産を相続していないけれど、死亡保険金を受け取ってしまうと、代襲相続していない孫も相続または遺贈で財産を取得した形になるため、その死亡保険金に相続税が課されることになり、相続開始年分の贈与は贈与税ではなく、相続税の課税対象として生前贈与加算の対象になります。

まとめ

相続開始年分の贈与は、贈与税の申告が不要となる一方で、相続税の課税対象となるため、その取り扱いには注意が必要です。特に重要なポイントは以下の通りです。

  • 相続開始年分の贈与も「贈与」として存在し、生前贈与加算の対象となる
  • 生前贈与加算の対象となるのは「相続または遺贈で財産を取得した人」のみ
  • 相続税の申告が不要な人は、贈与税の申告が必要となる
  • 孫への贈与では、死亡保険金の受取人指定により想定外の課税が発生することがある

相続税対策で孫を含めて贈与を行う場合には、この辺りを十分に確認してから行った方が良いでしょう。思わぬ形で課税されると、本来であれば相続税の申告をしなくてもよかった人が申告をすることになりかねませんので、注意が必要です。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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