会社員や勤め人として仕事をしていると、あまり馴染みのない感覚として「資金繰り」があります。事業者として独立したり、会社を経営したりする上で、資金繰りは欠かせない考え方の一つです。
また、資金繰りを考えるときには「未来志向である」と業界ではよく言われるのですが、今回はその辺りの話を少し整理してみたいと思います。
そもそも、資金繰りとは
資金繰りとは、お金の流れを可視化して、不足が生じないようにコントロールすることを指します。
例えば飲食店を例にして考えてみましょう。一口に「今日の売上」といっても、現金なのか、後日の振込入金なのか、クレジットカードなのか、キャッシュレス決済なのか、さまざまな種類があります。
特に飲食店は支払い方法が多岐にわたるケースも多いため、その日の売上がその日にそのまま手元に入ってくるとは限りません。
現金の場合はその場で受け取れるので資金繰りをさほど意識しなくても済みますが、売上が発生するタイミングと実際の入金タイミングにズレが生じている場合には、資金繰りの管理が重要になってきます。
例えばExcelで資金繰り表を作ろうとすると、今日の売上が今月末に入金されるのか、翌月末に入金されるのか、支払い方法ごとの入金タイミングを把握した上で、いくら入ってくるかを計算して入力していきます。
つまり「いつ・いくら入金されるか」を事前に把握しておく必要があるわけです。
支払いについても同様です。例えば給与の締め日が毎月末で翌月20日払いであれば、20日前後にいくら支払いが発生するかが事前にわかるはずです。
仕入れについても、現金払いであれば都度の対応で済みますが、掛け取引で締め日の概念がある場合—例えば「4月末締め・5月末払い」であれば—いつ・いくら支払うのかを把握しておく必要があります。
お金がなくなると事業は立ち行かなくなります。車に例えるならば、お金は燃料のようなものです。
いつ・どれだけ使うのか、いつ・どれだけ補給できるのかを把握していないと、「事業」という車を前に進めることができなくなります。
一方、決算のほうはどうかというと、決算は1年分の成績表のようなものです。例えば3月末が事業年度の決算であれば、4月1日から翌年3月末までの1年間の売上や経費を集計し、利益を計算するものです。
その利益に基づいて税金を算出しますが、あくまでも「過去1年間の成績を報告する」作業です。ですので、決算書は基本的に過去の数字をもとに作成されます。「燃料を使って車がどこまで進んだのか」を確認するプロセスです。
資金繰りは先述の通り「いつ・いくら・どれだけ動くか」を把握することが核心ですので、未来志向と言われるのはそのためです。
資金繰り→資金という燃料を「いつどれくらい使うか、いつ補給できるか」を確認すること
月次決算、決算書→資金という燃料を「どれくらい使って結果どこまで進んだか」を確認すること
そう考えてもらうとわかりやすいと思います。それゆえの資金繰りの未来志向というわけです。
資金繰りをおろそかにすると起こること
資金繰りを把握していないと起こる最大のリスクが、資金の枯渇です。
赤字であれば利益が出ていないので事業継続に赤信号が灯るのは当然ですが、実際には「黒字でも倒産する」ケースがあります。
これは「黒字倒産」と呼ばれるもので、売上の見込みが立っていないというよりも、資金の流れに対して適切なタイミングで手を打てていなかったことが主な原因です。利益が出ていても、手元の現金がなければ事業は止まってしまうのです。
これを防ぐためには、資金繰りをタイムリーに把握すること、そして必要に応じて借入金をうまく活用することが大切です。いわば「燃料が足りなくなる前に、外から調達する」ということです。
資金繰りが安定している会社は、必ずしも常に手元資金が豊富というわけではなく、「適切なタイミングで借り入れができている」という点が大きいです。
お金がなくなってからでは、ガソリンスタンド(金融機関)に行く燃料すら残っていない状態になります。
資金繰り表をタイムリーに管理していると、「このタイミングで資金が不足しそうだ」というのが事前に見えてきます。それがわかれば、余裕を持って運転資金として融資を受けるなどの対策が打てます。
また、設備投資などの大きな支出を予定している場合や、新たに人を雇用する場合も、当然まとまった資金が必要になります。
お金の流れを把握しておくことは、今後どこまで事業を前進させられるかの「燃料計算」をしておくことと同じです。だからこそ資金繰りは未来志向である、という表現がぴったりだと私は考えています。
まとめ
資金繰りとは、お金の流れを「見える化」して未来を管理するための手段です。決算が「過去の成績表」であるのに対し、資金繰りは「これから先の燃料計画」と言えます。
「過去の運行記録」と「これから先の燃料計画」は片方だけではなく両方が大事になってきます。
黒字であっても手元のお金が底をつけば事業は止まります。資金繰りをタイムリーに把握し、不足が見えた段階で借入などの対策を講じることが、事業を継続・成長させていく上での基本的な考え方です。
経営者として独立を考えている方や、事業を始めたばかりの方は、ぜひ早い段階から資金繰りを習慣的に管理することをおすすめします。
