相続税の税務調査では、申告書の数字だけでなく、意識していない部分まで確認されることがあります。今回は、調査官が実際にチェックしている項目についてお伝えします。
支払いはどこから?
相続が発生すると、さまざまな支払いが生じます。調査官は「その支払いがどこから出ているか」を割と細かく確認します。
たとえば葬儀費用については「どこから支出しましたか」と聞かれることがあります。
これは単なる確認ではなく、自宅に保管していた現金(いわゆる「手元現金」)で支払っていないかを見ているのです。
仮に自宅に300万円を置いており、それを葬儀費用に充てた場合、その300万円は亡くなった時点で手元現金として存在していたわけですので相続財産として計上しなければなりません。
結果としてプラスマイナスゼロになるとはいえ、手元現金を計上せずに葬儀費用だけを債務控除に計上してしまうと、申告内容に矛盾が生じます。
相続税の支払い資金についても確認されることがあります。
配偶者がいる場合は「配偶者の税額軽減」の特例により相続税がゼロまたは少額になるケースが多いですが、子どもなど他の相続人には相続税が発生することがあります。
その支払い資金を配偶者が立て替えていた場合、贈与と認定される可能性が高くなります。基礎控除を超える金額であれば、贈与税の申告をしておくことが望ましいでしょう。
生活費の出どころも確認対象です。夫が働いて妻に生活費を渡していたご家庭では、その生活費の余りが妻名義の預金として積み上がっているケースがよくあります。
こういった預金は「名義預金」として認定される可能性があります。
財産は稼いだ人のものという考え方が基本となりますので、生活費として渡した金額に残りがある場合は注意が必要です。
保険契約についても確認されることがあります。亡くなった方が保険料を支払い、被保険者が子どもという契約の場合、まだ保険事故は発生していなくても「生命保険契約に関する権利」として相続財産に計上する必要があります。
特に、若い契約者が高額な保険料を支払っているケースでは、その資金の出どころを詳しく確認されます。
たとえば20歳の子どもが500万円や1,000万円もの保険料を負担するのは現実的ではなく、実際には亡くなった方が資金を出していたとみなされることが多いです。
申告の段階で該当する財産がないか、あらかじめ確認しておくことをお勧めします。
お金の管理の仕方も確認される
調査官は事前に金融機関の口座の動きを把握した上で調査に臨んできていると考えておいたほうがよいです。
相続人から聞いた説明と口座の動きに矛盾があると、疑いの目を向けられることがあります。
特に高額な資金移動があり、本人ではなく相続人がお金の管理をしていた場合、委任契約が成立していたのかという点が問われることがあります。
ご高齢になるにつれ認知症状が出るケースもあり、「亡くなった方の指示で動いていた」という説明が通らない場面も出てきます。
趣味から財産の計上漏れを確認されることも
調査官が亡くなった方の趣味を聞いてくることがあります。
一見雑談のように聞こえますが、そこから財産の計上漏れを確認しているのです。
ゴルフが趣味であればゴルフ会員権の有無、車好きであれば車の計上漏れがないかなど、趣味の内容から保有財産の手がかりを探しています。
また、口座に高額な出金があれば「何に使ったのか」を細かく聞かれます。
以前、クルーズ旅行が趣味のご夫婦の事例では、旅行の写真を見せることで「その出金は旅行費用である」ことをご説明いただいたこともありました。
お金を使うこと自体は問題ではなく、「その支出が財産になっていないか」を確認しているのです。財産の計上に漏れがなければ、丁寧に説明できるよう準備しておくと安心です。
まとめ
相続税の税務調査は、申告書の数字だけを確認するものではありません。
葬儀費用や相続税の支払い資金の出どころ、生活費の管理状況、保険契約の内容、そして亡くなった方の趣味に至るまで、多角的な視点からチェックが入ります。
調査官は事前に口座の動きを把握した上で臨んでいるケースが大半と考えられるため、説明内容に矛盾があると不信感を持たれてしまいます。
「後ろめたいことはない」という場合でも、しっかりと説明できる状態にしておくことが大切です。気になる点がある場合は、申告前の早い段階で税理士に相談されることをお勧めします。
